日本大百科全書(ニッポニカ) 「モーソン鉱」の意味・わかりやすい解説
モーソン鉱
もーそんこう
mawsonite
1965年オーストラリアから記載された銅・鉄・スズの複硫化物の新鉱物。それまでは含錫斑銅鉱(がんしゃくはんどうこう)あるいは異方性斑銅鉱などとよばれていた。しかし、この原記載は化学式が間違っており、1976年、正しい式Cu6Fe3+2SnS8に訂正された。自形は未報告。直線的な輪郭のあるものも発見されていない。中~深熱水性含錫銅鉱脈中、接触交代型銅・錫鉱床、あるいは変成層状硫化鉄鉱鉱床を切る脈中に産する。日本では鉱脈中のものは兵庫県朝来(あさご)市生野鉱山(いくのこうざん)(閉山)、同養父(やぶ)市明延鉱山(あけのべこうざん)(閉山)など。また、変成層状硫化鉄鉱鉱床中のものは岡山県久米(くめ)郡柵原(やなはら)町(現、美咲(みさき)町)柵原鉱山(閉山)から知られている。
共存鉱物は生野鉱山の例では、褐錫鉱(かっしゃくこう)、黄銅鉱、斑銅鉱、閃亜鉛鉱(せんあえんこう)、方鉛鉱、石英など。同定は独立粒の観察結果が得られていないので観察だけでは確定できない。斑銅鉱様の外観をもつが、さび方が異なり、全体に色が暗くなる。原記載では磁性があると記述されているが、日本のものでは確認されていない。命名はオーストラリアの地質学者で南極探検家として功績のあったダグラス・モーソンDouglas Mawson卿(1882―1958)にちなむ。
[加藤 昭]