(読み)ヨ

デジタル大辞泉 「よ」の意味・読み・例文・類語

よ[終助・間助・格助]

[終助]文末の種々の語に付く。
判断・主張・感情などを強めて相手に知らせたり、言い聞かせたりする意を表す。「気をつけるんだ」「ひとりで行ける
「われこそ山だち(=山賊)―と言ひて」〈徒然・八七〉
(命令表現や禁止の助詞「な」に付いて)願望・依頼・禁止の意を強めて表す。「乱暴はよしな」「はやく来い
「今秋風吹かむ折ぞ来むとする。待て―」〈・四三〉
(疑問を表す語に付いて)相手をなじる意を表す。「しゃべったのはだれ」「何、この子は」
(推量の助動詞「う」「よう」に付いて)勧誘・ねだり・投げやりの意を表す。「早く行きましょ」「わたしなど眼中にないんでしょう
[補説]現代語では、終止形に付く場合、男性語としてはその終止形に直に下接するが、女性語では「のよ」「わよ」「ことよ」「てよ」などの形で、また、名詞、形容動詞語幹に付いて、用いられることが多い。
[間助]文中の種々の語に付く。
呼びかけの意を表す。「おおい、雲」「田中君、手をかしてくれないか」
「少納言―香炉峰の雪いかならむ」〈・二九九〉
語調を整えたり、強めたりする意を表す。「それなら、君は、どうする」
「されば―、なほけ近さは、とかつおぼさる」〈・若菜上〉
感動・詠嘆の意を表す。…(だ)なあ。
「あら思はずや、あづまにもこれ程優なる人のありける―」〈平家・一〇〉
[補説]2は、現代語では多く「だよ」「ですよ」の形で使われる。なお、「だ」「です」を省いて用いると、「もしもよ」「かりによ」のような仮定を表す言い方は別として、「さ」に比して粗野な感じを伴う。長音形の「よう」はいっそうその感が強い。なお、古語の一段活用・二段活用やサ変・カ変動詞の命令形語尾の「よ」も、もともとは間投助詞の「よ」で、中古以降は「…よ」の形が一般化したため、「よ」を含めて命令形と扱うようになった。
[格助]上代語》名詞、活用語の連体形に付く。
動作・作用の起点を表す。…から。
狭井河さゐがは―雲立ち渡り畝火山うねびやま木の葉さやぎぬ風吹かむとす」〈・中・歌謡〉
動作の移動・経由する場所を表す。…を通って。
「ほととぎすこ―鳴き渡れ灯火ともしび月夜つくよになそへその影も見む」〈・四〇五四〉
比較の基準を表す。…より。
「雲に飛ぶ薬食む―は都見ばいやしき我が身またをちぬべし(=若返ルニ違イナイ)」〈・八四八〉
動作・作用の手段・方法を表す。…によって。…で。→ゆりより
浅小竹原あさじのはら腰なづむ空は行かず足―行くな」〈・中・歌謡〉

よ[感]

[感]
相手に呼びかけたり、訴えたりするときに発する語。「、元気かい」
男性が目上の人の呼びかけに答えて言う語。
「人の召す御いらへには、男は『―』と申し、女は『を』と申すなり」〈著聞集・八〉

よ[五十音]

五十音図ヤ行の第5音。硬口蓋と前舌との間を狭めて発する半母音[j]と母音[o]とから成る音節。[jo]
平仮名「よ」は「與」の略体「与」の草体から。片仮名「ヨ」も「與」の略体「与」の末3画から。
[補説]「よ」は、また、「きょ」「しょ」「ちょ」などの拗音の音節を表すのに、「き」「し」「ち」などの仮名とともに用いられる。現代仮名遣いでは、拗音の「よ」は、なるべく小書きにすることになっている。

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精選版 日本国語大辞典 「よ」の意味・読み・例文・類語

  1. 〘 間投助詞 〙
  2. [ 一 ] 感動をこめて聞き手に働きかけ、また念を押すのに用いられる。
    1. 文中の用語を受ける。
      1. [初出の実例]「吾(あ)はも(ヨ)(め)にしあれば 汝(な)を置(き)て 男(を)は無し 汝を置て 夫(つま)はなし」(出典:古事記(712)上・歌謡)
      2. 「四部の弟子はな、比丘よりは比丘尼は劣り、比丘尼より優婆塞は劣り」(出典:徒然草(1331頃)一〇六)
    2. 終止した文・体言止めの文を受ける。
      1. [初出の実例]「我(わ)が着(け)せる 襲(おすひ)の裾に 月立たなむ(ヨ)」(出典:古事記(712)中・歌謡)
      2. 「昼は咲き夜は恋ひ寝(ぬ)合歓木(ねぶ)の花君のみ見めや戯奴(わけ)さへに見(よ)」(出典:万葉集(8C後)八・一四六一)
      3. 「馬を取て来と許云懸て」(出典:今昔物語集(1120頃か)二五)
      4. 「小父さん、犬を見て来ました」(出典:蓼喰ふ虫(1928‐29)〈谷崎潤一郎〉四)
  3. [ 二 ] 体言を受けて、呼び掛けを表わす。
    1. [初出の実例]「大魚(おふを)よし 鮪(しび)突く海人(ヨ)」(出典:古事記(712)下・歌謡)
    2. 「少納言。直衣着たりつらんは、いづら。宮のおはするかとて」(出典:源氏物語(1001‐14頃)若紫)

よの語誌

( 1 )上代から現代まで盛んに用いられたが、時代による用法の変化の幅は小さい。(イ) 平安時代末期から係助詞「こそ」の結びに使われる例が出現する。(ロ) 室町時代から変化形「い」が出現する。(ハ) 格助詞「と」についた「とよ」の形は、本来「…と思うよ」「…と言うよ」のような意であったが、次第に「とよ」だけで同様の意味に用いられるようになる。→「とよ」。
( 2 )の万葉例、今昔例にみられる「見よ」「来よ」などについては、古典文法ではカ変・サ変・上一段・上二段・下二段の命令形の一部とするが、この「よ」はもともと本項の間投助詞である。奈良時代には「吉野よく見与(みよ) 良き人四来(よくみ)」〔万葉‐二七〕(上一段の例)「都止(つとめ)もろもろ 須々売(すすめ)もろもろ」〔仏足石歌〕(下二段の例)と「よ」を添えない形で命令する、本来の形が少なくない。後にも「とくと言ひやりたるに」〔枕‐二五〕(カ変の例)がある。→「ろ」の補注


  1. 〘 格助詞 〙 体言または体言に準ずる語を受けて「より」と同様に用いられる上代語。
  2. 動作・作用の起点を示す。時間的な場合と空間的な場合とがある。
    1. [初出の実例]「狭井河(ヨ) 雲立ち渡り 畝火山 木の葉さやぎぬ 風吹かむとす」(出典:古事記(712)中・歌謡)
    2. 「天地の 遠き始め(ヨ) 世の中は 常無きものと 語り継ぎ ながらへ来れ」(出典:万葉集(8C後)一九・四一六〇)
  3. 動作・作用の行なわれる場所・経由地を示す。空間的・抽象的な場合がある。
    1. [初出の実例]「己が命(を)を 盗み死せむと 後(しり)つ戸(ヨ) い行き違ひ 前つ戸(ヨ) い行き違ひ 窺はく 知らにと」(出典:古事記(712)中・歌謡)
    2. 「旅にして妹に恋ふれば霍公鳥(ほととぎす)わが住む里に此(こ)(ヨ)鳴き渡る」(出典:万葉集(8C後)一五・三七八三)
  4. 動作の手段を示す。
    1. [初出の実例]「浅小竹原(あさじのはら) 腰泥(なづ)む 空は行かず 足(ヨ)行くな」(出典:古事記(712)中・歌謡)
  5. 比較の基準を示す。
    1. [初出の実例]「雲に飛ぶ薬はむ(ヨ)は都見ばいやしき吾(あ)が身また変若(を)ちぬべし」(出典:万葉集(8C後)五・八四八)

よの補助注記

用例は「古事記‐歌謡」と「万葉集」に見られるだけである。


  1. 〘 感動詞 〙
  2. 目上の人の呼び掛けに対して答える男性の返事。
    1. [初出の実例]「人のめす御いらへには、男はよと申、女はをと申也」(出典:古今著聞集(1254)八)
  3. 驚いた時に思わず口をついて出ることば。やっ。
    1. [初出の実例]「よ。おのれが。とくとく。ゆびさし。とめ」(出典:天正本狂言・酢辛皮(室町末‐近世初))
  4. 相手に呼び掛けたり訴えたりする時に発することば。
    1. [初出の実例]「『私(わちき)をわるく思ってお呉でなひヨ。ヨ姉さん』」(出典:人情本・春色梅美婦禰(1841‐42頃)四)

よ【よ・ヨ】

  1. 〘 名詞 〙 五十音図の第八行第五段(ヤ行オ段)に置かれ、五十音順で第三十八位(同音のかなの重複を含めるとき、第四十位)のかな。いろは順では第十五位で、「か」のあと「た」の前に位置する。現代標準語の発音では、硬口蓋と前舌との間を狭めて発する有声の半母音 j と母音 o との結合した音節 jo にあたる。イ段のかなに添えてオ段の拗音を表わすことがある。現代かなづかいでは拗音の場合「よ」を小文字で添える。「よ」の字形は、「與」の略体「与」の草体から出たもの、「ヨ」の字形は、同じく「與」の略体「与」の末画から出たものである。なお、「ヨ」は「與」の上右部のから出たとする説もある。ローマ字では、yo と書く。

  1. 〘 副詞 〙 ( 「え(得)」の変化した語か。一説に「よう」の変化した語とも。後に打消の表現を伴って用いる ) …することができない。とても…できない。よう。
    1. [初出の実例]「世の害をばよ免れまいぞ、無為にはえ居まいぞ」(出典:京大本論語抄(16C前)雍也)

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普及版 字通 「よ」の読み・字形・画数・意味


19画

[字音]

[説文解字]

[字形] 形声
声符は與(与)(よ)。砒素(ひそ)を含んだ石で、毒砂ともいう。〔説文〕九下に「毒石なり。中に出づ」とあり、これを食えば、人や鼠は死に、蚕は肥えるという。

[訓義]
1. 石、毒石。

[熟語]

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「よ」の意味・わかりやすい解説

五十音図第8行第5段の仮名で、平仮名の「よ」は「与」の草体から、片仮名の「ヨ」も「与」の終画からできたものである。万葉仮名には甲乙2類あって、甲類に「用、容、欲、用、庸、遙(以上音仮名)、夜(訓仮名)」、乙類に「余、与、餘、豫、譽、預(以上音仮名)」、「代、世、吉、四(以上訓仮名)」などが使われた。草仮名としては「(与)」「(餘)」「(余)」「(夜)」などがある。

 音韻的には/jo/で、舌面と歯茎硬口蓋(こうがい)とを狭めて発する摩擦音[j]を子音にもつ(母音の[i]と非常に近い音なので半母音ともいう)。上代では甲乙2類に仮名を書き分ける、これは当時の音韻を反映したものと考えられる。

[上野和昭]

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