らい予防法(読み)ライヨボウホウ

デジタル大辞泉 「らい予防法」の意味・読み・例文・類語

らいよぼう‐ほう〔ライヨバウハフ〕【らい予防法】

らい病ハンセン病)の予防医療および患者公共福祉増進目的として定められた法律。明治40年(1907)に「らい予防ニ関スル件」として制定。昭和6年(1931)の「癩予防法」を経て、昭和28年(1953)「らい予防法」に改正。平成8年(1996)に廃止された。ハンセン病は感染・発病力が非常に弱く、早期発見と適切な治療で完治できることが明らかになった後も、患者隔離政策の根拠となった。→ハンセン病問題基本法

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百科事典マイペディア 「らい予防法」の意味・わかりやすい解説

らい予防法【らいよぼうほう】

〈らいの予防,およびらい患者の医療・福祉を図るため〉に,旧法(1907年)に代わって1953年に制定された法律。癩(らい),すなわちハンセン病に対する特効薬が発見され,かつ極めて感染力の弱い伝染病であることが判明したにもかかわらず,全国13ヵ所の国立療養所などへの強制入所や優生手術その他の差別的規定が残っており,従来から強い批判の対象となっていた。入所者の処遇は徐々に改善されていたが,国際的非難も高まり,日本らい学会が長年の方針を転換して予防法廃止を求める見解を発表,1996年廃止された。しかし,長年の隔離政策の結果として社会的偏見も根強く,その約90%は全快しているが後遺症などがあり,高齢化も進んでいる入所者の社会復帰には困難が予想されるため,これまでの医療・福祉面での措置継続を定めるとともに,社会復帰を支援する旨の付帯決議がなされた。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「らい予防法」の意味・わかりやすい解説

らい予防法
らいよぼうほう

ハンセン病 (らい) の発生を予防するとともに,患者の隔離,医療,福祉をはかり,それによって公共の福祉の増進に資することを目的とした法律。 1907年制定の癩予防法を 53年に改正,らい予防法 (昭和 28年法律 214号) として公布された。ハンセン病は,その治療に著効のあるサルファ剤が合成されてから不治ではなくなったが,ハンセン病に対する社会的偏見はなお根強いものがあり,同法は特にそこに意を用い,総則3条で「何人も,患者又は患者と親族関係にある者に対し,不当な差別的取扱をしてはならない」と強調し,施行規則において,医師の患者届出義務と秘密保持につき細かく規定していた。しかし,患者の隔離に対する批判の高まりから,96年4月廃止された。なお,療養所に入所中の患者の生活を保護する経過措置がとられている。

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