羊毛の表面に付着している蠟(ろう)状物質。羊毛脂,羊毛蠟ともいう。羊毛をセッケン水などで洗浄する際の廃液から遠心分離,硫酸を加えるなどの方法で分離され,これを精製することによって得られる。原毛に対する収率は18~20%。脂肪酸とアルコールのエステルであって,脂肪酸の部分は普通の直鎖脂肪酸のほかに分枝酸,オキシ酸を含み,含量はエステルの50~55%。またアルコール部分は普通の脂肪族アルコール(直鎖およびメチル基などを含むもの)20~22.5%とコレステロール,イソコレステロールC27H46O20~25%の割合になっている。融点31~43℃,ケン化価77~130,ヨウ素価15~47。ベンゼン,エーテルなどの有機溶剤に可溶,エチルアルコールに微溶。水には不溶であるが親水性があり,水をコロイド状に包含する。皮膚に塗布するとよく吸収され,無刺激性,不揮発性で,香粧品,軟膏基剤などに使用される。ラノリンを加水分解して分離した脂肪酸とアルコールはラノリン脂肪酸,ラノリンアルコールと呼ばれ,前者はクリーム,乳液などに,後者は乳液,頭髪用品などに用いられる。
執筆者:内田 安三
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
羊毛の表面に付着しているろう物質で,羊毛を洗浄したときの廃液から回収される羊毛脂を精製したものをいう.淡黄色または帯褐黄色で特有の臭気をもつ.エーテル,クロロホルムなどに可溶,水には溶けないが水と混和して軟膏状になる性質がある.成分は複雑で,ミリスチン酸,セロチン酸などのα-およびω-ヒドロキシカルボン酸,セリルアルコールなどの羊毛ろうアルコール,およびコレステロール,ラノステロールなどを含む.無水ラノリンは化粧品原料として有用で,容易に皮膚に吸収される性質がある.そのほか,化粧せっけん,保革油などの製造に用いられる.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
ヒツジの毛に付着するろう状物質(羊毛脂)を精製したもの。化学的にはろうである。原毛(25%程度の羊毛脂含有)を希釈したアルカリ液またはせっけん液で洗って精練し、洗浄液に無機酸を添加すれば、羊毛脂が析出してくる。ラノリンはこはく色をした粘着性物質で、特有の臭(にお)いをもつ。ヨウ素価15~47。融点30~40℃。主成分はセリルアルコールおよびオレイルアルコールの脂肪酸エステルである。主要脂肪酸は他と異なり分枝鎖酸。非常に優れた乳化作用をもち、医薬品のよい基剤であり、化粧品にも使用される。
[福住一雄]
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…蜜蠟は前者の例でCが26~34のアルコールのパルミチン酸エステルからなる。ラノリン(羊毛脂,羊毛蠟ともいう)の主成分はラノステロールと脂肪酸のエステルで,後者の例である。空気中でも変化しにくく,動物の皮膚,毛皮,羽毛,植物の葉や果実に,また多くの昆虫の外骨格の保護膜として見いだされる。…
※「ラノリン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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