日本大百科全書(ニッポニカ) 「リリエンタール」の意味・わかりやすい解説
リリエンタール
りりえんたーる
Otto Lilienthal
(1848―1896)
ドイツの機械製作者。ハンググライダーを開発して自ら飛んだ先駆者。プロイセン王国のアンクラムに生まれる。鳥の飛行にあこがれ、ベルリンで機械工場を経営してかなり成功したあとに飛行の基本的実験を開始した。1889年『飛行術基礎としての鳥の飛行』を出版したが、回転腕による曲面の空気力の考察などは現代でもなお重要な資料である。同じ年から固定翼グライダーの製作を始め翌1890年まで続けたが成功しなかった。1891年からグライダーに改良を加えながらベルリン付近で飛行実験を行った。1893年には飛行場所を移し、ベルリンから鉄道で1時間、ドッセ河畔ノイシュタット南方の丘で実験した。1894年には自分の工場に近いリヒターフュルデに、いまも残る人造丘を築いて練習に使った。彼のグライダーはハング式で、搭乗者は腕で機体につかまり、つり下げた下半身を前後左右に振って制御した。機体が右へ傾いたときは下半身を左へ振って回復するが、これは右へ足を振り出したくなる本能とは反対の操作であった。1896年の8月9日、標準型単葉(複葉もつくった)グライダーで練習中突風のため墜落し、翌日ベルリンの病院で死んだ。リリエンタールは終生スポーツ的な立場で滑空し、炭酸ガス圧の動力も考えてはいたが、滑空距離を伸ばすための羽ばたきに使う計画であった。
[佐貫亦男]