ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ワイルズ」の意味・わかりやすい解説
ワイルズ
Wiles, Andrew John
イギリスの数学者。1974年にオックスフォード大学マートン・カレッジを卒業,1980年にケンブリッジ大学クレア・カレッジで博士号を取得。ハーバード大学などを経て 1982年からプリンストン大学教授。フェルマの最終定理を証明した業績により,1998年に国際数学連合から特別賞を授与された(年齢制限によりフィールズ賞の対象にならなかった)。ほかにも整数論において,ブライアン・バーチとピーター・スウィンナートン=ダイアーによるバーチ・スウィンナートン=ダイアー予想や,岩澤健吉による岩澤理論の主予想など,顕著な業績を上げた。フェルマの最終定理とは,方程式 xn+yn=zn は n>2 を満たす整数 n に対して,正の整数解をもたないというものである。ワイルズの証明は,ゲルハルト・フライ,バリー・メイザー,ケネス・リベット,カール・ルービン,ジャン=ピエール・セールらの業績を基礎にしたものであり,楕円曲線に関する谷山豊,志村五郎,アンドレ・ベイユによる予想を解決することに本質があった。ワイルズの結論は,1993年6月にケンブリッジにおける「保型形式,楕円曲線およびガロア表現」と題する講演で発表された。その後リチャード・テーラーとの共同研究で 1995年に修正が加えられ,より完全な証明が与えられて論文が出版された。ワイルズはこの業績により 1995~96年のウルフ賞を受賞した。
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