フィリピン革命の指導者。カビテ州カビテビエホ(現カウィット)の名家の出。1895年同町の町長に選出されるやスペイン植民者の目を欺いて秘密結社カティプーナンに入会。1896年8月革命が勃発(ぼっぱつ)するとカビテ州の革命軍を率いて名声をあげ、革命全体の指導権を要求するに至った。そのためカティプーナン総裁ボニファシオとの間に内訌(ないこう)を生じたが、これに勝って、1897年3月革命政府大統領となった。しかし、彼の指導は日和見(ひよりみ)的で、1897年12月にはスペインと講和して香港(ホンコン)へ亡命。1898年4月アメリカ・スペイン戦争が始まると帰国してふたたび革命の指導権を掌握、1899年1月には第一次フィリピン共和国(マロロス共和国)を樹立して大統領に就任した。だが、同年2月から始まったアメリカとの戦争で、1901年3月逮捕され降伏した。以後は郷里で隠遁(いんとん)生活を送っていたが、1935年フィリピン・コモンウェルス(連邦)初の大統領選挙に担ぎ出されケソンに敗れた。
[池端雪浦]
フィリピン革命の指導者。ルソン島カビテ州の出身で,生家は長年町長をつとめた名家であった。彼も1895年に町長に選ばれたが,同時に秘密結社カティプーナンに入会して,スペイン支配の打倒をめざした。96年8月,フィリピン革命が勃発すると,カビテ州の革命軍を率いてめざましい活躍を示し,カティプーナン総裁ボニファシオとの間に指導権争いを生じた。97年5月,ボニファシオを粛清して革命の指導権を握ったが,彼の指導は日和見的で,97年12月にはスペインと和を講じて闘争を放棄し,ホンコンへ亡命した。しかし,翌98年4月アメリカがスペインに宣戦布告を行うと(米西戦争),帰国して革命戦線に復帰し,再び指導権を握った。同年9月,有産知識階級の後押しで,ブラカン州マロロス町に革命議会を開き,翌年1月にはマロロス憲法を発布して,フィリピン共和国を樹立,彼はその初代大統領に選ばれた。しかし,アメリカの真意がフィリピン占領にあることが明らかになるに及んで,99年2月にフィリピン・アメリカ戦争を開始したが,アメリカの圧倒的な軍事力の前に敗北を重ね,1901年3月アメリカ軍に降服した。その後はカビテ州の郷里に隠遁して,政治の表で活躍することを好まなかったが,35年の第1回コモンウェルス政府大統領選挙にかつぎ出され,ケソンに敗れた。
執筆者:池端 雪浦
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1869~1964
フィリピン独立革命政府の大統領(在任1898~1901)。マニラ近郊カビテ州の町長だったが,秘密結社カティプーナンに加入して1896年の決起に参加,97年ボニファシオ兄弟を粛清,処刑して最高指導者となった。スペインと和約を結び香港に亡命したが,98年アメリカ‐スペイン戦争中にアメリカの協力で帰国して独立を宣言。アメリカへの併合後は抵抗して戦ったが,1901年に逮捕されると帰順を誓い引退。フィリピン独立運動指導者としての評価は今日でも定まっていない。
出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報
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…革命を主導したのは,秘密結社カティプーナンであった。しかし,革命開始後まもなくして,革命軍内部には,地域主義と階級の違いを主要因とする,深刻な指導権争いが生じ,革命のリーダーシップはカティプーナン総裁ボニファシオの手からカビテ州プリンシパリーア階層の先頭に立つアギナルドの手に移った。アギナルド指導部は97年12月スペインと和約を結んで,革命終息をはかり,彼らは香港へ亡命した。…
…近代的装備に勝るアメリカ軍は破竹の勢いで革命軍の防衛線を突破し,全島に侵略の歩を進めた。99年3月末首都マロロスが陥落し,11月には革命政府大統領アギナルドが北部ルソン山岳地帯に追い込まれて,全軍的指揮能力を失った。だがアメリカにとっての苦戦はむしろこの時から始まった。…
…1880年代に入ってスペイン支配の改革を求めるプロパガンダ運動が始まると,率先してこれに参加したが,知識人中心の言論活動の不毛さに失望して,92年7月同志とともに武装革命をめざす秘密結社カティプーナンを結成,95年にその第3代総裁となり,96年8月フィリピン革命を開始した。しかし闘争の過程でアギナルドの率いるカビテ州のプリンシパリーア階層との間に指導権争いを生じ,これに敗れて,97年5月10日アギナルド革命政府の手で処刑された。【池端 雪浦】。…
※「アギナルド」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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