アクリル酸(読み)アクリルサン

デジタル大辞泉 「アクリル酸」の意味・読み・例文・類語

アクリル‐さん【アクリル酸】

代表的な不飽和カルボン酸刺激臭のある無色液体。工業的には石油から得られるプロピレン原料として作られる。水溶性重合しやすく、アクリル樹脂の原料。化学式CH2=CHCOOH

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精選版 日本国語大辞典 「アクリル酸」の意味・読み・例文・類語

アクリル‐さん【アクリル酸】

  1. 〘 名詞 〙 化学式 CH2=CHCOOH 水に可溶の刺激臭を持つ液体。水溶性重合体の原料、有機合成原料として用いる。アクリル酸エステル重合体は塗料接着剤、電気絶縁材料などに用いられる。

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化学辞典 第2版 「アクリル酸」の解説

アクリル酸
アクリルサン
acrylic acid

propenoic acid.C3H4O2(72.06).CH2=CHCOOH.実験室的には,アクリル酸エステルのけん化,アクリルアルデヒドの酸化,ヒドロキシプロピオン酸の脱水,およびハロプロピオン酸の脱ハロゲン化水素などの方法があるが,工業的には,次式に示すような合成法がある.

     → CH2=CHCOOH + H2O

(プロペンの直接酸化法) 

(レッペ法) 

不快な刺激臭をもつ液体.融点13 ℃,沸点141 ℃.1.0511.1.4224.水に可溶.非常に重合しやすいので重合防止剤としてヒドロキノンを加えて貯蔵する.エテンアクリロニトリルとの共重合体は酸性高分子電解質として重要であり,また水溶液性高分子の原料,そのほか種々の有機合成の原料としても用いられる.アルキルエステルの重合体は,塗料,接着剤などに広く利用される.最近では,ポリアクリル酸架橋したものが高吸水性樹脂として,おむつ,衛生用品,農業,電子産業などのさまざまな方面で利用されている.皮膚,粘膜,眼を刺激する.LD50 60 mg/kg(マウス,経口).[CAS 79-10-7]

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「アクリル酸」の意味・わかりやすい解説

アクリル酸
あくりるさん
acrylic acid

代表的な不飽和カルボン酸。プロペン酸ともいう。

 クロロプロピオン酸の脱塩化水素、ヒドロキシプロピオン酸の脱水により調製できる。工業的には、石油から得られるプロピレンを原料として、アクリルアルデヒドを経る2段階の酸化により製造されている。この酸化反応は酸化剤として空気を用い、触媒にモリブデン系化合物を用いる。プロピレンからアクリル酸を1段階でつくる製造法もある。

 酢酸に似たにおいのする液体で、水とは任意の割合で混じり合う。毒性が強く、重合しやすい。単独で重合させるとポリアクリル酸になり、増稠(ぞうちょう)剤、紙加工用粘結剤などに用いられる。架橋を含むポリアクリル酸ナトリウムは吸水性が強いので、紙おむつなどに用いる。

[廣田 穰]


アクリル酸(データノート)
あくりるさんでーたのーと

アクリル酸
  CH2=CHCOOH
 分子式  C3H4O2
 分子量  72.06
 融点   14℃
 沸点   141.6℃
 比重   1.062(測定温度16℃)
 屈折率  (n)1.4210
 溶解度  ∞(水と任意の割合で混合)
 解離定数 Κ=5.5×10-5

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改訂新版 世界大百科事典 「アクリル酸」の意味・わかりやすい解説

アクリル酸 (アクリルさん)
acrylic acid

最も簡単な不飽和カルボン酸。化学式CH2=CHCOOH,融点14℃,沸点141℃,比重1.051。酢酸に似た刺激臭のある液体で,水,アルコールと任意の割合で混じり合う。非常に重合しやすいため,重合禁止剤としてヒドロキノンを500ppm程度加えて貯蔵する。

 実験室的にはアクロレインの酸化,アクリロニトリルやアクリル酸エステルの加水分解などで合成される。工業的には,ニッケル鎖体を触媒とするアセチレンのカルボニル化反応よるか,エチレンオキシドとシアン化水素の反応で得られるエチレンシアンヒドリンの脱水と加水分解によって製造される。

種々の有機合成の原料として利用されるほか,重合体は水に溶けて高粘度の溶液となるので増粘剤として塗料に用いられている。また,アクリロニトリルやエチレンとの共重合体の利用度は広い。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アクリル酸」の意味・わかりやすい解説

アクリル酸
アクリルさん
acrylic acid

ビニルギ酸ともいう。化学式 CH2=CHCOOH 。有機合成原料およびポリアクリル酸,ポリアクリル酸エステルなど重要な高分子化合物の出発原料である。工業的には,プロピレンの空気酸化によりアクロレインを経て製造される。またアセチレンと一酸化炭素と水から,テトラカルボニルニッケルを触媒としてつくられる (レッペ法) 。アクロレインの酸化,アクリロニトリルの加水分解によっても得られる。酢酸に似た刺激臭のある無色の液体で,水および多種の有機溶剤に可溶である。融点 13℃,沸点 141℃。アクリル酸のメチルエステルやエチルエステルは重合を経て合成樹脂として利用される。特にエステルの重合体は接着剤その他に利用される。

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百科事典マイペディア 「アクリル酸」の意味・わかりやすい解説

アクリル酸【アクリルさん】

化学式はCH2=CHCOOH。刺激臭のある無色の液体。融点14℃,沸点141℃。酸およびそのエステルはアクリル樹脂などの高分子物質の原料として重要。かつてはアセチレンと一酸化炭素からニッケルカルボニルを触媒として合成されたが,現在はモリブデン‐ビスマス系触媒によりプロピレンを直接空気酸化して合成。
→関連項目アクロレイン

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栄養・生化学辞典 「アクリル酸」の解説

アクリル酸

 C3H4O2 (mw72.02).CH2=CHCOOH.高分子を合成する原料となる重合しやすい化合物.ポリアクリルアミドは広く生化学研究に用いられるゲル.

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