アゲマキガイ(読み)あげまきがい

日本大百科全書(ニッポニカ) 「アゲマキガイ」の意味・わかりやすい解説

アゲマキガイ
あげまきがい / 揚巻貝
[学] Sinonovacula constricta

軟体動物門二枚貝綱ナタマメガイ科の食用二枚貝。日本では九州の有明海主産地で、瀬戸内海の一部などにも産する。朝鮮半島や中国沿岸にも分布し、塩分の少ない内湾潮間帯泥底にすむ。殻長70ミリメートル、殻高25ミリメートルぐらいで、横長の長方形前後端は丸みがあり開いている。殻質は薄くてもろい。殻頂前方3分の1付近にあり、そこから腹縁に向かって浅い溝が走る。殻は白亜質であるが、比較的厚い黄色の殻皮をかぶり、後方では多少よれたようなしわができる。また老成貝では殻皮はむしろ黒褐色を呈している。軟体は淡黄色で、くさび状の足が前端からでて、後端からは入水管出水管に分かれた水管がでる。この点、入水管と出水管が癒着したマテガイ類と異なり、潜入した所には穴が二つできる。泥底の30~60センチメートルぐらいの深さに潜って生活する。産卵期は10月から翌年の2月に及び、1年では殻長70ミリメートル、2年で90ミリメートルぐらいに成長する。もともと有明海を中心とした九州方面では重用されていたが、最近は都市にも進出し、主として干潟から掘りとられ市場に現れる。

[奥谷喬司]

料理

むき身にすると形が武装した人にみえるというので、兵隊貝という俗称があった。一晩水に浸し、ゆでて貝を外し、料理する。フライ煮物、汁の実、酢みそ和(あ)えなど、用途は広い。有明海(ありあけかい)近くでは佃煮(つくだに)、粕(かす)漬けにしたものを土産(みやげ)品として売っている。現代の味としては、ゆでたアゲマキにスパゲッティを加え、クリームソース和えにした料理がある。

多田鉄之助


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改訂新版 世界大百科事典 「アゲマキガイ」の意味・わかりやすい解説

アゲマキガイ (蟶貝)
Sinonovacula constricta

前後に長いナタマメガイ科の二枚貝。鎮台貝ともいった。殻の高さ3cm,長さ10cm,膨らみ2.5cm,白色で薄くてもろい。長いがやや扁平で,前後端は丸みがあり,両殻の間は狭くあいていてまた中央部でわずかにくびれる。殻上に黄色の粗い殻皮をかぶるが,後方では小じわ状になる。軟体は白色で後端の水管は出入水管が分離して細長く,足は淡黄色で大きくくさび状で長くのびる。有明湾が主産地。淡水湖化する前の児島湾も有名な産地であった。朝鮮半島黄海側や中国沿岸にも分布する。内湾の潮間帯の軟らかい泥底に30~60cmの深い穴を掘ってその中にすみ,水中の懸濁有機物を食べる。長い水管の出る穴は離れて二つできる。アゲマキは2本の水管が殻の上につきでているのを古代の子どもの髪形総角(あげまき)(角髪(つのがみ))に見たてた名である。産卵期は10月から翌年1月で,孵化(ふか)後1年で殻長7cm,2年で9cmくらいに成長する。肉はむき身とし酢みそあえ,煮つけなどで食用にする。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アゲマキガイ」の意味・わかりやすい解説

アゲマキガイ
Sinonovacula constricta

軟体動物門二枚貝綱ナタマメガイ科。別名鎮台貝。殻長 10cm,殻高 3cm,殻幅 2.3cm。殻は前後に細長く,左右にやや平たい。前後両端は丸くて両殻の間は開いている。殻表はわら色のあらい殻皮でおおわれる。殻頂は低く,中央より前方にある。内面は白色。軟体は白く,2本の水管は基部から分れて長い。有明海が主産地であるが,朝鮮半島や中国にも分布し,泥底に 30~60cmの深い穴を掘ってすむ。産卵期は 10月~2月で,1年で 7cm,2年で 9cmになる。食用。

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百科事典マイペディア 「アゲマキガイ」の意味・わかりやすい解説

アゲマキガイ

ナタマメガイ科の二枚貝。前後に長く,殻の高さ3cm,長さ10cm,幅2.3cm,殻表は淡黄白色。殻の前後両端は少し開いている。中国,朝鮮半島,日本では有明海などの内湾に分布。潮間帯の軟泥底に30〜60cmの深い穴を掘ってすみ,水中の懸濁有機物を食べる。2本の水管は離れている。産卵期は10〜1月。肉はむき身,干物にする。

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