イギリスの物理学者。ケンブリッジのセントジョンズ・カレッジを卒業後、J・J・トムソンらの下で研究した。第一次世界大戦で工兵隊電信将校として従軍した際、無線信号が周期的に強弱するフェーディングに注目し、ケンブリッジに戻って研究を始めた。1924年、フェーディングが直接波と電離層で反射した波との干渉に基づくことを示し、ヘビサイドらが予想した電離層(E層)の存在を立証した。その後さらに高層の別の電離層(アップルトン層、F層)を発見した。この間、1924年にロンドン大学の物理学教授となり、1936年以降はケンブリッジ大学の自然哲学教授。彼が用いた方法はレーダーの原理になるなど、その業績は大きい。「上層大気の物理学的研究、とくにアップルトン層の発見」により、1947年ノーベル物理学賞を受賞した。
[山崎正勝]
電離層の研究に貢献したイギリスの物理学者。ヨークシャーのブラッドフォードの生れ。ケンブリッジ大学に学び,1914年キャベンディシュ研究所で学位を取得,第1次世界大戦に通信将校として参加した後,研究所に戻り助手を務めた(1920-24)。その後,ロンドン,ケンブリッジ両大学の物理学教授を経て,39年から49年まで科学産業庁長官の要職にあった。
1924年,A.E.ケネリーとO.ヘビサイドによって予言されていた電離層の存在を電波の反射波の測定により実証し,2年後には,その上部に新しい電離層(アップルトン層と名付けられた)が存在することを発見した。こうして,電波による電離層の研究に道を開くとともに,電波伝播(でんぱ),電離層などの物理学的研究に顕著な業績を残した。47年,その研究に対しノーベル物理学賞が授与された。
執筆者:井上 隆義
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…しかしこのように直接にわれわれに利便を与えるだけでなく,科学の進歩,とくに宇宙の神秘の解明にも大いに役だっている。すなわち1923年にはイギリスのE.V.アップルトンによって,電離層の存在が実証され,電波はこの電離層と大地の間で反射されながら,遠方まで伝わることが明らかにされたのである。これは電波を用いた宇宙科学の先駆といえる。…
…一方,1878年にスチュアートB.Stewartは,地球磁場の日変化の原因が上層大気中に存在する電気伝導領域を流れる電流であるという仮説を立てていた。1925年になって,アップルトンE.V.AppletonとバーネットM.A.F.BarnettおよびブライトG.BreitとチューブM.A.Tuveのイギリスとアメリカの二つのチームによって独立に最初の電波反射実験が行われ,電離層の存在が確認された。以来,実用面では電離層による電波反射を利用した遠距離無線通信が発達し,学術面では電離圏を通して地球の超高層大気および太陽・地球関連現象の研究が発展した。…
※「アップルトン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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