海産哺乳類の胃に寄生するセンチュウ(線虫)で,線形動物門カイチュウ科に属し,アニサキス属Anisakis,テラノバ属Terranovaなどを含む。成虫は長さ60~100mm。これらのセンチュウの幼虫は,アジ,サバ,ニシン,スケトウダラ,スルメイカなどの内臓や筋肉内に被膜におおわれて寄生しており,それらの魚類を生食してヒトに摂取されると,胃および腸壁に侵入しアニサキス症anisakiasisの原因となる。胃アニサキス症では,魚類の生食後数時間で急激な心窩部(しんかぶ)痛(みぞおちの痛み),悪心・嘔吐をもって発症し,胃潰瘍の穿孔(せんこう)を思わせることもある。内視鏡検査で胃壁に穿入しつつある虫体が見られることもあり,その場合,虫体を摘出すれば症状は消失する。慢性型では,虫体の侵入部粘膜下に好酸球性肉芽腫が形成されることがある。腸アニサキス症では,病変は回腸部に多く蜂巣炎の形をとり,急性虫垂炎,イレウスまたは急性腹症として外科的処置を受けることが多い。アニサキス症の大部分はAnisakis simplexの幼虫によるものであるが,北海道ではTerranova(Phocanema)decipiensによる症例も報告されている。
執筆者:小島 荘明
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線形動物門双腺(そうせん)綱回虫目アニサキス科アニサキスAnisakis属の寄生虫の総称。成虫はクジラ類の胃に寄生している。Anisakis simplexの成虫では雄の体長約15センチメートル、雌約20センチメートルに達する。雌虫から産み出された卵は、宿主の糞便(ふんべん)とともに海中に排出され、卵内で感染力をそなえた幼虫が形成されて海中に遊出する。
この幼虫はオキアミなどの小型甲殻類に食べられ、さらにヒゲクジラ類に食べられて成虫になる。あるいはオキアミ類を餌(えさ)としている魚類やスルメイカに食べられ、その体腔(たいこう)や筋肉内に寄生して固有宿主のクジラ類に食べられるのを待つ。魚やイカに寄生している幼虫は長さ2~3センチメートルで、刺身などといっしょに人に食べられると、幼虫は人の胃や腸壁に侵入して激痛や嘔吐(おうと)をおこし、胃潰瘍(いかいよう)や急性虫垂炎などと間違えられることがある。これをアニサキス症という。幼虫は人の体内では成虫に発育することができず、やがて死滅するか排出される。胃に寄生した幼虫は、内視鏡で観察しながら鉗子(かんし)で摘出する。
なお、人で同じような症例は、アニサキス属と近縁なプセウドテラノバPseudoterranova属の幼虫(成虫はアザラシやオットセイなどの鰭脚(ひれあし)類の胃に寄生)によってもおこる。
[町田昌昭]
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