ドイツ語のアパチーApathieは外界からの刺激に無感覚となることを意味し、急性の驚愕(きょうがく)などにみる無感覚や統合失調症(精神分裂病)などの症状を示す用語であるが、近年、精神分析学で繁用される英語の「アパシー」は神経症水準の無気力、無関心を示す。アメリカのウォルターズP. A. Waltersは、1961年に大学生が学業に無関心となり非生産的な生活を送るスチューデント・アパシーstudent apathyという概念を提唱した。日本では精神医学者の笠原嘉(よみし)(1928― )が「学生のみならず学業や仕事などの本業に関心を示さず、その他の分野に活動性を残すものを退却神経症」とした。広瀬徹也(1937― )の逃避型抑うつも同じ病理である。
[永田俊彦]
経済的繁栄の下で、人々が関心を向ける対象が多様化した現代社会では、政治に対する関心が低下しがちであるうえ、政治的要求が満たされずに政治不信に陥り、さらに政治への関心を失う人々が多い。「アパシー」は、このような「政治的無関心」に対しても用いられ、現代政治に不安定をもたらす一要因ともなっている。
[編集部]
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…広く政治上の問題や政治的活動一般に対する無関心な態度を指し,アパシーapathyともいう。このような態度は,行動の面では政治参加への消極性,選挙における棄権,政治的情報獲得への消極性などとして現れてくる。…
※「アパシー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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