アンガージュマン(英語表記)〈フランス〉engagement

  • engagement
  • engagement フランス語
  • フランス

百科事典マイペディアの解説

〈参加〉などと訳されるが,社会的現実に対する非中立的態度をいう。フランスではドレフュス事件から対独レジスタンスを通じて知識人の現実(政治)参加が思想・文学に強く作用し,ペルソナリスム(E.ムーニエ)や実存主義サルトルなど)において哲学的主張となった。
→関連項目サルトル

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世界大百科事典 第2版の解説

もともとは〈契約〉〈誓約〉〈拘束〉などの。しかし第2次大戦の直後から,作家で哲学者のサルトルがこの語を用いて一つの思想的立場を打ち出すに及び,〈政治参加〉〈社会参加〉といった意味でも広く用いられるようになった。 サルトルによれば,人間はだれしも自分のおかれた状況に条件づけられ,拘束されているが,同時にあくまでも自由な存在である。したがって,どんな局面においても人はその状況の限界内で自由に行動を選択しなければならないし,自由に選択した以上は自分の行動に責任を負わねばならない。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

もともとは、契約、拘束などの意味だが、政治や社会の問題に進んで積極的に参加していくことをさすことばでもある。とりわけ第二次世界大戦直後に、サルトルがこの語を多用して以来、これは彼を中心とする無神論的実存主義のグループの思想と切り離せないものになった。

 サルトルの哲学によれば、意識存在である人間は、めいめいが自由な選択によって過去を乗り越え、現に存在している自己を否定しつつ、まだ存在していないものをつくりだしていく。したがって人間のあり方は、現在の状態からの自己解放であるとともに、まだ存在しない目的へ向かっての自己拘束(アンガージュマン)であると規定できる。しかも人間は「世界内存在」であって、他者とともにあらかじめこの世界に拘束されているのであるから、それぞれの状況に働きかける各自の選択こそ、なによりも重視しなければならないものである。

 サルトルの主張したこのようなアンガージュマンは、けっして狭い意味での政治行動や社会参加に限定されるものではなく、時代や状況に束縛されていながら同時に自由な存在でもある人間が自己を実現していく仕方のことであり、したがって、各人の責任を強調するきわめて倫理的な思想であった。しかもサルトルは徐々にマルクス主義を受け入れていったために、それに応じてアンガージュマンの概念もいっそうの広がりをもち、ついに歴史の全体性への参加、という意味すら帯びるに至った。

 さらにこのアンガージュマンは、文学の創造に関しても指摘された。サルトルが第二次世界大戦前の作家たちの無責任性を厳しく追及して、同時代人のために書き、かつ同時代に責任を負っていくことこそ、ものを書く人間のあるべき姿であるとし、こうして「アンガージュマンの文学」を提唱したからである。しかしこの領域でも、彼は少しずつ狭い政治主義から脱して、作家が自分の独自性を深く掘り下げて全体と普遍に迫ることこそ、文学のアンガージュマンであると考えるようになった。

 こうした態度は、第二次世界大戦後から1960年代まで、単にフランスだけでなく、世界的に先進国の青年たちに訴えるものをもっていた。1960年代以後、アンガージュマンの流行はいったん終わったが、個と全体を同時にとらえようとしたこの試みの意義が失われたわけではない。

[鈴木道彦]

『サルトル著、伊吹武彦他訳『実存主義とは何か』増補新装版(1996・人文書院)』『サルトル著、伊吹武彦・加藤周一他訳『文学とは何か』改訳新装版(1998・人文書院)』

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精選版 日本国語大辞典の解説

〘名〙 (engagement) 現実社会の問題に参加して自分の態度をきめ、その賭けの抵当として自己を拘束すること。自己拘束。社会参加。⇔デガージュマン

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