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イタイイタイ病 イタイイタイびょう

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

イタイイタイ病
イタイイタイびょう

1956~57年頃をピークにして富山県,神通川流域に発生した公害病。激痛や病的骨折に襲われて運動不能状態となり,さらに進行すると死にいたる。特に中年の多産婦に多くみられた。 1967年岡山大学教授の小林純は地元の医師萩野昇との共同調査の結果として,三井金属鉱業神岡鉱業所の廃水によるカドミウム慢性中毒症と発表。

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出典|ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
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知恵蔵の解説

イタイイタイ病

岐阜県神岡町(現・飛騨市)の神岡鉱山から排出されたカドミウムが神通川に流れ、川水を灌漑用水に使用していた富山県の農地土壌が汚染された。そこで産出された米を長年摂取した中高年の女性多数が、骨粗鬆症(こつそしょうしょう)を伴う骨軟化症を発症。患者が「いたい、いたい」と骨の痛みを訴えて死ぬことから地元の萩野昇医師が「イタイイタイ病」と名付けた。汚染米から多量に摂取したカドミウムが腎臓皮質に蓄積されると、尿中のたんぱく質、糖分、カルシウム、リンなどの栄養分を再吸収する尿細管が障害を起こす「カドミウム腎症」になる。そして骨の成分であるカルシウムやリンが尿中に流出して欠乏するため骨がもろくなる。大正時代に発生し、罹患者は1000人以上と推定されるが、発見は1955年。68年に日本の公害病第1号に認定された。2007年7月現在の認定患者は191人(うち生存者4人)、要観察者は335人(うち生存者2人)だが、現在でも新規患者の認定が続いている。イタイイタイ病患者は、石川県梯川(かけはしがわ)流域、兵庫県市川流域、長崎県対馬でも発見されているが、国は認定していない。カドミウム腎症は、全国各地の鉱山・精錬所周辺で発見されているが、公害病として認定されていない。近年、韓国や中国の鉱山・精錬所周辺でイタイイタイ病やカドミウム腎症の発見が報じられている。

(畑明郎 大阪市立大学大学院経営学研究科教授 / 2008年)

出典|(株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」
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朝日新聞掲載「キーワード」の解説

イタイイタイ病

日本の四大公害病のひとつで、富山県の神通川流域で1911年ごろから発生。上流の神岡鉱山(岐阜県)を採掘する三井金属神岡鉱業所(現・神岡鉱業)の排水に含まれるカドミウムが原因と判明。患者らは三井金属を相手に損害賠償訴訟を起こし、72年に勝訴した。公害防止協定などに基づき患者への補償、神岡鉱業の環境対策、土壌の復元が進み、2013年12月に被害者団体と企業が「全面解決」で合意した。

(2015-10-23 朝日新聞 朝刊 3社会)

出典|朝日新聞掲載「キーワード」
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デジタル大辞泉の解説

いたいいたい‐びょう〔‐ビヤウ〕【イタイイタイ病】

富山県、神通川流域で発生した慢性カドミウム中毒。大正から昭和20年代にかけて多発。骨が冒され、痛みが激しく骨折しやすい。鉱山廃水が原因であることが解明され、昭和43年(1968)公害病に認定。

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百科事典マイペディアの解説

イタイイタイ病【イタイイタイびょう】

富山県神通川流域の農村に,頻回(ひんかい)経産婦に多く見られた骨軟化症様の病気。わずかな刺激で病的骨折が起こり,日夜苦痛を訴える。カドミウムの慢性中毒による腎障害から骨軟化症をきたし,これに妊娠,授乳,老化,内分泌の変調などによるカルシウム不足が加わって起こると考えられる。
→関連項目公害裁判公害病神通川四大公害訴訟

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栄養・生化学辞典の解説

イタイイタイ病

 富山県神通川中流域に多発した病気で,カドミウムの慢性毒性が主因とされる.

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世界大百科事典 第2版の解説

いたいいたいびょう【イタイイタイ病】

富山県神通川流域の農村地区で,第2次世界大戦後の数年間を中心に,主として更年期以降の経産婦がかかったといわれる骨軟化症様の病気。全身の激痛を訴えることから,この病名が通称として用いられるようになった。1955年に河野稔らがこの病気を初めて学会に報告し,68年にはこの病気を神通川上流の三井金属鉱業神岡鉱業所より排出されたカドミウムCdに起因する公害病と認めた厚生省見解が発表された。
[症状]
 腰痛,下肢筋肉痛などで始まり,股(こ)関節の開排制限,アヒル様歩行などを示す。

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大辞林 第三版の解説

いたいいたいびょう【イタイイタイ病】

富山県神通じんずう川流域に発生した骨疾患。背骨や手足が痛み、骨がもろくなって容易に骨折する。鉱山廃水に含まれるカドミウムの体内蓄積によるものとされ、1968年(昭和43)公害病第一号に認定された。

出典|三省堂
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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

イタイイタイ病
いたいいたいびょう

富山平野の中央を貫く神通(じんづう)川両岸の一定地域に居住する40歳以上の農村女性、とくに多産婦に多発した疾病。初めは風土病と考えられていたが、1955年(昭和30)に発見者である地元の開業医萩野昇(はぎののぼる)と、協力者である東京の整形外科医河野稔(こうのみのる)によって初めて学会に共同発表されてから約10年後、カドミウムの体内蓄積が発病の基盤になっていることが明らかにされ、わが国の代表的な公害病として知られるようになった。
 症状は腰痛、背痛から始まり、しだいに股関節(こかんせつ)の痛みのため臀部(でんぶ)を振ってアヒルのような歩き方をするようになり、やがて歩行不能となる。また、ぶつかったり転んでも容易に四肢骨や肋骨(ろっこつ)に骨折をおこし、たび重なるとタコの足のように四肢が屈曲してしまう。体位を変えたり、談笑や咳(せき)などによっても全身に痛みがくるようになると、昼夜を問わず「いたい、いたい」と訴え続け、ついには栄養失調やその他の合併症で死亡する。なお、骨の変化のほかに腎臓(じんぞう)の尿細管の機能も冒され、尿中にタンパク、糖、カルシウムが増加する。骨折しやすい理由の一つにカルシウムの体外排出が考えられ、多産婦に多発したのも、妊娠中にカルシウムが胎児に多く奪われることが誘因とみられている。
 原因としては、患者の尿中にカドミウム量が異常に多いこと、神通川流域の水田土壌中のカドミウム量が他の河川流域に比べて明らかに高いこと、発生が神通川流域の一定地域に限られており、それが水田中のカドミウム濃度とよく一致すること、患者の発生地区では骨症状を呈していないが尿にタンパクや糖が出ている者が高率にみいだされており、これが産業現場でみられるカドミウム中毒の症状と一致することなどから、カドミウムがイタイイタイ病の基盤にあることが明白になった。その汚染源が、神通川上流の神岡にある亜鉛・鉛鉱山(三井金属鉱業株式会社神岡鉱業所)からの廃水であることも突き止められた。すなわち、廃水中のカドミウムが川や土地を汚染し、飲料水や米に混入して人体内に入り、発病まで20~30年間にわたってカドミウムが体内に蓄積されるわけである。しかし、発病にはカドミウムのほかに、栄養、労働、生活その他の環境条件が加わったと考えるのが妥当であろう。
 患者数については、1969年(昭和44)制定の「公害に係る健康被害の救済に関する特別措置法」およびこれを引き継いだ1973年制定の「公害健康被害補償法」によって認定された患者数は194人(うち死亡者188人)となっている(2008年4月末現在)。それ以前の患者については実態がよく把握されておらず、第二次世界大戦後よりこの時期までに女性のみで100人近い死亡者が出たものと推定されている。[重田定義]
『萩野昇著『イタイイタイ病との闘い』(1968・朝日新聞社) ▽吉岡金市著『イタイイタイ病研究』(1970・たたら書房) ▽イタイイタイ病訴訟弁護団編『イタイイタイ病裁判1~6』(1971~74・文一総合出版)』

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世界大百科事典内のイタイイタイ病の言及

【カドミウム】より

…作業者の健康障害を予防するため,作業場内の空気についてカドミウムの許容濃度は0.05mg/m3と定められている。一方,鉱滓や製錬所から排出されたカドミウムが周辺地域の環境を汚染する事例も多く,岐阜県神岡鉱業所から流出したカドミウムが主要な原因となって,神通川流域の住民にイタイイタイ病が多発したことはよく知られている。このことが契機となって,カドミウムによる環境汚染を防止するための規制措置がとられるようになり,工場および事業場から大気中に放出されるカドミウムの排出基準は1mg/m3,人の健康を保護するための水質汚濁に係るカドミウムの環境基準は0.01mg/l以下と定められている。…

【公害】より

…足尾,別子,日立,小坂の鉱山・製錬所の公害事件や,硫酸工場の煙害に対して農民が訴訟を起こした大阪アルカリ公害裁判が有名である。足尾鉱山の足尾鉱毒事件は,銅製錬後の鉱滓が洪水のたびに大量に流出し,下流の農民の健康や農作物に被害を与えた事件で,のちのイタイイタイ病事件と同じ性格のものである。古河財閥と政府は,被害農民の反対運動を権力によって弾圧した。…

【鉱害】より

…石炭鉱業による鉱害のほか,戦時体制下では,36年11月20日の尾去沢鉱山での廃滓ダムの決壊や,43年9月10日の岩美鉱山における同様の事件など大規模な災害も発生している。
[第2次大戦後の鉱害問題]
 第2次大戦の後に鉱害問題を大きくクローズアップさせたのは,イタイイタイ病である。この病気は神通川下流域の富山県婦中町を中心に1945年以降に多発し,63年以前は不詳であるが,イタイイタイ病による死者は200名以上にのぼるともみられている。…

【公害病】より


[〈公害健康被害補償法〉の制定]
 1959年に石油コンビナートが操業を始めた四日市で,その直後から健康被害の苦情が多発しはじめ,64年度の厚生省によるばい(煤)煙影響調査の結果,四日市の喘息(ぜんそく)様の呼吸器疾患の多発は大気汚染によるものであるという発表がなされ,これを受けて四日市市が公害病としての独自の医療扶助制度を開始したことが一つの契機となって,公害病という用語が社会的に広がり,定着してきたものである。ひきつづき1960年代の後半には,四大公害裁判といわれる四日市公害,熊本および新潟水俣病,富山イタイイタイ病の裁判が始められ,71年新潟水俣病,72年四日市およびイタイイタイ病,73年熊本水俣病と,すべて健康被害を受けた原告側の勝訴の結果となり,ここに公害病の概念の原型が社会的通念として広がってきた。1969年には公害に係る健康被害の救済に関する特別措置法が成立して,医療費,医療手当,介護手当の支給を内容とする制度が動き出し,74年には〈公害健康被害補償法〉が施行されて,医療費のみならず,障害の程度,年齢に応じての障害補償費,遺族補償,療養手当などの支給の制度ができた。…

【土壌汚染】より

…日本における土壌汚染の歴史は古く,明治初期に足尾銅山の銅などを含有する排水が渡良瀬川流域の農地を汚染し,農作物などの被害が発生していた(足尾鉱毒事件)。しかし,土壌汚染が公害の一種であると法律で規定されるようになったのは,1968年に,厚生省が〈富山県の神通川流域に発生しているイタイイタイ病は,同河川の上流にある三井金属鉱業の神岡鉱山から排出されたカドミウムが水田土壌を汚染し,そこで生産された米を長期間にわたり摂取したことが主原因である〉との見解を発表した後である。すなわち,70年に開催されたいわゆる公害国会で公害対策基本法が改正された際に,典型公害の一種として土壌汚染が追加され,同時にその実施法として〈農用地の土壌の汚染防止等に関する法律〉(以下〈土壌汚染防止法〉と記す)が制定された。…

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