イチョウ(銀杏)(読み)イチョウ(英語表記)Ginkgo biloba; maidenhair tree

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「イチョウ(銀杏)」の意味・わかりやすい解説

イチョウ(銀杏)
イチョウ
Ginkgo biloba; maidenhair tree

漢名鴨脚樹,公孫樹。イチョウ科落葉高木。地質時代に栄えた植物で全世界の各地から化石が見出される。現生種はただ1種しかなく,「生きている化石」といわれている。原産地は中国大陸と想像されるが,現在イチョウの自生地日本には古く仏教の伝来とともに渡来し,神社や寺に植えられているが生長が速く,火災にあってもよく再生するので街路樹や庭園樹として盛んに栽培される。幹の周囲 14mに達する巨木があり,大イチョウとして天然記念物に指定されているものも多い。枝には短枝と長枝があり,短枝には葉が密につき花をつける。長枝には葉がまばらにつくだけで花は生じない。葉は扇形で柄があり,落葉の頃には黄色になる。雌雄異株で花は春,新葉と同時に開く。雄花は葯 (やく) の集合で穂状をなし,細長く垂れ下がる。雌花花柄の先端に裸出した胚珠だけである。普通2個の胚珠が接して生じるが,熟して種子になるのは通常1個だけである。春に胚珠についた花粉は秋になって精子を生じ受精する。精子は 1896年平瀬作五郎によって初めて発見され,それ以来イチョウの分類学上の位置や裸子植物とシダ植物の関係が明らかにされた。まれにオハツキイチョウといって退化縮小した葉の縁の一部に銀なんを生じるものもある。種子は銀なんと呼ばれ食用にされる。また材は弾力があり美しいので木魚工芸品に使われる。

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