ウミヘビ(爬虫綱)(読み)うみへび(英語表記)sea snake

翻訳|sea snake

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

ウミヘビ(爬虫綱)
うみへび / 海蛇
sea snake

爬虫(はちゅう)綱有鱗(ゆうりん)目コブラ科ウミヘビ亜科およびエラブウミヘビ亜科に属するヘビの総称。両亜科の仲間は有毒ヘビで、15属53種ほどがペルシア湾、インド洋から西太平洋、サンゴ海の暖かい海岸に分布し、一部が中央アメリカの太平洋沿岸に達している。魚類にもウミヘビの和名をもつグループがあり形態も似るため、しばしば混同される。ルソン島のタール湖に陸封された1種が淡水に生息するほかは、すべて海生である。ウミヘビは陸生のコブラ科の毒ヘビから分化したものと考えられ、すべて上あごに1対の溝牙(こうが)を備える前牙類に属する。独立したウミヘビ科にまとめられることもあるが、近年ではコブラ科に含まれ、口蓋骨(こうがいこつ)、尾部、歯骨の形態的な相違などから、エラブウミヘビ亜科Laticaudinaeとウミヘビ亜科Hydrophiinaeの2群に大別される。エラブウミヘビ亜科は典型的なウミヘビよりも起源が新しく、東南アジア産の毒ヘビのシマサンゴヘビ属Maticoraやワモンベニヘビ属Calliophisと同系統の祖先型に由来するものと考えられ、多分に陸ヘビの形質を残している。すなわち、胴の断面は円形で、腹板の幅も広く、鼻孔は頭部側面に開口する。尾はひれ状に側扁(そくへん)するが、単に皮膚の変化したもので、尾椎(びつい)突起に支えられない。卵生で、陸でも活発に行動する。ウミヘビ亜科のウミヘビは、オーストラリア産毒ヘビのアカオヘビ属Demansiaとの共通祖先型から古い時代に分化したものと考えられ、大部分は海洋生活に適応した形態をしている。すなわち、頭部は小さく、胴は後部ほど側扁し、ひれ状の尾は尾椎の棘(とげ)状突起に支えられている。鼻孔は頭頂部に開口し、肺は細長く伸びて、その後室がほとんど総排出腔(こう)近くまで達するものもある。腹板は退化して幅狭く、ほとんど他の鱗(うろこ)と区別できないものもある。すべて卵胎生で、生涯を海で過ごす。

 日本の近海に産するウミヘビは9種で、主として南西諸島沿岸のサンゴ礁付近に分布し、餌(えさ)はもっぱら魚類である。エラブウミヘビLaticauda semifasciata(全長1~1.5メートル)とヒロオウミヘビL. laticaudata(全長約1メートル)はアジア海域に広く分布し、南西諸島ではもっとも生息密度の高い種類で、夏から秋にかけて産卵のため上陸し、湿度の高い洞穴内に産卵する。卵は長径7~8センチメートルと大きく、孵化(ふか)には5か月ほどを要する。クロガシラウミヘビHydrophis melanocephalus(全長約1.2メートル)の仲間は人にかみつくため、おとなしいエラブウミヘビとは区別して、「海ハブ」とよばれている。

 東南アジアやオーストラリア近海にはより大形で危険な種類が分布している。セグロウミヘビPelamis platurusは北海道近海まで北上するが、外洋性で、もっとも遊泳力が優れたものの一つである。エラブウミヘビなどは食用に供されるほか、薫製として強壮剤に用いられ、那覇の市場でも売っている。沖縄の久高(くだか)島におけるイザイホーの神事には、イラブとよばれるエラブウミヘビとマダラとよばれるヒロオウミヘビの伝統的な薫製作りが、欠かせない行事となっている。しかし、イザイホーは1978年(昭和53)以降、後継者不足で行われていない。

[松井孝爾]

料理

沖縄ではイラブといい、第二次世界大戦前までは春・秋の気候の変わり目に「いらぶしんじ」や「いらぶのお汁」をつくって食べたものである。イラブには多種の重要アミノ酸が含まれ、骨の形成に絶対不可欠なカルシウムなども含んでいるため、子供の成長、妊産婦、体力を消耗するときなどの栄養補給の食品として、今日でもその人気が衰えない。

 イラブと昆布をいっしょにして4~5時間煮込みながら煎(せん)じたものを「いらぶしんじ」といい、またそれに根菜類、豚足(てびち)、鶏肉などを入れて味つけしたものを、「いらぶのお汁」とよんでいる。

[渡口初美]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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