ウルク(その他表記)Uruk

デジタル大辞泉 「ウルク」の意味・読み・例文・類語

ウルク(Uruk)

西アジアメソポタミアにあった古代都市。現在のイラク南部の都市サマーワの東約40キロメートルに位置する。現代名ワルカ、シュメール語名ウヌグ、旧約聖書ではエレクの名で登場する。都市の守護神イナンナイシュタル)。約4000年におよぶ歴史をもつ。19世紀半ばに発掘調査が始まり、神殿やジッグラトのほか、最初期の楔形くさびがた文字が発見された。

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精選版 日本国語大辞典 「ウルク」の意味・読み・例文・類語

ウルク

  1. ( Uruk ) 紀元前三〇〇〇年期、チグリス・ユーフラテス川下流域に栄えたシュメールの都市。楔形文書の前身「古拙文書」が多く発見された。約二〇〇〇年後ヘレニズム時代に再興期を迎える。旧約聖書ではエレク。

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改訂新版 世界大百科事典 「ウルク」の意味・わかりやすい解説

ウルク
Uruk

メソポタミア最南部の古代都市で,シュメールの中心都市の一つ。その名はシュメール語のウヌグunugに由来し,旧約聖書ではエレクEreck,現在名はワルカWarkaである。第1次大戦直前にJ.ヨルダンらのドイツ隊により最初の大規模な発掘が行われた。1928年に発掘が再開され,60年までの断続的な発掘ののち,現在発掘はほぼ恒常化している。エアンナ神域では前4千年紀初頭のウルク18層まで確認され,ウバイド期の細区分,つづくウルク期の時期設定のために重要な知見を提供した。ウルク期後期からウルクは急激に発展し,巨大な諸神殿が建設された。ウルク期末期からは現存最古の粘土板群が出土,つづくジャムダット・ナスル期の粘土板とあわせ,最初期のシュメール研究に不可欠な情報源である。初期王朝I期からII期にかけてウルクはさらに大膨張し,巨大な防壁を建設,城壁内の面積は400haにも達する。〈シュメール王朝表〉によれば,〈大洪水〉ののちキシュ第1王朝につづいてウルクの諸王がシュメール内外に覇を唱えた(ウルク第1王朝)。王朝のエンメルカル,ルガルバンダ,ギルガメシュ主人公とする叙事詩が後代に成立し,とりわけ《ギルガメシュ叙事詩》は著名。ギルガメシュはキシュ第1王朝の最後の王アガと同時代(初期王朝II期)の人物とされる。初期王朝III期後半にもウルクは有力都市であった。ルガルザゲシウンマからウルクに拠点を移し,シュメールを軍事占領するがアッカドサルゴンに敗北。前22世紀にはウトゥヘガルがシュメール人の再独立に寄与した。ウル第3王朝時代にもウルと特殊な関係を保ち繁栄した。イシン・ラルサ時代にはシンカシド王があらわれるが,そののちラルサのリムシンによりウルクは破壊された。前2千年紀中葉のカッシート王カラインダシュはウルクに神殿を建設。新バビロニア時代からアケメネス朝,セレウコス朝時代にかけてのウルクから多くの粘土板が出土している。セレウコス朝期にはギリシア名をもつ総督が出現した。パルティア時代にも建設活動が活発に実施されるが,以後しだいに放棄された。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ウルク」の意味・わかりやすい解説

ウルク
Uruk

イラク南東部にあるシュメールの古代都市。現在名ワルカ。旧約聖書ではエレク,ギリシア名ではオルコエと呼ばれた。1928年以来ドイツ・オリエント協会,ドイツ考古学研究所により発掘が続けられている。前5000年より前のウバイド期からパルティア帝国支配下(前126~224)まで続いた都市遺跡。伝説上の英雄ギルガメシュが周囲 10kmに及ぶ城壁をつくったとされる(→ギルガメシュ叙事詩)。天空神アヌ(アン)と天空の女神イナンナ(イシュタル)をまつる二つの聖域があり,前者はアヌのジッグラト地区といい,ジェムデット・ナスル期(前2900頃~前2600頃)の白神殿が頂部に置かれている。後者はエアンナ地区といい,ウルク期(前3500頃~前2900頃)の列柱装飾やコーンモザイク(びょうモザイク)装飾のある神殿建築の発展が顕著で,また最古(前3100頃)の楔形文書が発見されている。このほか,ウル第3王朝ウル=ナンム(在位前2112~前2095)のジッグラトがよく知られ,パルティア時代まで楔形文字書記の学校が存続していた。2016年,同じくメソポタミアの古代都市遺跡であるウルエリドゥ,および生物多様性の顕著なチグリス川ユーフラテス川下流の 4ヵ所の湿地帯とともに,「イラク南部のアフワール:生物多様性保護区とメソポタミア都市群の残存する景観」として世界遺産複合遺産に登録された。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ウルク」の意味・わかりやすい解説

ウルク
うるく
Uruk

古代メソポタミア南部のシュメールの都市。現在のイラク南東部の都市サマーワの東約40キロメートルに位置する。シュメール語ウヌグUnug、アッカド語でウルク、現代名ワルカWarka(イラク)、『旧約聖書』のエレクErech。市の守護神はイナンナ(セム語名イシュタル)。ギルガメシュ叙事詩の英雄の故郷である。楔形(くさびがた)文字の最古形である絵文字の発見された都市で、この原文字の時代はウルク期とよばれる。遺跡の周囲が10キロメートルに及ぶ大都市で、約4000年の歴史をもつ。1849年、1851年に試掘が行われたが、本格的な発掘は、ドイツ・オリエント学会の派遣したヨルダンJulius Jordan(1877―1945)、ハインリヒErnst Heinrich(1899―1984)らによって1913年から1939年まで15回にわたって行われた。その後もレンツェンHeinrich Jakob Lenzen(1900―1978)その他によって発掘が続けられた。文字の発明と粘土板の使用のほか、諸種の金属器、印章の使用、巨大な建築物、とくにエアンナ神殿、白神殿とそのジッグラトなどで有名である。

[吉川 守]

 ウルクの遺跡は、2016年、「南イラクのアフワール:生物の避難所と古代メソポタミア都市景観の残影」の一つとして、ユネスコ(国連教育科学文化機関)の世界遺産の複合遺産(世界複合遺産)に登録された。

[編集部 2018年5月21日]

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「ウルク」の解説

ウルク
Uruk[アッカド],Warka[英]

シュメール最古の都市の一つ。都市神は,天の神アンと女神イナンナ。楔形文字の原型になる最古の絵文字が出土した。この都市はシュメールの統一に重要な役割を果たす。シュメール語の英雄叙事詩が伝説上のウルクの王ギルガメシュなどを主人公とするのは(『ギルガメシュ叙事詩』),こうした歴史的事実が反映するのであろう。以後,アケメネス朝ヘレニズム時代まで存続した。

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旺文社世界史事典 三訂版 「ウルク」の解説

ウルク
Uruk

シュメール人最古の都市国家
『旧約聖書』のエレク(Erech)。ギルガメシュ叙事詩の主舞台で,1928年以降の発掘で著名な神殿遺跡が発見された。

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世界大百科事典(旧版)内のウルクの言及

【ウルク文化】より

…南メソポタミアにおいてウバイド期(ウバイド文化)に続く前5千年紀後半から前4千年紀中ごろまでの文化。シュメール都市ウルクの中心にあるエアンナEanna地区のXIV~IV層を標式とする。ウルクは1辺約2.5kmの不整方形の城壁で囲まれ,神殿や宮殿などの建造物,個人の家,墓地と田園がそれぞれ3分の1を占めていたと推測される。…

【楔形文字】より

…この文字体系をシュメール人から借用して表記された言語には,セム系のアッカド語(またはバビロニア語),アッシリア語,エブラ語,系統不明なエラム語,カッシート語,系統的に親縁性が立証されつつあるフルリ語と古代アルメニアのウラルトゥ語,インド・ヨーロッパ語族系の言語である小アジアのヒッタイト語,パラ語,ルウィ語およびヒッタイト王国の原住民の言語であったハッティ語などがあり,エジプトのアマルナ,シリアのウガリト,イスラエルその他からも多数のシュメール系楔形文書が発見され,国際的に広く通用していたことがわかる。
[起源と歴史]
 シュメール系楔形文字の最古資料はメソポタミア南部の遺跡ウルクの第IV層で発見された絵文字に近い古拙文字で,前3100年ころに比定されている。同種の文字は他の遺跡から発見されていないので,文字の発明はおそらくこの時期にウルクにおいて行われたと思われる。…

【シュメール】より

…この期中に沖積平野の中・南部の優位が確立し,シュメールの地が発展の先頭に立つことになる。
[都市形成期]
 次の考古学的時期であるウルク期(前3800‐前3000ころ?)には轆轤(ろくろ)製の無文土器と円筒印章の製作が始まり,末期(ウルクVIII~IV層)にはウルクを先頭にシュメール南部に都市形成の動きがおこり,ウルクは面積約100haに達し,大神殿がいくつも造営され(最大は縦80m,横30m),青銅器が製作され,IV層ではついに粘土板に刻まれた絵文字群が出現する。そこには支配者をさす称号〈エン〉,人々の集りをさす〈ウ(ン)キン〉,役職や手工業職種を示す文字,シンボルによる神名,牛・ロバ・羊・ヤギ・大麦・ナツメヤシ・犂(すき)・魚類を示す文字などが,複雑な数体系を暗示する数字とともに書かれていた。…

【シュメール美術】より

…本項では歴史の流れを考慮し,アッカド美術をも記述に含める。 シュメール美術の作品例は,ウルク期(前3800ころ‐前3000ころ)のころからのものが知られている。この時期にメソポタミア南部の都市ウルクでは,聖域エアンナEannaに神殿複合体が造営された。…

【メソポタミア】より

…シュメール地方では前6千年紀後半のウバイド期(ウバイド文化)にはいってはじめて人間の居住跡が見いだされる。とりわけ最南部のエリドゥではウバイド1期から前4千年紀後半のウルク後期(ウルク文化)に至るまでの時期に,原初的な小祠堂が大規模な神殿へと連続的に発展していた。この事実に注目する学者は,ウバイド期にすでにシュメール文化の原型が成立していたとみなす。…

※「ウルク」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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