単にアルコールとよばれることが多く,またエタノールethanolともいわれる。化学式C2H5OH。各種のアルコール飲料に含まれているので酒精spirit of wineともいう。酒として有史以前から人類に親しまれていたが,酒酔いの原因であることが確かめられたのは15世紀である。
揮発性で,特異な芳香と味をもつ無色の液体。麻酔性がある。融点-114.5℃,沸点78.32℃,比重0.79(30℃)。水,エーテルなどによく混和する。水と混合の際に熱を発し,体積が収縮する。点火すると淡い藍色の炎をあげて燃える。蒸気に引火すると爆発することがある。引火点9~32℃,爆発限界3.3~19.0容量%。酸化するとアセトアルデヒドCH3CHOを経て酢酸CH3COOHとなる。
苛性ソーダとヨウ素を加えて熱するとヨードホルムを生じ,これはエチルアルコールの検出に用いられる。また金属ナトリウムを加えると,水素を発生しナトリウムエチラートC2H5ONa(ナトリウムエトキシドともいう)を生じ,これは有機合成反応の縮合剤や触媒に用いられる。工業用アルコールは無税の取扱いをうけており,これが飲料用に転用されるのを防ぐために毒性の強いメチルアルコールが混入され,変性アルコールとよばれている。エチルアルコールを混入したガソリンはガソホールgasoholとよばれ,自動車用燃料として実用に供されている。
工業的には,デンプンや糖みつなどを原料とする発酵法(アルコール発酵)とエチレンを原料とする合成法の2法がある。合成法はエチレンC2H4への硫酸H2SO4の付加とその付加体である硫酸エチルC2H5HSO4の加水分解の2段階で行われる。
C2H4+H2SO4─→C2H5HSO4
C2H5HSO4+H2O─→C2H5OH+H2SO4
アルコールは水と共沸混合物をつくるので,蒸留では96%のアルコールしか得られない。生石灰を加えて煮沸後蒸留すると99.5%程度となり,さらに金属カルシウム,ベンゼンなどを加えて再び蒸留すると微量の水を除くことができる。99.5%以上のアルコールを無水アルコールという。
タンパク質を凝固させる性質を利用した消毒殺菌剤(殺菌力は水に対する濃度70%のとき最大),飲食料用,エーテルや各種エステル製造のための化学工業用原料,溶剤などに用いられる。
執筆者:中井 武
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
…ベンゼン核のような芳香核に直接水酸基が結合したものはフェノールと総称され,アルコールとは区別される。エチルアルコールC2H5OHを単にアルコールと略称することが多い。アルコールという名はアラビア語に由来し,alは定冠詞,kuḥlは微粉末を意味する。…
※「エチルアルコール」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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