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エロス エロスErōs

翻訳|Erōs

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

エロス
Erōs

ギリシア神話の愛の神。ラテン語名をクピド (キューピッドはその英語化) という。ヘシオドス叙事詩神統紀』では,天地生成の初めにカオスに次いで生じた最古の存在の一つである。すべての神々のなかで最も美しく,アフロディテが神々の仲間に加わると,すぐこの女神に随伴するようになったといわれているが,のちにはアフロディテアレスの種によって生んだ息子とみなされるようになった。弓矢を持ち,金の矢で射ることによって恋情を,鉛の矢で射ることで嫌悪の情を燃立たせるという。人間の美女プシュケを愛し,彼女を憎悪してやまないアフロディテの妨害にもかかわらず万難を排して彼女と結婚して,霊魂の人格化された存在にほかならない彼女を神々の仲間入りさせたとされる。

エロス
Eros

1898年8月 13日にコペンハーゲンウラニア天文台の C.ビットにより発見された小惑星 433号。の位置における平均実視等級 10.3等。長さ約 35km,幅約 16km,厚さ約 7kmの不規則な岩石状で,5時間 16分の周期で自転し,明るさが 1.5等程度変化する。公転周期 642日,軌道離心率 0.22。その公転軌道は火星軌道の内側に入り込み,地球に 2000万 kmまで近づくことがあるので,レーダの発達以前は太陽視差精密測定にしばしば利用された。水星や金星への接近を利用して,それらの惑星の質量の計算にも役立ってきた。

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デジタル大辞泉の解説

エロス(〈ギリシャ〉Erōs)


ギリシャ神話で、愛の神。アフロディテの子。ローマ神話のクピド(キューピッド)またはアモルにあたる。恋の弓矢を持つ幼児の姿で表されることが多い。
小惑星の一。直径約20キロで、周期的に地球に2300万キロまで接近するので、太陽系の距離測定の基準にされた。

異性に対する、性愛としての愛。愛欲。
プラトン哲学で、真善美へのあこがれという純化された衝動。

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世界大百科事典 第2版の解説

エロス【Eros】

1898年ウィットCarl Gustav Wittによって発見された特異小惑星の一つ。地球に異常に接近する可能性があるという点と,著しい変光を示すという点で特異である。軌道半長径1.46天文単位,離心率0.22という値から計算すると,近日点付近では地球から2240万kmまで接近する可能性がある。1900年および31年に起こった接近の機会を利用して天文単位の値の測定が行われたことは有名である。エロスの変光は規則正しく5時間16分の周期で繰り返され,変光の振幅はゼロから最大1.7等級にまで達する。

エロス【Erōs】

ギリシア神話の愛の神。ラテン語では,アモルAmorあるいはクピドと呼ばれた。ヘシオドスは《神統記》においてエロスを,世界生成の際にカオス(混沌)に続いてガイア(大地)およびタルタロス(深淵)とともに生まれた,神々のなかでも最も美しい神と述べている。またアリストファネスは喜劇《鳥》のなかで,古いオルフェウス教の教義を引用してエロスを,いまだ大地も大気も天空もないとき,夜の女神ニュクスNyxがもたらした世界の卵から生まれ出た万物の創造者,とうたっている。

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大辞林 第三版の解説

エロス【Erōs】

○ ギリシャ神話の愛の神。有翼で弓と矢を携える。神々のうちで一番若く、時代が下るとともに、若者から少年・幼児へと姿を変えて描かれる。文学・美術では、アフロディテの子とされることが多い。ローマ神話のキューピッドと同一視される。
愛。智など自分に欠けたものを得たいと求める衝動として、プラトンによって用いられた語。 → アガペー
性的な愛。
フロイトの用語。性本能・自己保存本能を含む生の本能をさす。 ↔ タナトス
小惑星の名。長径38キロメートル。火星と木星との間に長い楕円形の軌道をもち、約二年ごとに地球に2300万キロメートルの距離まで大接近する。1898年発見。

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世界大百科事典内のエロスの言及

【特異小惑星】より

…このように地球に衝突する可能性のある小惑星は直径1km以上のものに限ると約500個くらいあると推定され,衝突の確率は100万年に1回程度と考えられている。(4)最近では変光の振幅の大きさの差こそあれ,小惑星が変光しているということは一般的な性質と考えられているが,しばらく前までは433番エロスのようにとくに著しい変光を示す(振幅1.7等級)もの,すなわち形状が著しく不規則である(35km×16km×7km)と考えられるものを特異小惑星の中に加えた。(5)小惑星の軌道の平均運動の値を統計的に調査すると,木星の平均運動300″/日と簡単な整数比関係にあるもの(例えば3/2倍の450″という平均運動をもつヒルダ群,1/1倍の300″の平均運動をもつトロヤ群に属する小惑星)は,近くに似たような平均運動をもつ小惑星がない中で群をつくって存在していたり,逆に連続的な平均運動をもつ小惑星が連なっている中で空隙(くうげき)をつくっていたりする。…

【星】より

… またギリシア神話の星座の起源譚の中には,しばしばオリエントの神話がとり入れられている。たとえばうお座の起源は,怪物の王テュフォンを恐れ,神々がそれぞれ動物に姿を変えて姿を隠したときに,美の女神アフロディテは,息子の愛の神エロスとともにユーフラテス川に飛びこみ,魚たちにかくまってもらった。そこでその魚たちが,その功績によって星にされたと物語られている。…

【愛】より

…代表的なものの一部を,比較のために要約すれば,つぎのごとくである。
[エロスとアガペ]
 プラトンの説く,〈エロスerōs〉の愛は,自己に欠けたものへの欲求である点,上記の〈欲求説〉に近い。しかし,その欲求が,対象自体よりも,対象に発現する,より高い美しさ,完全さ,価値に向かい,究極は〈一者〉との合一を目ざすというのは,〈イデア説〉と同根である。…

【エロティシズム】より

…語源はギリシア神話の愛神エロスで,性的なイメージを意識的あるいは無意識的に喚起することをさす。性行為は,それ自体では別にエロティックではない。…

【ギリシア神話】より


[宇宙の生成]
 幾種かの宇宙生成神話が伝えられるうちで,もっとも規範的なのはヘシオドスの語るもので,ここでは神々も宇宙も生まれ出てくるものと構想される。最初は空虚を意味するカオスが,ついでガイア(大地)とその奥底なるタルタロスが,さらにいわばいっさいの生成の根源力としてエロスが生じた。カオス(中性名詞)からは形なきものどものエレボスErebos(闇)とニュクスNyx(夜)とが,そして夜から輝く上天の気アイテルAithērとヘメラHēmera(昼)とが生まれる。…

【クピド】より

…女神ウェヌス(ビーナス)の子で,アモルAmor(〈愛〉の意)とも呼ばれる。もともとローマ人の崇拝の対象としてあった神ではなく,ギリシアのエロスにラテン語の普通名詞をあてたもの。ただしローマ人の眼前にあったエロスは,古いヘシオドス的な大神ではなく,裸体で,肩に翼をつけ,気まぐれに恋の矢を放ついたずら好きの幼児というヘレニズム期の詩人や美術家が好んで描いたエロスであった。…

【性】より

…そこでは男女の関係もこの陰陽の原理に包摂されると考えられた。 プラトンは,人間が根源的にもつ原初の理想的状態への衝動をエロスと呼んだ。プラトンのエロスは確かに男女の愛を含むものであったが,そればかりではなく,ともに真理を探究することによってイデアの世界に達しようとする師弟間の愛なども含んでいた。…

【プシュケー】より

…このような事情は,心や精神と関係する近代西欧語,たとえば英語psychology(心理学),psychiatry(精神医学)などの語に反映されている。ヘレニズム時代には,女性に擬人化されたプシュケーと愛の神エロス(ラテン語でクピドまたはアモル)の物語が詩や美術に好んで採り上げられた。アプレイウスが伝える物語は,そうした神話にお伽噺の要素を混じえたものである。…

※「エロス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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