時間の経過に従って,物事が変化していく経時変化をいう.経時変化していく過程で,変化が望ましい場合には,熟成,ねかし,ならし,養生,蒸しなどの用語が使われている.変化が望ましくないか,性質が低下していく場合には,老化,老成,加齢などの用語が使われている.これらの用語は専門分野で特有な使われ方をしている.たとえば,
(1)熟成:ビスコースレーヨンの製造工程において,紡糸に適する粘度まで放置することをいう.酒の醸造では,旨みをださせるため放置することをいう.ゴム工業では,素練り,混練の工程後,一定の時間放置すると,切断した分子鎖が再結合して加硫ゴムの性質が向上することをいう.配合ラテックスにおいてもラテックスが経時変化で安定することをいう.このように,熟成とは,成形加工の操作がほぼ完了した後,時間をかけることによって性質が向上することをいい,ねかしともよばれている.結晶成長において,結晶を大きく成長させることなどもいう.
(2)養生:接着や塗料の分野で,時間経過により性能を向上させることをいう.
(3)蒸し:染色分野で,染色工程後,染料の固着(染着性)を高めるために蒸気処理することをいう.
(4)老化:経過時間とともに材料の性質が悪くなることをいい,材料の劣化と同じ意味で使用されている.外部環境(熱,光,放射線,薬品,微生物,機械的刺激など)からの影響により分解などが起こり,時間の経過に従い材料の性質が悪くなっていく(色変化,亀裂,強度低下,性能低下など)ことを,老化または劣化という.
(5)老成:ビスコースレーヨンを製造する工程で,ビスコースを空気中に放置すると,セルロースの重合度が低下することをいう.
(6)加齢:生物が年をとっていくことであるが,生物の分野では,細胞が老化していく過程を細胞加齢,細胞分裂加齢という.また,人では加齢により老熟,老練するという.
このほかに,金属の分野では,時間経過により材料の強度が増す現象を時効(硬化)とよんでいる.一般に,成形加工後の材料の強度などの性能を向上させる目的で,熱を加えて放置する熱処理という方法がある.熱によって性能が悪くなる場合は,熱劣化という.繰り返し外部刺激(熱,力など)をうけ,材料の性能が悪くなる場合を疲労という.[別用語参照]時効硬化
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
…貧栄養湖から湿原に至る上述のような湖の変遷を湖の遷移という。生物が年をとっていく経過になぞらえて〈エージングaging〉ということもある。したがって,富栄養化は湖の遷移における初期段階の変化として位置づけることができよう。…
…人間などの多細胞動物では,卵が受精すると発生を開始して細胞分裂を重ね,しだいに形態,機能を分化させつつ成長し,性的に成熟して生殖を行い,次の世代をつくると,やがて機能が衰えて死ぬ。このように個体が年をとっていくこと,つまり生活史の経時的・不可逆的進行が加齢(エージング)である。〈加齢〉には必ずしも老化が伴うわけではないから,環境に対する体の適応機能の衰えや,抵抗力の低下などによって示される成熟期以降の退行的変化を意味する〈老化〉とは概念が異なるが,しばしば両者は混用される。…
※「エージング」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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