ドイツの経済学者。経済政策の思想と理論の研究を通して,第2次大戦後の西ドイツの経済復興政策に大きな影響を与えた。新理想主義の流れに属する哲学者ルドルフ・オイケンの子としてイェーナで生まれ,1927年以降フライブルク大学教授。50年ロンドン大学に出講中,病を得て客死。ドイツ貨幣理論に関する最も重要な貢献の一つとシュンペーターに評された《ドイツ貨幣問題に関する批判的考察》(1923)は,オイケンの最初の理論的著作である。同書は,第1次大戦後のハイパー・インフレーションに対して無力無策だった歴史学派の経済学への決別の書でもあった。ほかに主著としては,経済理論と歴史を統合する立場から〈形態学〉という着想を用いて,経済と国家を論じた《国民経済学の基礎》(1940),理想的な競争秩序を実現するための制度的枠組みを説いた《経済政策原理》(1952)などがあげられる。第2次大戦後,オイケンをはじめとするフライブルク学派(その年報《オルドーOrdo(秩序)》は1948年に創刊)の学者たちは,新自由主義を提唱し,自由市場経済の政策立案に大きな力があったといわれている。
執筆者:猪木 武徳
ドイツの哲学者。19世紀中ごろの自然科学的唯物論や実証主義に対する批判として1870年代に生じた新理想主義に属する。ドイツ観念論の流れをくむとともに道徳主義的精神主義の立場に立つ彼は,物質文明が精神生活を貧しいものにしていることを批判して,高い精神的な生に至ることの必要性を強調し,ヨーロッパだけでなく日本でも一時多くの読者を得た。1908年ノーベル文学賞を受賞。彼の哲学の中心概念は〈精神的生〉である。これは超主観的でしかも人格的な統一を持ち,倫理的で自由な創造の働きをするものであり,その展開過程が歴史である。人間は知的な作用によってではなく,倫理的な反省と行為によって高い精神的生に達することができ,そうすることによってのみ人間存在に意義が生ずると説く。著書に《精神的生の統一》(1888),《大思想家の人生観》(1890)などがある。
執筆者:関 雅美
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
ドイツの哲学者。1月5日東フリースラントのアウリッヒに生まれ、ゲッティンゲン大学で学ぶ。1871年よりバーゼル大学で、1874年以後イエナ大学で教授を歴任した。1908年ノーベル文学賞受賞。1926年9月15日イエナで没す。近代文明を批判して、「非人間的になった文化の営み」の鎖から、人間の心を解放して、新しい内的生、純粋な倫理的、精神的活動を創造する「新理想主義」を提唱した。この活動の目標は「共同の創造と生への本質的な統合」であり、共同的生をなおざりにする講壇哲学や知性主義は否定される。諸民族の精神的協力の促進に貢献し、中国の法学者張嘉森(ちょうかしん)(1887―1969)と『中国と欧州における生の問題』(1922)を編集出版した。主著に『人類の意識と活動における精神的生の統一』(1888)、『大思想家達の人生観』(1890)、『人生の意味と価値』(1908)、『人間と世界』(1918)などがある。
[小田川方子 2015年2月17日]
ドイツの経済学者。有名な哲学者ルドルフ・オイケン(イエナ大学教授)を父に、また物理化学者アルノルト・オイケン(ゲッティンゲン大学教授)を兄にもつ。イエナ大学卒業後、ベルリン大学私講師、チュービンゲン大学教授を経て、1927年フライブルク大学経済学正教授に就任。50年3月20日ロンドン大学出講中に客死した。彼はもともとドイツ歴史学派の影響を受けていたが、第一次世界大戦後ドイツの超インフレーションの解明が歴史学派の経済学では不可能とみてこれと決別した。彼はまず貨幣理論を、ついで資本および利子理論を研究し、ベーム・バベルクやウィクセルの成果をさらに展開した『資本理論の研究』(1934)は有名である。また主著『国民経済学の基本問題』(1940)では、各経済体制に固有な経済循環図式に応じた経済分析に重点を置き、政府は国民経済活性化のために政策的に自由経済を擁護すべきだと主張している。
彼を中心として、アメリカのシカゴ学派にも比肩する競争原理・自由経済賛美のフライブルク学派が形成され、その思想は、第二次大戦後の西ドイツの経済復興にあたって指導的役割を果たした。
[島津亮二]
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…20世紀前半を代表する哲学の一分野で,実存の哲学の前段階を成す。理性を強調する合理主義の哲学に対し,知性のみならず情意的なものをも含む人間の本質,すなわち精神的な生に基づく哲学が〈生の哲学〉であり,ベルグソン,R.オイケン,ディルタイ,ジンメル,オルテガ・イ・ガセットなどを代表とする。その先駆は,18世紀の啓蒙主義に対してルソー,ハーマン,F.H.ヤコビ,ヘルダー,さらにはF.シュレーゲル,ノバーリスなどが感情,信仰,心情,人間性の尊重を,またメーヌ・ド・ビランやショーペンハウアー,ニーチェなどが意志の尊重を説いたことにさかのぼる。…
※「オイケン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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