オキシゲナーゼ(読み)おきしげなーぜ(英語表記)oxygenase

翻訳|oxygenase

デジタル大辞泉 「オキシゲナーゼ」の意味・読み・例文・類語

オキシゲナーゼ(oxygenase)

酸化還元酵素の一。酸素分子中の酸素原子を基質に結合させる触媒となる。酸素添加酵素酸素化酵素

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「オキシゲナーゼ」の意味・わかりやすい解説

オキシゲナーゼ
おきしげなーぜ
oxygenase

酸化還元酵素(酸化還元反応を触媒する酵素の総称)の一種で、分子状酸素(O2)の酸素原子(O)が直接有機基質に取り込まれる反応を触媒する酵素の総称。酸素添加酵素ともいう。国際生化学連合(現在は国際生化学・分子生物学連合)の酵素委員会が制定した酵素の分類による「EC1.酸化還元酵素」に属す酵素群(酵素番号の項目参照)。酸化還元酵素は生体内における酸化還元反応を触媒する酵素であり、反応の様式により、酸化酵素オキシダーゼ)、酸素添加酵素(オキシゲナーゼ)、脱水素酵素デヒドロゲナーゼ)、還元酵素(レダクターゼ)などとよばれる。

 酸化還元反応とはある物質から他の物質へ電子が渡される反応であるといってもよい。電子を奪われた物質は酸化された、電子を受け取った物質は還元されたという。一般に、ある物質が
(a)酸素を受け取ったとき
(b)水素を奪われたとき
(c)電子を奪われたとき
その物質は酸化されたというが、(a)および(b)の反応も(c)の変化として説明できる。有機化合物が(a)あるいは(b)の反応を受けたときには、炭素の酸化数(電子の授受を表す数。電子一つ奪われたら+1、受け取ったら-1と表す)に変化がないので(c)であることがわかりにくい。この場合は、炭素と炭素に結合している原子の電気陰性度(結合している原子それぞれの電子を引き付ける傾向)を比較する。電気陰性度に違いがある原子間の共有結合の電子対は、電気陰性度の大きい方の原子に割り当てる。酸素、炭素、水素の電気陰性度は酸素>炭素>水素である。すなわち、(a)酸素を受け取った場合は、この酸素と結合した炭素は電子を酸素のほうへ奪われたことになる。また、(b)水素を奪われた場合は、その水素と結合していた炭素はそれまで水素の電子を引き付けていたので、電子を奪われたことになる。生体は酵素を触媒として、いろいろな有機物および無機物を酸化還元することによって、必要な物質を合成し、不必要または有害な物質を代謝し、あるいは生命活動に必要なエネルギーを獲得している。

 酸化還元酵素のうち、酸素を電子受容体として基質(酵素反応を受ける物質)を酸化する酵素を酸化酵素と総称する。酸素は主として水や過酸化水素となったり、有機化合物中に取り込まれたりする。後者を触媒する酵素はオキシゲナーゼとして区別することが多い。すなわち、オキシゲナーゼは分子状酸素(O2)の酸素原子(O)が直接有機基質に取り込まれる反応を触媒する酵素の総称である。

 オキシゲナーゼは人間をはじめ、動物、植物、微生物に広く分布し、アミノ酸や脂質、ホルモン薬物毒物の代謝に重要な役割を果たしている。次の2群に分類される。

(1)分子状酸素(O2)の酸素1原子を添加する反応を触媒する酵素群(モノオキシゲナーゼ)。S+O2+AH2→SO+A+H2O
(2)酸素2原子を添加する反応を触媒する酵素群(ジオキシゲナーゼ)。S+O2→SO2
 ここで、Sは基質、AH2水素供与体を表す。モノオキシゲナーゼには、たとえばシトクロームP-450とよばれている酵素群がある。これは副腎、肝臓、腎臓、腸、肺、精巣などの顆粒(かりゅう)画分(ミクロゾームミトコンドリア)に存在し、脂溶性の物質に1原子酸素を添加する酵素で、エイコサノイド(アラキドン酸などの炭素数20の多価不飽和脂肪酸から生成する一群の生理活性物質)の合成・分解反応、脂肪酸のω(オメガ)酸化、ビタミンDの活性化反応、薬物など外来化学物質の代謝に関与している。また、トリプトファン(アミノ酸の一種)の代謝においても、トリプトファン2,3-ジオキシゲナーゼ(別名トリプトファンピロラーゼ)やトリプトファン-5-モノオキシゲナーゼが働いている。早石修(はやいしおさむ)(1920―2015)は酸素の安定同位体(18O)を用いて、酸素添加酵素により基質に取り込まれる酸素は空気中の酸素に由来することを確証した。

[徳久幸子]

『Lloyd L. Ingraham他著、松尾光芳訳『酸素の生化学――二原子酸素反応の機構』(1991・学会出版センター)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「オキシゲナーゼ」の意味・わかりやすい解説

オキシゲナーゼ
oxygenase

酸化酵素の一群で,分子状酵素による酸化反応を触媒する酵素。酸素添加酵素ともいう。たとえばピロカテカーゼは,カテコールを酸素原子2個で次のように酸化して開環する。 (C6H4)(OH)2+O2→HOOC-C4H4-COOH 。一方,フェニルアラニンを酸化してチロシンとするフェニルアラニン・ヒドロキシラーゼの場合には,酸素分子のうち1原子のみがベンゼン核に導入され,他の1原子の酸素は補酵素が受取る。すなわち,フェニルアラニン+O2+NADH2→チロシン+NAD+H2O 。このように基質と補酵素とを組合せて酸化するオキシゲナーゼを,特に混合機能 mixed functionオキシゲナーゼという。

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化学辞典 第2版 「オキシゲナーゼ」の解説

オキシゲナーゼ
オキシゲナーゼ
oxygenase

酸化還元酵素の一種.酸素分子の2個のO原子を同一基質に結合させる反応を触媒する酵素の総称.たとえば,カテコールオキシゲナーゼは基質であるカテコールに酸素を添加し,cis-ムコン酸を生成する反応を触媒する.そのほか,トリプトファンオキシゲナーゼなどがある.広義には,シトクロムの一種であるCYPなどのモノオキシゲナーゼ(O原子1個を付加する酵素)も含む.[CAS 9037-29-0]

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

百科事典マイペディア 「オキシゲナーゼ」の意味・わかりやすい解説

オキシゲナーゼ

酸素添加酵素とも。分子状酸素を活性化することによって酸化を行う酸化還元酵素の一群。芳香環の二重結合位の開裂反応(カテコールのシス‐シス‐ムコン酸への酸化など),芳香環の水酸化(フェニルアラニンからのチロシンの生成など)等を触媒する。いずれも一般にFe2(+/),Cu2(+/)等の存在が必要である。後者の場合は水酸化酵素ともいわれ,この場合は同時に補酵素NADPHやNADH等の水素供与体が消費され,水が生成される。

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栄養・生化学辞典 「オキシゲナーゼ」の解説

オキシゲナーゼ

 酸素添加酵素ともいう.[EC1.13.99]に分類される.ある化合物を直接酸素と結合させる反応を触媒する酵素.酸素1分子を取り込ませるモノオキシゲナーゼと2分子を取り込ませるジオキシゲナーゼがある.いずれもビタミンCを必要とする反応.

出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のオキシゲナーゼの言及

【酸化還元酵素】より

…フラビンを含む酸化酵素では,脱水素反応によって基質がまずフラビンを還元し,ついで還元型フラビンがO2と反応して,H2O2を生ずる。 分子状酸素との直接反応の結果,酸素原子を基質にとりこむ様式の反応を触媒する酵素もあり,これらは酸素添加酵素(オキシゲナーゼoxygenase)と呼ばれる。酸素分子中の2原子のOがいずれも基質にとりこまれる反応を触媒するもの(ジオキシゲナーゼ)と,一方を基質にとりこみ,一方を還元してH2Oにするモノオキシゲナーゼ(ヒドロキシラーゼhydroxylaseともいう)とがあり,鉄,銅などの金属を含むものが多い。…

※「オキシゲナーゼ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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