1,2-ジヒドロキシベンゼンのことで,ピロカテキンpyrocatechine,ピロカテコールpyrocatechol,ドイツ語でブレンツカテキンBrenzcatechinなどともいう。カテキュー(阿仙薬)の乾留の際発見されたので,この名で呼ばれる。リグニンやカテコールタンニンなどの天然色素に誘導体として存在し,それをアルカリ融解すると得られる。コールタールおよび石炭乾留ガス液中にも少量見いだされる。またこの硫酸エステルは,ヒト,ウマの尿中に存在している。昇華性がある無色の結晶で,融点105℃,沸点245℃。水,エチルアルコール,エーテル,ベンゼンなどに溶ける。空気,光などにより褐色になる。アンモニア性硝酸銀やフェーリング液を還元する。酸化銀により酸化されてo-ベンゾキノンになる。多くの金属イオン(たとえば,Ti,Zr,Hf,V,Nb,Cr,Mn,As,Sn,Pb,Sbなど)とキレート錯体を形成するので,これらの金属の検出用試薬として用いることができる。また,亜硝酸イオン,酸素分子などの検出にも使うことができる。生体内での芳香族化合物の酸化分解の中間体であり,カテコール酸化酵素によりさらに酸化されて,最終的にはシス-シス-ムコン酸になる。工業的には,媒染染料であるアリザリンの合成原料となるほか,写真用現像試薬や酸化防止剤としても用いられる。サリチルアルデヒドC6H4(OH)(CHO)のアルカリ性過酸化水素による酸化,ハロフェノールC6H4X(OH)あるいはベンゼンジスルホン酸C6H4(SO3H)2のアルカリ融解などにより合成される。
執筆者:岡崎 廉治
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
pyrocatechol,1,2-dihydroxybenzene.C6H6O2(110.11).カテキューの乾留によって得られるが,o-クロロフェノールのアルカリ融解,グアイアコールの脱メチル化などによって合成される.無色の稜柱状晶.融点104 ℃,沸点245 ℃.1.344.Ka 3.3×10-10(18 ℃).昇華しやすく,水,アルコールあるいはエーテルに可溶.酸化されやすく,とくにアルカリ溶液は空気中で変色しやすい.o-キノンとの間に酸化還元系をつくり,生体内電子伝達系の一つとしてはたらく.メトール(p-メチルアミノフェノール)と組み合わせて写真用現像薬として用いられる.また,アルカリ溶液中で金属と錯体をつくるので,分析用試薬としても用いられる.[CAS 120-80-9]
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
二価フェノールの一つ。1,2-ベンゼンジオール、1,2-ジヒドロキシベンゼンのこと。慣用名としてピロカテコール、ブレンツカテキンなどともよばれる。
リグニンやタンニンのアルカリ融解によっても生成するが、1,2-ジクロロベンゼンを銅塩を触媒としてアルカリと加熱して製造する。純粋なものは無色の結晶であるが、酸化を受けやすく、空気や光によって着色する。エタノール(エチルアルコール)やエーテルによく溶け、また冷水にもかなり溶ける。還元力が高く銀鏡反応を示し、フェーリング液を還元する。写真の現像液の主成分として、またチタン、モリブデン、鉄、コバルトなどの金属イオンの分析試薬としても用いられる。
[徳丸克己]
カテコール
分子式 C6H6O2
分子量 110.1
融点 105℃
沸点 245℃
比重 1.344
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
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