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オーストラリア先住民 オーストラリアせんじゅうみん Australian Aboriginals; Australian Aborigines

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

オーストラリア先住民
オーストラリアせんじゅうみん
Australian Aboriginals; Australian Aborigines

オーストラリアの先住民ニグロイドオーストラリア人種に属する。白人の祖先と考えられることもあり,またオーストラロイドの主幹人種とも考えられる。茶褐色の皮膚,波状毛ないし毬状毛の頭髪,体毛豊富で眉上弓がよく発達し,広鼻,長頭などの形質特徴を示す。

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出典|ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

オーストラリア先住民
おーすとらりあせんじゅうみん
Australian Aborigines

オーストラリア大陸に先住していた人々。アボリジニーともいう。オーストラロイド人種に属し、形質的特徴としては、濃褐色の皮膚、黒色の緩い波状毛をもち、ひげと体毛に富む。眼窩(がんか)は深くくぼみ、鼻翼は平たく広がっている。平均身長は約170センチメートル。言語の系統はよくわかっていない。多くの方言に分かれ互いに理解不可能なものも多いが、先住民は多言語に習熟しており意思疎通を図ることができる。彼らの祖先は、最終寒冷期(いわゆるビュルム氷期)の海水位の低い時期、とくに1万7000年前(古くは4万年前)ごろに、マレー半島、インドネシア、ニューギニア島などを通り、オーストラリア大陸北部に移住してきたものと推測される。ヨーロッパ人が本格的に移住してきた18世紀後半の時点で、人口は約30万人、およそ500の部族に分かれていた。現在の人口は41万0003(2001)。大陸北部と東部の海岸沿いは降水量が多く先住民の人口密度も高いが、内陸の乾燥地域では低い。大陸北部アーネム・ランドを除いては、長い期間、外部との接触をもたなかったため、先住民全体として文化的に一つのまとまりをもっている。[榎 陽介]

伝統的生活と社会

採集狩猟生活を営み、ディンゴとよばれる犬を愛玩(あいがん)用に飼育している。男が狩猟をし、女は植物性の食物を採集したり小動物をつかまえる、といった分業がみられる。狩猟の道具はおもに投槍(なげやり)だが、ウーメラとよばれる槍投げ器をもつ。またブーメランも使い、これらでカンガルーやワラビー、エミューなどの比較的大形の動物をとる。採集の道具としては、たとえば根を掘り起こすのに掘棒が使われる。集めた種子を石臼(いしうす)でひいて粉にし、練ったものを、地面におこしたたき火の灰の中で焼いて食べる。道具はすべて石器か木製品であり、金属器をもたなかった。彼らの摂取する食物のうち女性の労働に依存する割合は高く、メギットMervyn J. Meggitt(1924―2004)によれば、大陸中央付近の砂漠に住む先住民集団ワルビリでは70~80%に達するという。獲物や水場を求めて移動するため、住居は木を組み合わせた風よけ程度のものである。また以前は衣服をまったく用いなかった。
 社会は基本的に父系で、各氏族はその象徴となる動植物、つまり神話上の祖先をもつ。その祖先の聖地のある土地の資源については優先権を有している。氏族が外婚単位であり、女子はおおむね誕生以前に婚姻の相手が親族によって決められる。15~20の氏族が集まって一部族を形成している。社会は系譜と世代によって、二分、ときには四分、八分される。一方、自然界もこの社会構造に対応して二分、四分、八分される。行動は親族関係により規制され、とるべき態度や権利義務が決定される。[榎 陽介]

精神文化

彼らは現在意識され経験される時間とは別に「夢見(ゆめみ)」という時間の概念をもっている。子供、主として男児は、通過儀礼を経て夢見の知識を獲得していく。この過程で割礼(かつれい)や歯を欠くといった試練を課す地域もある。大昔は夢見の時代であり、神話上の半人半獣の祖先や英雄たちが地上をさまよい、現在の地形をつくり、人間に社会組織や技術、儀礼などを与えたとされる。夢見は過去の時代であるとともに、儀礼により活性化される現在でもある。眠っている間は夢見の時に戻るとされている。妊娠について夫の生理学的関与を認めておらず、聖地から聖霊の子供が胎内に入り込むのだと考えられており、夫はそれを夢でみて知るといわれる。夢見の知識は老年に至って完成されるため、老人は権威あるものとなる。この夢見の概念を、先住民諸集団のなかでもとくに発達させたのが、アランダである。
 病気の治療は呪術(じゅじゅつ)師が行う。すべての死には呪(のろ)いなどの原因があるとされ、だれが呪いをかけたかが追及される。[榎 陽介]

芸術

絵画、彫刻、音楽、踊りなどによって、神話を再現するなど、芸術は宗教儀礼と深くかかわっている。儀礼場の配置や参加者の体に描かれる模様、踊りの振付けなどは、いずれも夢見のときにもたらされたものである。
 オーストラリア大陸中央部の砂漠地域では、絵画、彫刻などに同心円、螺(ら)線、直線を組み合わせた模様が多くみられる。この模様を石に刻んだものをチュリンガといい、聖なるものとされる。これは、いくつかの通過儀礼の段階を通って成年男子として認められた者のみが手を触れることができる。一見抽象的なこれらの模様にも、それぞれ意味があり、神話の一場面を表している。
 アーネム・ランドでは、伝統的に樹皮を用いたバーク・ペインティングが盛んで、意匠もより具体的である。洞窟(どうくつ)画も盛んで、人物や動物は、表面と同時に内臓や骨格も描かれている。これらはレントゲン写真のようであることからX線画とよばれる。
 各氏族の象徴である模様があり、他の氏族がみだりに使うことは許されない。また多くの図柄は固定されているが、個人的な創造によるものもあり、自由な芸術活動もみられる。さらに、儀礼とは別に、純粋に踊りを楽しむコロボリーとよばれる集会がある。
 技術の改善によって生み出される余暇は儀礼に費やされる。このように一般に先住民文化には、生活の維持に必要なだけの生産活動をし、余剰生産に力を注がない傾向がある。[榎 陽介]

現状

現在、彼らの多くは都市や牧場、先住民保護地域に定住している。伝統的生活が大きく変容するにしたがって、多部族混合の集団も出現するようになった。西欧式の教育の普及はこれまでの世界観を変え、老人の権威を低下させた。婚姻の自由は、それを支える親族関係の重要性を脅かしている。しかし最近では、先住民としての独自性を主張し、自立の意識も強くなってきている。
 オーストラリア政府の従来の政策は、白人文化への吸収同化により先住民問題の消滅を待つものであった。しかし、1967年の国民投票により先住民にも市民権が認められ、1970年代に入ってからは先住民の独自性を認める方向へと変化をみせている。[榎 陽介]
『新保満著『オーストラリアの原住民』(NHKブックス)』

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