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身体変工 しんたいへんこうmutilations and deformations

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

身体変工
しんたいへんこう
mutilations and deformations

永久的ないし半永久的に身体の一部を外科的に変形加工する習俗。身体のあらゆる部分について行われ,その手法も多種多様で,瘢痕文身入墨,彩色などの皮膚加工や抜歯,手指切断,脱毛,穿孔割礼なども身体変工といえるし,広義には中国の纏足 (てんそく) ,宦官 (かんがん) も含まれる。穿孔の際,輪,円盤,棒などの装飾品をはめこむ例もみられる。変工目的や施す時期もさまざまであるが,成年式秘密結社への加入などと関連して行われることが多いのは注目される。ニューギニアでは成年式に骨製の針で鼻の穿孔を行う。ポリネシアでは入墨のない男性は結婚する資格がないとされている。 (→身体彩色 )  

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百科事典マイペディアの解説

身体変工【しんたいへんこう】

人体のある部位に恒久的な変形や毀損を加える慣習。例えば文身割礼,頭蓋変形,去勢,抜歯,断指の他,社会によりその部位や方法は多様である。男女,長幼,地位・身分の区別等,社会成員の分類と対応している場合が少なくない。

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世界大百科事典 第2版の解説

しんたいへんこう【身体変工】

身体の一部に変形や損傷などの変工を加える慣習。身体変形deformationと身体損傷mutilationに分類されることがある。広義の意味では,身体装飾の一種と考えられるが,装飾品を身につける場合や身体彩色を行う場合などと異なり,一度変工を加えられた身体の部位は元の状態に戻ることがないという点に特色がある。身体変工のおもなものは,変工の方法や変工の施される部位によって,次のように分類される。
[種類]
 (1)身体穿孔(せんこう) 主として,耳たぶ,鼻中隔鼻翼,ほお,唇,あごなどが穿孔される。

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大辞林 第三版の解説

しんたいへんこう【身体変工】

身体の一部に手を加えて、形を変えたり傷をつけたりすること。割礼・纏足てんそく・入れ墨・ピアスなど。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

身体変工
しんたいへんこう

自然のままの身体の一部に外科的な変形加工を行うこと。人類社会にほぼ普遍的に存在する習慣で、たとえば、いれずみ、ピアスなどもこの一種であるが、未開社会の民族の間ではほかにもさまざまな変工の施術が実行されている。その様式はほぼ次の四つに分類することができよう。[山本真鳥]

身体の一部を切断・切除するもの

主として手指、歯、性器などがこの施術の対象となる。手の指を儀礼的に切断する習慣は、世界各地の民族の間に存在するのみならず、古くはヨーロッパ後期旧石器時代の洞穴壁画に押された手型に指を切断したらしい跡をみることができる。ニューギニア島には女性が近親者の亡くなるたびに指を1本ずつ切断する慣習もみられる。歯に関しては成人や結婚のしるしとして抜歯や欠歯または加工を行うものが多い。オーストラリア先住民の間では成人式に際し歯を折り取る風習があり、またバリ島では歯をやすりでこすって牙(きば)のようにとがらせる。男子の性器を加工する割礼はユダヤ教徒やイスラム教徒をはじめとして全世界に広く分布しているが、その施術にはさまざまの方法がある。またアジアにはかつて去勢の慣習があり、この手術を受けて宮廷に仕えた者を宦官(かんがん)といった。女子の割礼は陰核を切除するもので、男子に比べて例はかなり少ないが、アフリカなどにみることができる。[山本真鳥]

身体の一部を変形するもの

ビルマのバダウン人の女性は、真鍮(しんちゅう)でくるんだ籐(とう)を首に積み重ねるように巻いていき、首を長くする。アメリカ先住民の間には、赤子の額に板を押し当てて後頭部をとがらせた細長い頭にする習慣が広くみられた。またベルト状のもので腰部をきつく締め付けて極端に細く変形する習俗も多くみられる。欧米では女性のくびれた腰をつくりだすために鯨のひげ入りのコルセットが用いられた。また中国女性の纏足(てんそく)もこの様式に類するものである。[山本真鳥]

ピアス

耳飾りをつけるために耳に穴をあけるのは広くみられる習慣であるが、同様にインドの女性は鼻翼に穴をあけて宝石をつける。またニューギニア島、アフリカ、南米などでは、木切れ、骨、鳥の羽などを差し込むために、耳、鼻翼のみならず、鼻中隔、唇、ほおなどにも穴をあける。さらに身体を変形する方法との組合せで、穴をあけたあとに物を差し込んで形を変える習慣もある。カロリン諸島では、耳にあけた穴を広げて延ばし、肩近くまで紐(ひも)が垂れたかのごとくにしていた。またアフリカには唇に穴をあけてそこに木の皿を差し込み、だんだん大きな物とかえていくことによって、まるで鴨(かも)の嘴(くちばし)のようにする民族もいる。[山本真鳥]

いれずみ(文身・入墨・刺青)

文身(ぶんしん)には、傷に顔料を擦り込んで文様をつける刺痕(しこん)文身と、わざと盛り上がるような傷跡をつけて文様を描く瘢痕(はんこん)文身とがある。前者は世界中にみられるが、なかでもポリネシアのマルケサス諸島民の全身に施した幾何文様の文身、マオリ人の顔面に施した螺旋(らせん)文様の文身は有名である。日本や中国のように多色を用いるものもあるが、ポリネシアのものはヤシ殻の炭を用いた一色である。後者の瘢痕文身はアフリカやオーストラリアにしばしばみられ、アフリカのヌバ人のものがとくに名高い。
 この人為的なしるしを身体に刻みつける施術、すなわち身体変工は、イニシエーション(加入礼、入社式)儀礼と密接に関連するものが多い。割礼や文身はその代表的なものであり、同年齢の数人の男児の集団に成人式の儀礼を行う際、割礼や文身をそれに含めて行う民族は多い。また割礼や文身そのものが一人前の男性としてのしるしとみなされている社会もある。女子の場合は初潮や出産などに際して施術を行い、結婚可能なしるし、ないし既婚のしるしとする場合もある。赤子や幼児になんらかの施術を施すのは、子供を自然ではなく人間社会に属するものとするイニシエーションの意味をもっている。
 身体変工を行う民族にそのわけを尋ねると、加工をしていないと動物と区別ができなくなってしまうという答えをしばしば得るが、身体変工は第一に、自然のままの体に人為的な加工を施すことによって文化のしるしをつけ、人間社会に属するものとすることであるという解釈が成り立つ。同様に、部族、氏族、リネージ(系族)に特有の身体変工により特定の社会集団に属すことを示す場合もあるし、成人式を経ての一人前の大人という地位を得たしるしとなることもある。また、階層分化の厳しい社会では、特殊な身体変工が上層の特定身分の人にだけ許されていて、他の身分から区別することを目的としている場合もある。いずれにしても、社会の定めた施術を身体に施すことによって、その社会の世界観に基づく社会的存在となると考えてよかろう。近年欧米社会を中心に、身体のさまざまな部位へのピアスや入墨が流行しているのは、一見イニシエーションや社会的帰属とは無縁のようにみえるが、単に本人の審美的趣味以上の意味を社会が読みとったり、また本人がそれを予期して施術したりする点で、やはり社会的意味を高度に内包しているといえる。[山本真鳥]

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世界大百科事典内の身体変工の言及

【割礼】より

… 割礼の目的については,衛生や性交における実利との関係を指摘する者もあるが,定説はない。入墨瘢痕(はんこん)文身抜歯(オーストラリア諸族その他),小指の第一,第二関節から先の切断(アフリカ南部),耳たぶを切ったり,耳たぶや鼻の隔壁に穴をあけたりする慣習,つまり身体のいずれかの部分を切断,切除したり傷つけたり,髪の毛を一定の形に切ったりすることによって,他の人間に見えるような形で,その人間の身体になんらかの変化をもたらすような慣習(身体変工)と同じだと考えてよいだろう。身体になんらかの毀損を受けた人は,これに伴う分離儀礼によって一般の世間から隔てられ,しかる後にある特定の集団に統合される。…

【瘢痕文身】より

身体装飾の一種と考えられるが,身体彩色の場合とは異なり,描かれた文様が一生消えないという点に特色がある。通例,身体変工の一技法と分類される。身体変工の中で,皮膚に傷をつけ文様を描くものは文身と総称され,文身はさらに傷跡の盛上がりを利用する瘢痕文身と,色料を用いる刺痕(しこん)文身,すなわち入墨に下位区分される。…

※「身体変工」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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