オード(読み)おーど(英語表記)ode

翻訳|ode

デジタル大辞泉 「オード」の意味・読み・例文・類語

オード(ode)

崇高な主題を、多く人や事物などに呼びかける形式で歌う、自由形式叙情詩頌歌しょうか頌賦しょうふ
古代ギリシャ劇で、合唱するために作られた詩歌

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「オード」の意味・読み・例文・類語

オード

  1. 〘 名詞 〙 ( [英語] Ode 「頌歌」「賦」などと訳す )
  2. 古代ギリシア・ローマ劇で合唱隊のために作られた詩歌。
  3. 一九世紀キーツシェリーミルトンらのイギリスロマン派詩人がを取り入れて作った自由形式の叙情詩。崇高な主題を、人や事物に問いかける形式で歌うのを特徴とする。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「オード」の意味・わかりやすい解説

オード
ode

今日一般に〈頌歌(しようか)〉に相当すると解されている詩の一ジャンルで,古代ギリシア語aoidē(あるいはōdē)に由来し,その原意は〈歌〉である。古くはホメロス叙事詩も抒情詩や劇作中に含まれている合唱詩なども,等しくこの名で呼ばれ,喜びの歌も哀愁の歌もその呼称に含まれている。文芸ジャンルの分類化が進んだ前4世紀には,主として弦楽器伴奏で歌われるステシコロス,アルカイオス,サッフォーアナクレオン,イビュコスなどの初期抒情詩人たちや,ピンダロス,バッキュリデスらの合唱抒情詩人たちの作品がこの名で呼ばれることが多い。いずれも複雑な律格形式を用いた旋舞歌対応形の詩形をもち,神話・伝説を主題とするもの,政治・酒宴を歌うもの,恋の苦しさ・自然の美しさを語るもの,また運動競技の勝利や神々の祝祭をたたえる歌などがあるが,主題に添って神の恩恵や人間の宿命,また生を享けた者すべての抱く深い願望や高遠な理想が語られる。

 後世プレイヤードの一人ロンサールなどの近世詩人がオードの典型を仰いだのは,中でもピンダロスの祝勝歌の華麗な措辞と神話的発想の横溢した詩的世界と,アルカイオスやサッフォーの詩形を借りたローマの抒情詩人ホラティウスの《歌集》の,典雅と中庸の徳に徹したたたずまいである。言語も音楽も異なる近代語の詩人たちにとって,古代詩の複雑巧緻な律格形式は模すべきすべもないが,古代のオードの壮大な展望と精神性に比肩しうるものとして,ミルトンの《キリスト誕生の朝に寄せて》が挙げられる。またピンダロスの詩形と詩的ビジョンによって深く触発されて生まれたヘルダーリン詩集も,古代的オードの余香を濃く漂わせている。P.B.シェリーの《西風への頌歌》,キーツの《ギリシアの壺への頌歌》なども,古代文芸には直接その範とする作品はないけれども,オードというジャンルに触れて近世詩人が抱いた広大なビジョンや深い抒情性を,余すところなく伝えている。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「オード」の意味・わかりやすい解説

オード
ode

頌詩。語源はギリシア語 aeidein (歌う) 。整然と形式化されて複雑な有機的構成をもつ,かなりの長さの抒情詩。しばしば国家的行事などを記念する公的発言の場合に用いられた。ギリシアのピンダロスのオードは,音楽と踊りに合せて歌われる合唱隊歌として構想された。左回りに回るときの第1の連が strophe,次にその逆に右に回りながら反復される第2の連が antistrophe,さらに両者を締めくくる別の形式の連が epode,これらの3部から成り,それが反復される。ラテン文学ではオードはホラチウスと結びつく。彼はアルカイオスやサッフォーを通して,ピンダロスほど複雑でない抒情詩形からこの形式をつくり上げた。彼のより単純な形式のオードは,ピンダロスの公的,熱烈,壮麗に対して,私的,静的,瞑想的であり,特定の機会に関連するものではなく普遍的で,聴衆ではなく読者を念頭においている。近代のオードは,ホラチウスの瞑想的性格と,ピンダロスの記念的性格を遺産として受継ぎ,より自由な形をとっているが,しばしばみられる精巧で複雑な形式は,究極的にはピンダロスの3部構造に由来する。また近代のオードには,アナクレオンにつながるきわめて単純な形式で恋や酒を歌うものもある。キーツの一連のオードは,単にイギリス文学だけでなく,近代文学を通じてこの形式による最高の傑作である。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「オード」の意味・わかりやすい解説

オード
おーど
ode

頌歌(しょうか)、賦(ふ)。古代ギリシア文学においては、神殿を回る際、第1節は右回り、第2節は左回り、そして次は静止して歌う合唱隊の詩のことを意味し、これが詩型としてピンダロス風オードPindaric odeとなった。しかしこの形式はきわめて厳密な法則によるので、もっと自由な形のオードも多くの詩人たちによってつくられ、ギリシアのサッフォー、アナクレオン、ローマのホラティウスなどが優れた作品を書き、ホラティウス風オードHoratian odeといわれた。イギリスには、17世紀に紹介され、ドライデンの『アレキサンダーの饗宴(きょうえん)』に優れた例をみるが、さらに19世紀のロマン派の詩人たちによって愛用され、キーツの『ギリシア甕(よう)の賦』、シェリーの『西風の賦』などがある。

[船戸英夫]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

百科事典マイペディア 「オード」の意味・わかりやすい解説

オード

詩の一ジャンル。語源はギリシア語で〈歌〉の意。〈賦〉〈頌〉などとも訳される。複雑な律格形式をもち,しばしば器楽や踊りを伴う抒情詩,合唱詩を指すことが多い。ピンダロス,ホラティウス,ロンサール,ミルトン,ヘルダーリンらの作が有名。
→関連項目グリューフィウスコリンズプラーテン

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

今日のキーワード

部分連合

与野党が協議して、政策ごとに野党が特定の法案成立などで協力すること。パーシャル連合。[補説]閣僚は出さないが与党としてふるまう閣外協力より、与党への協力度は低い。...

部分連合の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android