オーリニャック文化(読み)オーリニャックブンカ

デジタル大辞泉 「オーリニャック文化」の意味・読み・例文・類語

オーリニャック‐ぶんか〔‐ブンクワ〕【オーリニャック文化】

フランス、ピレネー地方のオーリニャック(Aurignac遺跡標準遺跡とするヨーロッパの後期旧石器時代文化。前3万年ごろを中心とし、石器・骨器のほか、女人裸像(ビーナス像)や洞窟絵画などを残す。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「オーリニャック文化」の意味・読み・例文・類語

オーリニャック‐ぶんか‥ブンクヮ【オーリニャック文化】

  1. 〘 名詞 〙 ( オーリニャックはAurignac ) クロマニョン人によると考えられるヨーロッパ後期旧石器時代の文化。フランス、ピレネー地方のオーリニャック遺跡を標準遺跡とする。骨角器、女神像などに特色がある。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「オーリニャック文化」の意味・わかりやすい解説

オーリニャック文化 (オーリニャックぶんか)

フランス,ピレネー地方のオーリニャックAurignac遺跡を標準遺跡とする後期旧石器時代文化。この文化は寒冷期に出現し(第I期),やがて急激な気候温暖期をむかえる(第II期)。これはアルシー温暖期にあてられ,炭素14法によって3万0500年前ごろとされる。オーリニャック文化は,20世紀初頭,ムスティエ文化ソリュートレ文化の間に位置づけられ,その後H.ブルイユによって3期に区分された。さらにその前・中・後の各期はおのおのをシャテルペロン文化,オーリニャック文化,グラベット文化と呼ばれることになる。しかし他方この中期にあたるオーリニャック文化を第I~V期に細分し,それに並行してシャテルペロン文化とグラベット文化が一系列に連続して存在したとするD.ペイロニの説が提唱された。その説では後者をペリゴール文化と呼び,これもまた5期に細分される。ロジュリー・オートLaugerie Haute遺跡の層位,およびパトーPataud遺跡の発掘成果をみると,ブルイユ説よりもペイロニ説のほうが難点が大きいが,オーリニャック文化に関する編年学的問題はまだ解決されていない。オーリニャック型の石器の分布は極めて広い。西ヨーロッパのほか,バルカン,東ヨーロッパ,西アジア,アフガニスタン,中国,ケニアにも報告されているが,それらを同じ文化とする考えは今日ではとられていない。ベルギーからスペインまで,およびイタリアが分布域と考えられている。この文化の始まりは,骨製尖頭器と舟底形搔器の出現で特徴づけられ,後者は全時期を通しての指標となる。骨製尖頭器は幅広,基部割れ(第Ⅰ期)から菱形平面形(第Ⅱ期)となり,第Ⅲ期から第Ⅳ期には断面形が楕円形から円形になる。この文化を担ったのは新人であり,クロマニョン人は有名である。造形美術を残した最古の文化でもあり,フェラシーFerrassie遺跡出土の刻画石灰岩が知られる。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

百科事典マイペディア 「オーリニャック文化」の意味・わかりやすい解説

オーリニャック文化【オーリニャックぶんか】

ヨーロッパの後期旧石器時代前半の文化。中部フランスのオーリニャックAurignac洞窟にちなんで命名。3期に分かれ,前期のシャテルペロン文化は西欧から西アジアに分布し,片側が直刃で背に丸みをもつ石刃が特徴。中期は狭義のオーリニャック文化でもあり,ヨーロッパ全般に分布し,骨角器の存在が目だつ。野牛やトナカイの骨,象牙(ぞうげ)などで作った槍先(やりさき)や銛(もり)が使われた。カンタブリア地方の洞窟絵画や彫刻はこのころ始まったと考えられている。後期のグラベット文化はヨーロッパ中・南部に多く,前期に比べてナイフや石刃が進歩してやや小さくなり,骨角器は少ない。有名な〈ウィレンドルフビーナス〉など彫像作品が出ている。前の二つは時代の差というよりも,地域による差とする説もある。
→関連項目剥片石器母神像

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

山川 世界史小辞典 改訂新版 「オーリニャック文化」の解説

オーリニャック文化(オーリニャックぶんか)
Aurignac

後期旧石器時代文化で,ヨーロッパが中心。名称はラルテーが,1860年にフランス,オート・ガロンヌ州オーリニャック洞窟を発見したことによる。ヴュルム第1間氷期から更新世(こうしんせい)末期まで続いた。主な石器は石刃(せきじん)(ブレード)であり,他に石匕(せきひ),石鑿(いしのみ),刻刀(ビュラン)などがある。南フランスおよび北スペインのいわゆるフランコ・カンタブリア芸術の初現も,中期オーリニャック期にあったといわれる。

出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報

旺文社世界史事典 三訂版 「オーリニャック文化」の解説

オーリニャック文化
オーリニャックぶんか
Aurignac

旧石器時代後期に新人によってつくられた文化
アフリカ・ユーラシア大陸に分布。文化の特徴は,小型で軽い石刃の石器,骨角器・狩猟器具の発達,魚類の捕食,女性裸像の製作などにみられる。

出典 旺文社世界史事典 三訂版旺文社世界史事典 三訂版について 情報

今日のキーワード

ゲリラ豪雨

突発的に発生し、局地的に限られた地域に降る激しい豪雨のこと。長くても1時間程度しか続かず、豪雨の降る範囲は広くても10キロメートル四方くらいと狭い局地的大雨。このため、前線や低気圧、台風などに伴う集中...

ゲリラ豪雨の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android