カゼクサ(英語表記)Eragrostis ferruginea(Thunb.)Beauv.

改訂新版 世界大百科事典 「カゼクサ」の意味・わかりやすい解説

カゼクサ
Eragrostis ferruginea(Thunb.)Beauv.

空地土手に生えるイネ科雑草で,道端によく見られるからミチシバともいう。風草の名は漢名の知風草に由来するという。多年草で大きな株を作る。茎は太めで,長さは50~80cm,枝分れしない。葉はおおむね根生で,長さ40cmの長い線形で,多数密生し,茎とともに強靱であるし,道端に生えるところから,子どもの間でこの草の先を結んで輪を作り,それに足を引っかけた人が転ぶといういたずらがある。夏から秋にかけて,長さ30cm前後の円錐花序を直立し,細いまっすぐな枝を密に出して,光沢があり褐紫色を帯びた小穂を無数につける。小穂は長さ8mmくらいで,5~10個の小花がある。小穂の柄に腺点をもつという特徴がある。温帯暖帯に分布し,ヒマラヤ,中国から北海道を除く日本各地に見られる。カゼクサに似て小型のニワホコリE.multicaulis Steud.は北海道を含む日本全土にある雑草。

 カゼクサ属Eragrostis熱帯亜熱帯に100種もある大きな属で,属名がギリシア語のeros(=love)とagrostis(=grass)であるので愛の草と訳される。牧草としての価値はあまりなく,土どめ用として使われるものに最近日本に入ったシナダレスズメガヤE.curvula Nees(別名ウィーピングラブグラス)とそれに近いE.lehmanniana Nees,E.chloromeras Steud.のアフリカ産の3種がある。コゴメカゼクサE.japonica Thunb.の花序は長さ25cm余りで細長く,星を散りばめたように無数の小型の小穂をつけ,干してドライフラワーとすることができる。カゼクサ属の帰化植物スズメガヤコスズメガヤアメリカカゼクサなどがあり,エチオピア雑穀の一つのテフ本属のものである。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「カゼクサ」の意味・わかりやすい解説

カゼクサ
かぜくさ / 風草
[学] Eragrostis ferruginea (Thunb.) Beauv.

イネ科(APG分類:イネ科)の多年草。稈(かん)は株立ちし、高さ30~70センチメートル。草は表裏が反転する。8~10月、稈の先に多くの枝分れをする円錐(えんすい)花序をつくり、まばらに小穂をつける。花序分枝の上方に黄色の腺(せん)がある。小穂は披針(ひしん)形で長さ6~10ミリメートル。荒れ地や道端にみられ、本州から九州および朝鮮、中国、ヒマラヤに分布する。道路の切り通し傾斜面などの固定、緑化のために植えられる近縁のウィーピングラブグラス(シナダレスズメガヤ、シナダレカゼクサ)は、南アフリカ原産の多年草で、稈、葉ともに深く垂れ下がる。

[許 建 昌 2019年8月20日]

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百科事典マイペディア 「カゼクサ」の意味・わかりやすい解説

カゼクサ

ミチシバとも。本州〜九州,東アジアの道ばたや野原に普通にはえるイネ科の多年草。高さは30〜80cmになり,束生する。葉は多くは根生し,葉鞘(ようしょう)の上端には白毛がある。8〜10月茎頂に大きな円錐状の花穂を出す。小穂には小花が5〜10個。全草はやや堅く,性質は非常に強い。

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