改訂新版 世界大百科事典 「カラモジョン族」の意味・わかりやすい解説
カラモジョン族 (カラモジョンぞく)
Karamojong
東アフリカ,ウガンダ北東部のカラモジャ地区に居住する民族で,パラ・ナイル系テソ語群に属する固有の言語をもつ。人口約6万。標高1100~1400mに位置する生活圏は約10万km2の面積をもつ。この地域は,東部の山岳地帯,中央部の川辺林地帯,西部の平原地帯に分けられる。年間の平均降雨量は640~900mm,平原よりも山岳地帯に,10~3月よりも4~9月に,より多くの降雨をみる。生計の基盤は雑穀(モロコシ,ヒエ,トウモロコシなど),野菜(キュウリ,カボチャ),豆類,タバコなどの栽培と家畜(牛,羊,ヤギ)飼養に置かれる。農耕は川の流域の氾濫原や降雨を利用した初歩的なものであるが,近年,牛犂が一部で取り入れられた。定着的集落は川辺林地帯につくられ,その近辺でおもに女性が農耕に従事する。家畜は,雨季には集落の近くで日帰り放牧されるが,乾季には山岳地帯や平原地帯につくられる家畜キャンプに移される。この時期には,少数の泌乳中の家畜が集落に残されるだけとなる。家畜キャンプでは未婚男性が野営生活を送り,雨季になるまで家畜の世話をする。食事は,集落では農産物が,キャンプでは畜産物(乳,血,肉)が主体となる。牛は1人当り平均3~4頭の割合で所有される。家畜が食生活で果たす役割は,全体的に少なく,むしろ花嫁代償(婚資),〈好みの牛〉,財産などとして,社会・文化的役割が重要視される。
地域集団は1~20個の集落から構成される。集落には10~60人が居住し,杭の柵が厳重にめぐらされる。既婚女性は各自に小屋をもち,家族の居住区のなかに独自の居住区を垣根で区切ってつくる。出自集団は父系原理に基づいており,19個の外婚的クランに組織されている。クランへの帰属は,髪型,装飾品,牛の焼印などによって表される。年齢組が5~6年ごとに編成され,少年は18歳ごろに年齢組に加入する。父と息子の間の互隔原理に基づいて,2個の世代組(黄色組と赤組)があり,各世代組には5個の年齢組が含まれる。政治や儀礼などの役割は,〈継承儀礼〉によって年長世代組から年少世代組に移譲される。
執筆者:佐藤 俊
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報