改訂新版 世界大百科事典 「クレーロー」の意味・わかりやすい解説
クレーロー
Alexis-Claude Clairaut
生没年:1713-65
18世紀フランスの数学者,天文学者。パリの数学教師の子に生まれ,早期教育を受けたため早くから数学の天分を発揮し,18歳でパリ科学アカデミーの会員に選出された。クレーローの業績は大きく二つに分けられる。第1は天体力学に関係したものである。1736年,クレーローはP.L.M.deモーペルテュイとともにラップランドに遠征し,帰国後地球楕円体の扁平率を求める公式を提出した。今日,この計算式導出法はクレーローの定理と呼ばれている。測地学の古典《地球形状論》(1743)の中の数学理論は,のちにポテンシャル論に発展する内容を含んでいた。《月の理論》(1752)は三体問題の近似解を与えている。シャトレー侯夫人によるニュートン《プリンキピア》のフランス語訳を助けたことでも特筆される。クレーローが貢献した第2の分野は数学である。啓蒙主義的な教育的配慮によって書き下ろされた《幾何学原論》(1741),《代数学原論》(1746)は,18世紀のフランス教育に大きな影響力をもった。微分方程式論にも寄与し,ある種の常微分方程式は今日,クレーロー型と呼ばれている。それはy=xp+f(p)(p≡dy/dx)の形に書き表すことができるもので,その一般解は,y=cx+f(c)という直線族であり,特異解はその直線族の包絡線で,もとの方程式とx+f′(p)からpを消去することによって得られる。18世紀のパリ科学アカデミーを代表する数学者としてヨーロッパ中に名を知られた数学者であった。
執筆者:佐々木 力
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報