クロマメノキ(読み)くろまめのき

改訂新版 世界大百科事典 「クロマメノキ」の意味・わかりやすい解説

クロマメノキ (黒豆木)
bog bilberry
Vaccinium uliginosum L.

ブルーベリー近縁の野生種の一つで,ツツジ科の落葉小低木。北半球寒帯に広く分布し,日本でも北海道,本州中部以北の火山性高原に多い。高さは地をはう10cmくらいのものから林の中では1mをこえるものまである。初夏紅色を帯びたつぼ状の白花をつけ,秋に径6~7mmの球形紫黒色果実が熟すが,果形には扁平,ヨウナシ形,円筒形などかなりの変異があり大小もある。砕いたミズゴケの上に種子まき,冷涼地ならピートモスで鉢栽培ができる。ジ(地)ブドウ,アサマ(浅間)ブドウ,シラネ(白根)ブドウなど地方名も多く,とくに軽井沢ジャムは名物のみやげ品となっている。栽培のブルーベリーに比べてややひなびた風味があり,果実酒,ジュース,パイなどにも利用されるが,最近は原料不足の傾向にあり,保護と増殖そして育種が強く望まれる。欧米でもハイブッシュブルーベリーとの交配に用いられている。
執筆者: クロマメノキに近縁なビルベリーV.myrtillus L.(英名bilberry/whortleberry)は,高さ20~60cmの落葉低木で,ヨーロッパに広く分布し,黒紫色の果実は古くから染料や酒の着色,ジャムの原料などに使われる。アメリカ産の近縁数種も同様に利用され,果実が黒紫色のこの仲間は俗にブルーベリーの名で呼ばれ,局地的に栽培され品種改良も行われている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「クロマメノキ」の意味・わかりやすい解説

クロマメノキ
くろまめのき
[学] Vaccinium uliginosum L.

ツツジ科(APG分類:ツツジ科)の落葉低木。高さ30~80センチメートル。小枝は丸くて毛がない。葉は互生し、倒卵形または倒卵円形、長さ1~3センチメートル、質はやや堅く、毛はなく、裏面は白色を帯び細脈が隆起する。6、7月、前年枝の先に、壺(つぼ)形で紅色を帯びた白色の花が1~3個開く。花冠は長さ5~7ミリメートルで先は浅く5裂し、雄しべは10本。果実は球形ないし楕円(だえん)形、径7~10ミリメートルで、9月ころ紫黒色に熟し、白粉を帯びる。中部地方以北の本州、北海道の亜高山帯から高山帯の日当りのよい湿地に生え、北半球の亜寒帯に広く分布。浅間山には多く野生し、果実をアサマブドウとよんでいる。果実は甘くて食べられ、ジャムや果実酒にし、または等量の砂糖を混ぜて砂糖漬けにする。

[小林義雄 2021年4月16日]


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百科事典マイペディア 「クロマメノキ」の意味・わかりやすい解説

クロマメノキ

北半球の寒帯に広く分布し,北海道,本州の亜高山帯以上にはえるツツジ科の落葉低木。高さ30〜60cm,よく分枝し,葉は互生,倒卵形で,大きさは環境により変わる。夏,枝先に数個の花をつける。花冠は壺形で,白色からやや紅色を帯びる。果実は丸い液果で,紫黒色に熟し,白粉をかぶる。生食したり,ジャムとする。近縁種のクロウスゴは,葉は楕円形で大きく,花冠は白〜淡黄緑色で,果実の頂部にくぼみがある。
→関連項目高山植物ブルーベリー

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