RMgX型の有機マグネシウム化合物の総称。1900年フランスの化学者グリニャールにより最初に合成されたことから、この名がつけられた。この試薬はハロゲン化アルキル(RX。X=塩素Cl、臭素Br、ヨウ素I)と金属マグネシウム(Mg)とをエーテル中で反応させると生成し、RMgXの組成をもつとされている。実際には溶媒のエーテルを含む複雑な構造であることが知られている。炭素‐炭素(C-C)結合生成にきわめて有力な試薬である。
式(1)に示すように、エーテル中でハロゲン化アルキルとマグネシウムを反応させて合成し、単離、精製しないでそのまま反応に用いる。グリニャール試薬の構造は簡単にRMgXで表すことはできず、エーテル溶液中では、マグネシウムにエーテルが配位した複雑な構造で式(2)のような平衡があると考えられている。活性な試薬で、酸素、二酸化炭素、水と速やかに反応するので、試薬の調製・保管には空気や水分が入らないように十分に注意する必要がある。
[佐藤武雄・廣田 穰]
RMgX(R=アルキル基,フェニル基などの有機原子団,X=Cl,Br,I)の化学式をもつ有機マグネシウム化合物でグリニャール反応に使われる試薬。F.A.V.グリニャールが1901年にはじめて合成して以来,炭素-炭素結合を形成するための重要な合成試薬として用いられている。エチルエーテルまたはテトラヒドロフラン中で種々のハロゲン化アルキル(またはハロゲン化アリール)に金属マグネシウムを作用させて得られる。エーテル溶液内ではRMgX・2(C2H5)2Oのような分子化合物をつくっていると考えられており,ケトン,アルデヒド,エステル,酸塩化物,酸素,二酸化炭素,エポキシドなどと反応して種々の有用な有機化合物を与える。
→有機金属化合物
執筆者:友田 修司
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
一般式RMgX(Rはアルキルまたはアリール基,XはCl,Br,I)をもつ有機マグネシウム化合物.1900年にF.A.V. Grignard(グリニャール)によってはじめて報告された.普通,無水のエーテル系溶媒(ジエチルエーテルやテトラヒドロフランなど)中で,RXと金属Mgを作用させることにより調製し,反応性が高いため単離せずにそのまま用いることが多い.多くの有機化合物,とくにカルボニル化合物と反応して炭素-炭素結合を形成するので,有機合成において重要な試薬である.溶液中では,R2MgとMgX2などとの平衡混合物として存在する.[別用語参照]グリニャール反応
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…そしてこの亜鉛化合物は有機合成にきわめて有用なことから,その後多くのアルキル亜鉛化合物がつくられているし,同じようにして69年オットーR.Ottoがアリール水銀をつくっている。しかしなんといっても有機金属化合物の歴史のなかで重要なものの一つはグリニャール試薬である。これは99年フランスのバルビエPhilippe Antoine Barbier(1848‐1922)によって初めてつくられた。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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