グリニャール試薬(読み)グリニャールシヤク(その他表記)Grignard reagent

デジタル大辞泉 「グリニャール試薬」の意味・読み・例文・類語

グリニャール‐しやく【グリニャール試薬】

有機合成利用される試薬の一。有機ハロゲンマグネシウム化合物エーテル溶液の総称。一般式RMgX(Rはアルキル基、Xはハロゲン)で表される。各種有機化合物合成、活性水素定量などに利用。

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精選版 日本国語大辞典 「グリニャール試薬」の意味・読み・例文・類語

グリニャール‐しやく【グリニャール試薬】

  1. 〘 名詞 〙 ハロゲン化アルキルマグネシウム。化学式 RMgX (Rはアルキル基、Xはハロゲン元素)。ハロゲン化アルキルを無水エーテル中で金属マグネシウムと反応させてつくる。一九〇一年グリニャール発見。反応性にすぐれ、空気中での自然発火がないので各種のアルコール合成、有機合成に用いられる。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「グリニャール試薬」の意味・わかりやすい解説

グリニャール試薬
ぐりにゃーるしやく
Grignard reagent

RMgX型の有機マグネシウム化合物の総称。1900年フランスの化学者グリニャールにより最初に合成されたことから、この名がつけられた。この試薬はハロゲン化アルキル(RX。X=塩素Cl、臭素Br、ヨウ素I)と金属マグネシウム(Mg)とをエーテル中で反応させると生成し、RMgXの組成をもつとされている。実際には溶媒のエーテルを含む複雑な構造であることが知られている。炭素‐炭素(C-C)結合生成にきわめて有力な試薬である。


 式(1)に示すように、エーテル中でハロゲン化アルキルとマグネシウムを反応させて合成し、単離、精製しないでそのまま反応に用いる。グリニャール試薬の構造は簡単にRMgXで表すことはできず、エーテル溶液中では、マグネシウムにエーテルが配位した複雑な構造で式(2)のような平衡があると考えられている。活性な試薬で、酸素、二酸化炭素、水と速やかに反応するので、試薬の調製・保管には空気や水分が入らないように十分に注意する必要がある。

[佐藤武雄・廣田 穰]

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改訂新版 世界大百科事典 「グリニャール試薬」の意味・わかりやすい解説

グリニャール試薬 (グリニャールしやく)
Grignard reagent

RMgX(R=アルキル基,フェニル基などの有機原子団,X=Cl,Br,I)の化学式をもつ有機マグネシウム化合物でグリニャール反応に使われる試薬。F.A.V.グリニャールが1901年にはじめて合成して以来,炭素-炭素結合を形成するための重要な合成試薬として用いられている。エチルエーテルまたはテトラヒドロフラン中で種々のハロゲン化アルキル(またはハロゲン化アリール)に金属マグネシウムを作用させて得られる。エーテル溶液内ではRMgX・2(C2H52Oのような分子化合物をつくっていると考えられており,ケトンアルデヒドエステル,酸塩化物,酸素,二酸化炭素,エポキシドなどと反応して種々の有用な有機化合物を与える。
有機金属化合物
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化学辞典 第2版 「グリニャール試薬」の解説

グリニャール試薬
グリニャールシヤク
Grignard reagent

一般式RMgX(Rはアルキルまたはアリール基,XはCl,Br,I)をもつ有機マグネシウム化合物.1900年にF.A.V. Grignard(グリニャール)によってはじめて報告された.普通,無水のエーテル系溶媒(ジエチルエーテルテトラヒドロフランなど)中で,RXと金属Mgを作用させることにより調製し,反応性が高いため単離せずにそのまま用いることが多い.多くの有機化合物,とくにカルボニル化合物と反応して炭素-炭素結合を形成するので,有機合成において重要な試薬である.溶液中では,R2MgとMgX2などとの平衡混合物として存在する.[別用語参照]グリニャール反応

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「グリニャール試薬」の意味・わかりやすい解説

グリニャール試薬
グリニャールしやく
Grignard reagent

フランスの化学者 V.グリニャールが発見したもので,ハロゲン化アルキルまたはハロゲン化アリールを,無水エーテル中で金属マグネシウムと反応させて得られる試薬。主成分は有機マグネシウム化合物である。代表的求核試薬として用いられる。たとえば,水,アルコール,アミン,アセチレンなど活性水素をもつ化合物と反応させると炭化水素を発生する。ホルムアルデヒドと反応させると第一アルコールを,その他のアルデヒドと反応させると第二アルコールを,ケトン,エステル (ただし,ギ酸エステルからは第二アルコールが生成する) ,酸無水物,酸ハロゲン化物と反応させると第三アルコールを生成する。また二酸化炭素と反応させるとカルボン酸,ハロゲン化アルキルとの反応から炭化水素を生成し,ケイ酸エステルと反応させるとケイ素化合物となる。これらの反応は物質の合成や確認などに広く利用される。

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百科事典マイペディア 「グリニャール試薬」の意味・わかりやすい解説

グリニャール試薬【グリニャールしやく】

フランスの有機化学者グリニャールによって発見された有機金属化合物,ハロゲン化アルキルマグネシウムRMgX(Rはアルキル基などの有機原子団,XはClなどのハロゲン)のエーテル溶液をいう。ハロゲン化アルキルRXのエーテル溶液にマグネシウムを加えると得られる。きわめて反応性に富み,有機合成試薬として重要。水,アルコールなどによる分解やハロゲン化アルキルの作用で炭化水素を生じ,アルデヒド,ケトンとはそれぞれ第二,第三アルコールを,二酸化炭素とはカルボン酸を生成する。
→関連項目グリニャールマグネシウム有機金属化合物

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世界大百科事典(旧版)内のグリニャール試薬の言及

【有機金属化合物】より

…そしてこの亜鉛化合物は有機合成にきわめて有用なことから,その後多くのアルキル亜鉛化合物がつくられているし,同じようにして69年オットーR.Ottoがアリール水銀をつくっている。しかしなんといっても有機金属化合物の歴史のなかで重要なものの一つはグリニャール試薬である。これは99年フランスのバルビエPhilippe Antoine Barbier(1848‐1922)によって初めてつくられた。…

※「グリニャール試薬」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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