グリーン・ニューディール(読み)ぐりーんにゅーでぃーる(英語表記)A Green New Deal

  • Green New Deal

知恵蔵の解説

自然エネルギーや地球温暖化対策に公共投資することで、新たな雇用や経済成長を生み出そうとする政策。第44代アメリカ大統領、バラク・オバマが打ち出した。環境と経済の問題を同時に解決する手法として注目を浴びており、アメリカを皮切りに、日本や国際社会でもこの政策の検討・整備を始めている。
そもそもグリーン・ニューディールとは、1930年代の世界恐慌時にフランクリン・ルーズベルト米大統領が提唱した経済復興政策「ニューディール」と、環境や緑を表す「グリーン」を合わせた言葉。新たな公共事業や雇用促進策によって大恐慌からの脱却を図ろうとしたニューディールに倣い、2008年のリーマン・ショックを発端とする経済危機を、地球温暖化対策や環境関連事業に投資することで乗り切ろうというものだ。
オバマ大統領は09年1月、政府施設に省エネ効率を高める投資を実施し、風力や太陽光などの代替エネルギーを倍増させることなどで、約50万人の雇用を増大すると表明。7870億ドル(約72兆円)にのぼる過去最大の景気対策法が成立した2月には、施政方針演説で、風力発電や次世代バイオ燃料など再生可能エネルギーの開発に、年間150億ドル(約1兆4000億円)を投資する意向を示した。
こうしたアメリカの動きを受け、日本でも日本版グリーン・ニューディール「緑の経済と社会の変革」が浮上。斉藤環境相は09年1月、公共施設での太陽光発電の導入、省エネ家電など購入促進によって、15年までに環境ビジネス雇用を現在の140万人から220万人に拡大するとの方針を明らかにした。国民や有識者から意見を募り、3月までに具体策をまとめる予定だ。
また国連環境計画は、ロンドンで4月に開催されるG20に提示する報告書の中で、グリーン・ニューディールを実現するためには、世界の国内総生産の1%、もしくは約7500億ドル(約71兆円)の投資が必要だとの見方を示した。

(高野朋美 フリーライター / 2009年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

環境分野への集中・大型投資で、地球温暖化防止と景気活性化の両立を目ざす政策。「グリーンディール」とよばれたり、英語の頭文字をとってGNDと略されたりする。大恐慌時にアメリカ大統領フランクリン・ルーズベルトが打ち出したニューディール政策になぞらえ、2008年のリーマン・ショック後にアメリカ大統領バラク・オバマが提唱した。太陽光や風力などの再生可能エネルギーの活用、将来有望なエコカー(環境対応車)の導入、公共交通システムの抜本的見直し、次世代送電網であるスマートグリッドの整備、温暖化に起因した大災害に備えたインフラ強靭(きょうじん)化などを財政支出と減税で進め、温暖化ガスの削減、成長率の押し上げ、新たな雇用(グリーン・ジョブ、アメリカで500万人)創出の同時達成を目ざす。しかし2017年、地球温暖化に懐疑的なドナルド・トランプが大統領につき、アメリカのグリーン・ニューディールは頓挫(とんざ)した。

 リーマン・ショック後の世界同時不況から脱却するため、アメリカだけでなく、ドイツ、フランス、イギリス、中国、韓国などが2008年以降、類似のグリーン・ニューディール構想を打ち出した。ヨーロッパ連合は2019年、2050年までにヨーロッパの温暖化ガス排出ゼロを目ざすヨーロッパグリーンディール構想をまとめ、2030年までに総額1兆ユーロを投じることで合意した。中国は第十三次五か年計画(2016~2020年)に経済成長と環境対策を両立させる「緑色発展(グリーン・ニューディール)」構想を盛り込んだ。日本では2009年(平成21)、環境省が日本版グリーン・ニューディールとして「緑の経済と社会の変革」構想を発表した。グリーン・ニューディールは政権交代でその興廃が大きく左右される特色があり、アメリカでも2020年大統領選挙の民主党候補ジョー・バイデン(1942― )の政権構想に、再生エネルギー推進などのグリーン・ニューディールが盛り込まれている。

[矢野 武 2020年10月16日]

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