ケルダール法(読み)ケルダールホウ(その他表記)Kjeldahl method

デジタル大辞泉 「ケルダール法」の意味・読み・例文・類語

ケルダール‐ほう〔‐ハフ〕【ケルダール法】

試料に含まれる窒素の量を求める分析方法の一。試料を濃硫酸中で加熱し、含まれる窒素を硫酸アンモニウムに変える。これを蒸留して発生するアンモニアの量から窒素量を定量する。食品などの有機物鉱物に含まれる窒素の定量、および水質調査などで用いられる。キエルダール法。ケルダールの窒素定量。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ケルダール法」の意味・わかりやすい解説

ケルダール法
けるだーるほう
Kjeldahl method

湿式窒素定量法一種。1883年デンマークのケルダールJohan Gustav Kjeldahl(1849―1900)が初めて報告した。キエルダール法ともいう。硬質丸底フラスコ中で、試料を濃硫酸、無水硫酸カリウムおよび硫酸銅(Ⅱ)その他の分解触媒とともに煮沸すれば、硫酸の酸化作用で有機物は分解し、試料中の窒素はアンモニアとなり、硫酸と反応して硫酸アンモニウムとなる。このフラスコを蒸留装置に連結し、フラスコに装着した滴下漏斗(ろうと)中から水酸化ナトリウムの濃溶液を滴下、フラスコ内の溶液を十分アルカリ性とし、硫酸アンモニウムを分解し、水蒸気を通してアンモニアを完全に蒸留する。このアンモニアを一定量の酸に吸収させて捕捉(ほそく)し、完全に留出し終わったらこの酸の過剰量をアルカリで逆滴定し、留出したアンモニアの量から試料中の窒素量を求めるのである。

[成澤芳男]

『日本分析化学会編『分析化学便覧』改訂3版(1981・丸善)』『大木道則他編『化学大辞典』(1989・東京化学同人)』


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

化学辞典 第2版 「ケルダール法」の解説

ケルダール法
ケルダールホウ
Kjeldahl method

タンパク質,アミノ酸,プリン塩基などの窒素定量法.1883年にJ. Kjeldahlによって創案され,多くの改良がなされてきた手法である.用いられる試料量によって,マクロ(1~2 g),セミミクロ(20~30 mg),ミクロ(3~5 mg),ウルトラミクロ(1 mg 以下)の変法に,それぞれ適した分析法がある.有機化合物に少量の触媒(酸化水銀,水銀,硫酸銅など)を加えた濃硫酸,硫酸,あるいは発煙硫酸中で加熱し,有機化合物中の窒素をすべて(NH4)2SO4に変換する.これに強アルカリを加えて水蒸気蒸留し,遊離したアンモニアNH3を一定量の硫酸または塩酸溶液に捕集し,過剰の酸をアルカリで逆滴定して,アンモニア量から試料中の窒素の含有率を求める.この反応は,試料の脱水・還元を伴う反応であるため,硝酸亜硝酸塩ニトロニトロソ,アゾ,ジアゾ,ヒドラゾヒドラジン,およびピリジン誘導体などの全窒素は定量できない.しかし,グルコースやヨウ化水素酸を還元剤として用いれば,定量が可能である.本法は,多量試料中の微量窒素,官能基別の窒素定量などが可能であり,食品,動物,植物,石炭,石油,血液,尿中などの窒素定量や品質試験などの公定法として薬局方やJISに定められており,現在でも重要な分析法の一つである.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ケルダール法」の意味・わかりやすい解説

ケルダール法
ケルダールほう
Kjeldahl method

湿式の窒素定量法の1つ。試料 (おもに有機物) を分解促進剤,還元剤,亜鉛粉末などとともに硫酸溶液中で加熱分解して,含まれている窒素をすべて硫酸アンモニウムに変える。次いで過剰の水酸化ナトリウム溶液を加えるとアンモニアが生じるので,これを一定量の濃度既知の硫酸溶液に吸収捕捉する。未反応の硫酸をアルカリで滴定して,アンモニアの量,すなわち窒素量を求める。アンモニア捕捉剤に飽和ホウ酸溶液を用いる方法もある。試料中のアミノ窒素,プリン塩基の窒素定量の代表的な方法である。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

栄養・生化学辞典 「ケルダール法」の解説

ケルダール法

 キエルダール法ともいう.窒素の分析法の一つで,食品や生体組織の窒素分析に最も頻繁に利用されている.熱濃硫酸で試料を酸化分解し,生成したアンモニウムイオンを定量する.

出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報

今日のキーワード

仕事納

〘 名詞 〙 年の暮れに、その年の仕事を終えること。また、その日。《 季語・冬 》[初出の実例]「けふは大晦日(つごもり)一年中の仕事納(オサ)め」(出典:浄瑠璃・新版歌祭文(お染久松)(1780)油...

仕事納の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android