翻訳|gauge
物理現象を数学的に記述する際に,複素波動関数やポテンシャル関数が使用される。これらの関数は,その絶対値や微分した量が,例えば電荷とか力といった観測可能な物理量と関係づけられている。したがって前者の場合には複素量としての位相の,また後者の場合には積分定数に相当する量の不定性をもつことになる。この不定性を表すスカラー量uは,一般には空間座標rあるいは時間tの関数であり,このu(r,t)をゲージまたはゲージ関数と呼ぶ。ゲージという言葉は,現象を記述する舞台である時空のスケールを適当にとるという考え方に由来したものである。
観測可能な物理量あるいは物理現象を記述する運動方程式は,どのようなゲージをとっても大きさや形を変えてはならない。例えば,電荷eをもつ粒子が,スカラーポテンシャルφ(r,t),ベクトルポテンシャルA(r,t)より導かれる電磁場中を運動する場合を考えてみよう。その波動関数Ψ(r,t)に,
Ψ(r,t)-→Ψ(r,t)exp[-ieu] ……(1)
の位相変換を行った場合でも,電荷密度ρ=eΨ*Ψは不変である(Ψ*はΨの複素共役量)。電流密度や電磁場との相互作用を含んだシュレーディンガー方程式は(1)の変換だけでは形を変えてしまうが,(1)と同時に,φ,Aに対して,
の変換をほどこすと,いずれも不変に保たれる。また(2)(3)の変換は,から導かれる電場Eや磁場Bの形も不変に保っていることを容易に検証することができる。(1)を第1種のゲージ変換,(2)(3)を第2種のゲージ変換と呼ぶことがある。
ゲージのとり方の任意性をじょうずに利用するとポテンシャルなどを含んだ物理学の方程式を簡単にすることができる。例えばφとAの間に,
の束縛条件をおくと(ε,μはそれぞれ誘電率と透磁率),電磁場のマクスウェルの方程式は,
のように,φ,Aに対して対称的なポテンシャル方程式に書き変えられる。またφとAの間に(4)の関係があると電荷の保存を表す,は自動的に満足され,ゲージは電荷の保存則を保証している。(4)の関係を満たすゲージのとり方をローレンツゲージと呼ぶ。
このように基本的な物理量や基礎方程式はゲージ変換に対して不変となっており,このゲージ不変性は新しい物理理論を作っていく場合の一つのガイドラインとなる。
→ゲージ理論
執筆者:清水 忠雄
ゲージは物体の大きさで長さや角度を規定するもので,測定あるいは判断の基準となるものをいう。ゲージは測定中に動く部分をもっていない。ゲージは古くから使われていたが,スウェーデンのプールヘムChristopher Polhem(1661-1751)が18世紀の初めころから使ったプールヘム棒という木製の板ゲージが,記録されているものでは古い。プールヘム棒は後に鉄製となった。人間は長さを測るために,洋の東西をとわず太古からものさしを用いていた。目盛線を用いる測定は,目盛合せにおける個人差や合せにくさによるばらつきがわりあいに大きい。加工部品の互換性が必要となり,精度も高くなってくると線を合わせる測定では満足できないようになった。ホイットワースJoseph Whitworth(1803-87)は,1856年インチ標準ブロックをマイクロメーター式測長器とともに作り,端面を触って行う測定を普及させていった。57年には,基準として同種のものではなく,工作物と対になる逆の形のもの,すなわち穴に対しては円柱,軸に対しては輪,いいかえれば図1に示すようなプラグゲージとリングゲージとを用いることによって比較できるようにした。
構造形式,機能によっていろいろのゲージがある。ブロックの両端面が互いに平行かつ平たんに磨かれ密着する性質をもつ,主として長さの標準として用いられるものがブロックゲージである。機械工作で一つの部品を作るのに,部品に許容しうる最大寸法を基準とした測定端面と,同じく最小寸法を基準とした測定端面とをもつゲージを限界ゲージといい,測定の標準として用いるゲージを標準ゲージという。円板ゲージは円板の直径で長さを示し,円筒形プラグゲージ,ころゲージは円柱の直径で示し,板プラグゲージ,平プラグゲージは円柱の一部を測定面にもち,その直径で示す。長いものは棒ゲージで,その測定端面に平面,円筒面,球面をもつものが用いられている。鋼球もゲージとして用いられる。円筒の内面を測定面とするゲージがリングゲージ,平行かつ平面の測定面ではさむ形で軸を測るゲージがはさみゲージである。針金ゲージやドリルゲージは大きさに対応した切込み,または穴を多数もつ角形,または円形の薄板でできており,針金やドリルを分類するために用いる(図2)。すきまゲージは厚さが0.03~3.00mmの異なる10枚から25枚を1組とする薄鋼板からなり,適当な薄片を組み合わせて測定に用いる。角度ゲージは記されている角度をなす端面が測定面として磨かれているもので,長さ測定の場合にブロックゲージのような端度器が用いられると同様に,角度の精密な測定に対して用いられる。テーパーゲージは軸,または穴の円錐の傾き,すなわち円錐の直径とその長さの比(テーパー比),または軸線を含む断面内の円錐の母線の間の角度(テーパー角度)を検査するために用いる。ブルー絵具を一様の厚さに塗り,工作物にはめ合わせ,相対的にわずかに回転させ,そのはげる位置,広さでテーパーの大小を知る。入り込む深さからも推定できる。輪郭ゲージは部品の形を検査するためのもので,このゲージを当て,明るい背景ですきまをみて判断する。穴位置を検査するために位置ゲージがある。ねじ検査用には平行ねじゲージとテーパーねじゲージとがある。
ゲージは計器という意味にも用いられる。例えばダイヤルゲージ,ピストンゲージなどである。
執筆者:沢辺 雅二
アイルランドの旅行家。カトリック系旧家に生まれ,スペインで教育を受け,ドミニコ会士として1625-37年の間メキシコ,グアテマラで生活。その際スペインとカトリック教会の植民地支配の実態を目撃し,帰国後の42年国教会へ転ずる。48年非スペイン人として初めてスペイン領植民地の実態をあばいた《西インド新見聞録》を刊行し,各国語に翻訳された。55年スペイン領ジャマイカの攻略に参加し,イギリスのカリブ海進出の拠点建設に寄与したが翌年同地で死去した。
執筆者:清水 透
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
鉄道線路の幅やワイヤの太さなどの標準寸法(規格)、圧力計などの計器、寸法や形状の検査の基準に用いる器物などの総称。日本では主として検査の基準に用いる器物をさす。長さ(寸法)の基準に用いるものとしては、ブロックゲージ(断面が長方形で、二つの平行な端面の間隔が長さ標準を与えるもの)、バーゲージ(円形断面で、平行両端面が長さ標準を与えるもの)、プラグゲージ(標準寸法の円柱からなり、穴の内径の検査に用いるもの)、リングゲージ(リングの内径が標準寸法を与え、円柱の外径の検査に用いるもの)、はさみゲージ(C形またはX形の器物で、相対する平行平面の間隔が標準寸法を与えるもの)、隙間ゲージ(すきまげーじ)(標準の厚みをもつ薄板からなり、隙間または厚みの基準となるもの)などがある。角度や形状の検査に用いるものとしては、角度ゲージ、テーパーゲージ、プロファイルゲージ、ねじゲージなどがある。
使用方法のうえでは、作業用ゲージ、検査用ゲージ、マスターゲージなどの区別がある。また、製品の寸法が許容範囲内にあるかどうかを検査するには、許容される最大寸法と最小寸法の基準を組み合わせた限界ゲージなどが使われる。
[三井清人]
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…1527年,フランスに編靴下組合が設立され,16世紀後半になると,ドイツやイギリスでも絹の編靴下が貴族に用いられた。88年,イギリスの牧師リーWilliam Leeがヒゲ針を用いた靴下編機を発明し,翌年にはさらに1インチ20ゲージ(後述)のフルファッション(成型編)絹靴下編機に発展した。1775年にクランがトリコットの母体である経編(たてあみ)機を案出,1849年にはM.タウンゼンドが,今日でもメリヤス編機のほとんどを占めているベラ針を発明し,イギリスはメリヤス王国となった。…
…端面は平面,円筒面,または球面のいずれかである。ブロックゲージやマイクロメーター基準棒のような平行な平端面をもち,かつ断面が長方形,または円形の平行端度器,測定面が完全な円筒形の円板ゲージや円筒形プラグゲージ,測定面が円筒の一部からなる円筒端バーゲージや平プラグゲージ,球の測定面をもち断面が円形の球面棒ゲージなどがある。これらを単にゲージともいう。…
※「ゲージ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新
10/1 共同通信ニュース用語解説を追加
9/20 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新