ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「サザーランド」の意味・わかりやすい解説
サザーランド
Sutherland, Dame Joan
[没]2010.10.11. スイス,レザバン
オーストラリアのソプラノ歌手。フルネーム Dame Joan Alston Sutherland。20世紀を代表するコロラトゥーラソプラノとして知られ,ベルカント・オペラで高い評価を得た。シドニー音楽院で学び,1951年にオペラデビューを果たし,その後ロンドンの王立音楽大学に留学する。1952年にコベントガーデン劇場を本拠地とするロイヤル・オペラに入団,ウォルフガング・アマデウス・モーツァルトの『魔笛』の第1の侍女役でデビューした。1959年にガエターノ・ドニゼッティの『ランメルモールのルチア』の主役を演じ,プリマドンナとして認められた。1961年に同作品でニューヨークのメトロポリタン歌劇場にデビューし,世界の主要歌劇場で活躍した。ほかに,ジャック・オッフェンバックの『ホフマン物語』の恋人役,ドニゼッティの『連隊の娘』のマリー役などをあたり役とした。1961年イギリス王室歌手の称号を受け,1978年にデームに叙された。1991年メリット勲章を受章。
サザーランド
Sutherland, Edwin Hardin
[没]1950.10.11. インディアナ,ブルーミントン
アメリカの社会学者。犯罪社会学派の代表的な刑事学者である。 1913年シカゴ大学で博士号を取得。その後,ウィリアム・ジュウェル,イリノイ,ミネソタ,シカゴ,インディアナ各大学で社会学を講じた。専攻は刑事学で,その犯罪学理論は「犯罪行動の習得」の理論に集約される。すなわち,個人が犯罪行為に出る過程を習得という概念をもって解明するもので,習得は,他人との交互作用,個人的な集団内での接触,法的な打算など9つのメカニズム命題で解明できるとした。それはアメリカ犯罪社会学で伝統的な,習慣を中心とする犯罪行動の発生的解明の側面をなしていた。著書には彼の発表した多くの論文の集大成である『刑事学原論』 Principles of Criminology (1947) のほかに,『職業的窃盗犯人』 The Professional Thief (37) ,『ホワイトカラー犯罪』 White Collar Crime (49) などがある。
サザーランド
Sutherland, Graham Vivian
[没]1980.2.17. ロンドン
イギリスの画家。初め鉄道技師を目指したが,1921~25年ゴールドスミス美術学校に学び,銅版画家となる。版画はロマン主義的で,S.パーマーの影響が顕著であるが,ときに W.ブレーク,P.ナッシュ,H.ムーア,ピカソらの影響もみられる。油絵は 35年ウェールズ地方を訪れ,その風景に魅せられて始めた。作品には『小道の入口』 (1939,テート・ギャラリー) などの風景画が多いが,第2次世界大戦中は従軍画家として,爆撃で破壊された建造物を多く描いた。 46年に描いたノーサンプトンのセント・マシューズ聖堂の壁画『磔刑』は有名。画風は具象的な要素を残した半抽象ともいうべきものであるが,イギリスの幻想的絵画の伝統に根ざしたものといえる。
サザーランド
Sutherland, Earl Wilbur
[没]1974.3.9. マイアミ
アメリカの医学者。ワシントン大学医学部卒業。同大学助教授,ケースウェスタンリザーブ大学医学部教授を経て,1963年からバンダービルト大学医学部教授。生体内の第1メッセンジャー (伝達物質) に対し,第2メッセンジャーとしてのサイクリック (環状) AMPの産生と機能を研究し,58年にサイクリック AMPの重要性を指摘し,次いで細胞膜のアデニール・シクラーゼという酵素が活性化して,ホルモンの働きを「真空管のように」増幅拡大するという学説を発表,その後この学説が証明された。この研究に対して 71年度のノーベル生理学・医学賞が贈られた。
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