デジタル大辞泉 「さす」の意味・読み・例文・類語
さす[助動]
1 使役の意を表す。せる。させる。
「これはいさめる馬なりとて、鞍を置きかへさせけり」〈徒然・一八五〉
2 動作を他に任せておいて、結果的にそうなることを表す。…に任せる。→させる →しむ →しめる →す →せる
「馬の腹射させて引き退く」〈平家・一二〉
3 (多くあとに「たまふ」など尊敬の意を表す語を伴って)尊敬の意を強める。…なさる。
「二月の二十日あまり、南殿の桜の宴せさせ給ふ」〈源・花宴〉
4 (謙譲語「聞こゆ」に付いて)謙譲の意を強める。お…申し上げる。→聞こえさす
「今一度かく見奉り聞こえさすることもなくてや」〈源・行幸〉
[補説]「さす」は上代から近世まで広く用いられたが、1の用法が原義。近世以降は四段型にも活用する。2は中世の軍記物語の類に多くみられる武者言葉の一用法。3・4は中古以降の用法で、3の「させたまふ」「させおはします」「させらる」などは高い敬意を表す。