翻訳|Samuel
旧約聖書に出てくる人物で,前11世紀の士師,祭司。預言者の機能をあわせ持つ。エフライムの人,ラマ出身,神の人,先見者,預言者,士師と呼ばれる。イスラエルの王制導入に際して決定的役割を果たした。エルカナとハンナの子。母ハンナの祈りによって与えられ,シロの神殿祭司エリの下にあずけられ,預言者として召された(《サムエル記》上3)。イスラエルの最後の士師として,ベテル,ギルガル,ミズパの各地を巡回した。また偶像礼拝を警告し,ペリシテ人の攻撃に際して民に悔い改めを求め,神にとりなしを祈ったためペリシテ軍は奇跡的に敗退した(7)。民の王国の求めに譲歩し,ギルガルにおいてサウルを王とし,神の律法に対する忠実を要求(8~12)。後サウルがアマレク人に関しホレム(全滅)の戒めに従わなかったため,彼を廃位(15),代わってダビデを王とした(16)。彼の人物と役割は強い印象を残したらしく,複雑な伝承を経て,《サムエル記》に伝えられている。
執筆者:西村 俊昭
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
古代イスラエルの士師(神の霊力を受けた指導者)、祭司、預言者、神の人。エフライム出身。イスラエルの王国成立に重要な役割を果たしたと考えられるが、複数の伝承が混在し、一義的に人物像を抽出することはできない。サムエル自身は王制に反対したが、ペリシテの圧迫に苦しむ民の意思に従ったともいわれる。神のお告げを知らせる預言者として、サムエルはサウルをイスラエルの君(ナギード)と認め、彼に油を注ぐ儀式を行い、王とした。しかし、サウルが神のことばに背いたために、サムエルは、新たにダビデを選んで油を注いだ(「サムエル記」上・1~16、19、28章)。
[市川 裕]
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出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
前11世紀頃のイスラエル最後の士師(しし)(民族的指導者)。預言者,祭司でもあった。ペリシテ人の攻勢に際し,サウルをイスラエルの最初の王位につけたが,のち彼と疎遠になり,ダヴィデを王に選んだ。
出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報
…旧約聖書の《士師記》と《列王紀》の間にある上・下2巻の歴史書。書名にもかかわらず,預言者サムエルが主役を演じるのは上8章までと12章のみである。上1~7章は,シロの神殿に仕えたサムエルの少年時代,シロを中心とするイスラエル部族連合がペリシテ人に敗北した経緯,士師サムエルの活動などについて,上8~15章は,サウルがイスラエル初代の王に選ばれたいきさつ,サウルとペリシテ人の戦い,サウルとサムエルの仲たがいなどについて語る。…
…モーセに預言者的要素が強いことは彼についての旧約聖書の記述にさかのぼり,歴史的に考えてもある程度にこれを認めうる。モーセ時代に続くいわゆる士師の時代に輩出した〈カリスマ的指導者〉士師に預言者的要素が強いことも当然であるが,そのような預言者的伝統を受けて士師時代の終り,王国時代の初めに活動したサムエルに狭義の預言者の最初の活動を見いだしたい。預言者はイスラエルにおいて,その歴史の危機の時代に一回一回に登場し,しかもその危機は士師の場合のように局地的なものでなく,国家の政治的危機を前提とする。…
※「サムエル」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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