スペイン北西部,レオン地方の同名県の県都。人口15万3943(2001)。トルメス河畔に位置し,イベロ族の重要な居住地であった。半島中央から西部および北西部へと至る交通の要所にあり,ローマ帝国時代はサルマンティカSalmanticaとして知られた。国土回復戦争においては,ドゥエロ川を渡河して攻め込むキリスト教徒軍に対し,徹底抗戦したイスラム教徒の拠点となった。コムネロスの反乱(1519-21)では,カルロス1世に反旗を翻し敗れたが,18世紀初頭のスペイン継承戦争に際しては,フェリペ5世を支持し,カスティリャの陣営に加わった。郊外のアラピレスArapilesは,1812年7月22日,ウェリントン将軍指揮下のイギリス・スペイン連合軍が,マルモン将軍率いるフランス軍を破り,スペイン独立戦争の趨勢を決めた地として名高い。1936年に勃発したスペイン内戦では,最初から反乱者側につきフランコもここに総司令部を設置し,新政府がブルゴスで樹立されても,各省庁の末端機関は移動されなかった。また,大学の町としても有名であり,サラマンカ大学は1244年の開校初年度にすでに約1万4000名の学生が入学した。13世紀以降スペインの著名な学者,聖職者,役人はほとんど同大学の出身で,14世紀にはボローニャ,パリ,オックスフォード各大学とともに,西ヨーロッパにおける学問の中心となった。大学組織も現在のオックスフォード大学,ケンブリッジ大学に見られるカレッジ制を取り入れていた。16世紀から17世紀にかけては最盛期に入り,15世紀末に発見された新大陸における法の整備をはじめ,トリエント公会議(1545-63)での反宗教改革の思想が築かれた。当時の学者の中で,国際法のビトリア,スアレス,詩人のルイス・デ・レオンらが有名である。さらに,活版印刷術が普及する16世紀以前の,332冊に及ぶ版本と1038枚の原稿が大学図書館に納められ,膨大な蔵書とあわせ,その価値は比類ないものとなっている。
執筆者:フアン・ソペーニャ
隣り合って建つ新旧二つの大聖堂のうち,12~13世紀に建立の旧大聖堂はロマネスクからゴシックへの過渡期のもので,フランス南西部アキテーヌ地方の様式に近く,またイスラム装飾・建築の要素も含む。交差部採光塔はサモラの大聖堂に類似する。新大聖堂は後期ゴシック様式で1513年に着工され,ルネサンスやバロック様式を加え,交差部採光塔は1705年ホセ・チュリゲラ(チュリゲレスコ)により完成。新旧大聖堂によって,スペインの,中世から近世にかけての建築様式の移り変りが見渡せる。ほかにも教会,修道院に見るべきものが多い。
執筆者:五十嵐 ミドリ
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スペイン中西部、レオン地方サラマンカ県の県都。ドゥエロ川支流のトルメス川右岸、標高803メートルに位置する。人口15万6368(2001)。周辺の広大なメセタ(台地)で栽培される小麦、豆類などの農産物の集散地で、商業、農産物加工および化学・繊維工業も行われる。13世紀初頭アルフォンソ9世創設のサラマンカ大学の所在地で、当時、大学はオックスフォード、パリ、ボローニャと並ぶ第一級の大学として広く知られ、16世紀には7000人の学生が在学した。大学の設立によって町はヨーロッパ有数の学術、文化の中心地として栄えた。今日では中世の建築物を多く残す歴史的都市で、歴史上の人物の彫像があるアーケードに囲まれた中央広場(1720~30建設)がその中心である。市街の南には、12世紀ロマネスク様式の旧聖堂と16世紀ゴシック様式の新聖堂が相接して建ち、その西方に中世の大学の建物が残る。このほかにもローマ時代の橋や劇場など、歴史的名所、旧跡が多い。旧市街は1988年に世界遺産の文化遺産として登録されている(世界文化遺産)。
[田辺 裕・滝沢由美子]
古代にリグリア人、ついでケルト人が居住したといわれる。紀元前217年にカルタゴのハンニバルがこの町を破壊してローマに迫ったが、第二次ポエニ戦争でローマの属領となり、ルシタニアの一部となった。この時代にサルマンティカSalmanticaとよばれ、セビーリャまでの「銀の道」の経由地として発達した。西ゴート人の支配後、7世紀のトレド宗教会議で司教管区となったが、その後11世紀までイスラム教徒に占領され、12世紀初頭アルフォンソ6世によって奪回された。同世紀後半、ここでレオン王国のフェルナンド2世によってコルテス(議会)が招集され、同市には特権が与えられた。13世紀前半のサラマンカ大学創設を経て、16世紀のコムニダーデスの反乱の際には反乱側につき、1812年にはフランス侵入軍と大戦闘が行われた。スペイン内戦中は反乱派の拠点となった。
[深澤安博]
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