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フランスの作曲家、ピアノ奏者、オルガン奏者。パリに生まれる。10歳でピアノ奏者としてデビュー、神童ぶりを発揮、のちにパリ音楽院で、オルガンをブノア、作曲をアレビーに学んだ。18歳でパリのサン・メリー教会のオルガン奏者に就任、同年、交響曲第1番が初演されグノーの賞賛を受けた。1857年マドレーヌ教会のオルガン奏者になり、この教会で彼の即興演奏を聴いたリストは「今日の最高のオルガン奏者」と激賞した。一方、サン・サーンスはしだいに作曲に力を注ぎ、67年にはカンタータ『プロメテの結婚』が万国博覧会記念コンクールに入賞するなど、作曲家としての地位を確立していった。また、当時のフランスに優れた器楽作品がほとんどないことを痛感し、若い作曲家に器楽や室内楽作品の発表の場を与えるため、71年ビュシーヌとともに国民音楽協会を設立、フランク、フォーレ、ラロらがこの協会に加わった。彼は86年まで同協会の指導的地位にあり、その間、自らも作品を発表した。晩年は作曲活動のかたわら、アメリカから東洋まで旅行をして回ったが、北アフリカのアルジェが気に入り、1921年12月パリの寒さを避けてふたたび訪れたこの地で86歳の生涯を閉じた。
彼はあらゆるジャンルにわたって多くの作品を残したが、オペラ主流の当時のフランス音楽界の情況を映し、とくにオペラに力を注いだ。しかし今日『サムソンとデリラ』(1877初演)を除いてはあまり上演されていない。むしろ管弦楽曲、協奏曲に優れた作品が多く、オルガンを加えた交響曲第3番(1886)、5曲のピアノ協奏曲、3曲のバイオリンと管弦楽のための協奏曲、同じくバイオリンと管弦楽の『序奏とロンド・カプリチオーソ』(1863)、交響詩『死の舞踏』(1874)などは、いまも広く親しまれている。また当初は12の楽器のために書かれ、有名な「白鳥」を含む描写的な作品『動物の謝肉祭』(1886。のちに管弦楽用に編曲)は、彼の死後人気を博した。彼の作品は革新的であるよりは古典的な形式感や節度を重んじたものであるが、同時に繊細で優雅な表現、色彩的感覚に優れ、またとくに協奏的作品においては名技性を存分に取り入れてもいる。
[美山良夫]
フランスの新古典主義の作曲家で,卓越したピアノ奏者,オルガン奏者,著述家でもあった。幅広い教養を身につけ,明快で優雅な作風で当時のほぼすべてのジャンルを手がけたが,真に独創的な音楽表現を生み出すにはいたらず,折衷的とも評される。R.ビュシーヌ,フォーレ,C.フランクなどとともに国民音楽協会を設立(1871),フランスの若手作曲家に作品演奏の場を与えることに貢献する一方,著述家としては反ワーグナー,反印象派の論陣を展開した。代表作には交響詩《死の舞踏》(1874),室内楽曲《動物の謝肉祭》(1886),《ピアノ協奏曲第2番》(1868),《同第4番》(1875)などがある。
執筆者:片山 千佳子
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出典 (社)全日本ピアノ指導者協会ピティナ・ピアノ曲事典(作曲者)について 情報
…(4)名のある音楽家に映画のための作曲を依頼する。フランスのフィルム・ダール作品《ギーズ公の暗殺》(1907)のためにサン・サーンスが作曲したもの(作品第128番)が映画のために書かれたオリジナル曲の最初であった。これに次いで,フランスのみならず各国で,大作にかぎり特別に作曲,編曲されたスコアによる伴奏をつけて公開するという特別興行方式がとられるようになった。…
…ほかにパガニーニの《ベネチアの謝肉祭》(1829),ベルリオーズの序曲《ローマの謝肉祭》(1834。本来はオペラ《ベンベヌート・チェリーニ》の第2幕への序曲),サン・サーンスの2台のピアノを含む室内楽組曲《動物の謝肉祭》(1886)などがよく知られている。【後藤 暢子】。…
…ただしこれは後世からみての話で,この標題交響曲(《幻想交響曲》ほか)の創始者,《レクイエム》の作曲家の天才を,当時正当に認めた者はごく少数であった。 フランス音楽の再生は,むしろグノーとサン・サーンスに始まるというべきであろう。グノーの《ファウスト》は劇場からマイヤーベーアとイタリア人を遠ざける最初の一撃となり,《マノン》のマスネー,フランス的なレアリスムに立つ《カルメン》のビゼーと《ルイーズ》のG.シャルパンティエら,フランス的な感性を主張する歌劇作家が後に続いた。…
※「サンサーンス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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