シナントロプス(その他表記)Sinanthropus

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「シナントロプス」の意味・わかりやすい解説

シナントロプス
Sinanthropus

中国,北京の南西郊,周口店の近くの石灰岩洞窟から発掘された化石人類北京原人。近年はホモ・エレクトゥス・ペキネンシス Homo erectus pekinensis という。1921年にヨハン・G.アンダーソンが動物の骨を,また 1923年に O.ズダンスキーが 2本の歯を発見した。その後 1928年から裴文中らによって 14個の頭骨,11個の下顎骨片,歯,四肢骨などが発掘された。この骨の発見は世界的に注目され,デービッドソン・ブラックやフランツ・ワイデンライヒによって詳細に研究された。頭骨は厚く頑丈で,眼窩上隆起や後頭隆起は強く発達し,額は低いが,ピテカントロプスよりは高い。突顎で,はなく,歯は大きいが,犬歯は突出していない。脳容量は約 1000cm3と推定される。出土した四肢骨は多くないが,現生人類との差異は少なく,完全な直立二足歩行が可能であったと思われる。ほかに更新世中期のゾウ,サイ,ケンシコなどの大型動物化石が多数発見されている。年代は,約 77万年前から約 23万年前まで。文化的には,独自の周口店文化というやや原始的な前期旧石器時代の文化をもち,また火の使用が初めて認められたことでもよく知られる。ピテカントロプスなどとともに原人類に属する。1941年12月太平洋戦争勃発とともに,これらの化石標本は行方不明となってしまったが,戦後再開された発掘調査で新たな骨も見つかった。

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百科事典マイペディア 「シナントロプス」の意味・わかりやすい解説

シナントロプス

北京(ペキン)原人とも。中国,北京の南西方,周口店遺跡の洞窟で発見された化石人類。1927年D.ブラック〔1884-1934〕により命名された。学名ではSinanthropus pekinensis。第四紀中部洪積世に属し,現在ではピテカントロプスとともに原人(ホモ・エレクトゥス)に分類石器骨角器を使用し,食人の風習があったとみられる。第2次大戦中その資料は紛失したが,戦後若干発掘された。周口店遺跡は1987年世界文化遺産に登録された。
→関連項目カニバリズム上洞人中華人民共和国テイヤール・ド・シャルダン裴文中藍田原人ワイデンライヒ

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