シベリアに中心をもつ高気圧。おもに寒候期(10月~3月)に現れ、冬季にもっともよく発達する。典型的な場合には、中心気圧が1070~80ヘクトパスカルに達し、ユーラシア大陸の大部分を覆うことがある。持続性、停滞性が大きく、寒候期の気候図(平均気圧分布)にも、明瞭(めいりょう)に表されている。その成因は、海陸分布と大地形(チベット・ヒマラヤ山塊)の影響で、アジア大陸東岸上空に偏西風波動の定常的な谷ができ、この谷の西側で北極海からシベリアに大規模に流入する寒気団が、チベット・ヒマラヤ山塊にせき止められて大陸上に蓄積されること、また、大陸の地表面の放射冷却によって形成される下層の寒気も大陸上に蓄積されること、などである。この寒気団は、日本近海を発達しながら北東進する低気圧の後面で、北西季節風(シベリア風)となって大規模に吹き出して、東アジア一帯に寒波をおこす。寒気が吹き出したあとは、シベリア高気圧は弱まり、中心もいくつかに分かれる。しかし寒気がふたたび蓄積されると、また強まり、そのようにして数日~十数日の周期で消長を繰り返す。三寒四温の天気変化もこれによる場合が多い。モンゴル高気圧とよばれることもある。
[倉嶋 厚]
冬季モンゴル北部に中心をもつ大高気圧で,その中心部は停滞性である。最下層は放射冷却で著しく低温だが,その上には沈降流があり,気層全体は安定で乾燥している。この高気圧は上空の偏西風の変動に従って1週間前後の間隔で盛衰する。偏西風がアルタイ・天山山系の風上で北方に変位し高気圧性の流れを強めると,その風下で質量集積が起こり下層の気圧を高める。下層の冷却した気団は崑崙山脈で南下を阻止され,上層の力学効果と相まって強い高気圧ができる。偏西風は日本列島付近で南下し,カムチャツカ半島に発達した低気圧をつくると大陸の気塊は季節風となって激しく流出し,高気圧は弱まり分裂する。その後再び北極気団の南下変質,上層の気圧の峰の形成が起こり,高気圧は強まる。夏季はシベリア東部が低圧部に変わる。春一番と呼ばれる沿海州での低気圧の発達は,この大高気圧の衰退を告げている。
執筆者:斎藤 直輔
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…その下層が大陸上の放射冷却で低温度の空気から成るものがある。大陸高気圧と呼ばれる冬のシベリア高気圧や北アメリカ大陸の高気圧がそれである。ここでも地形の効果があって,崑崙,祁連山脈がシベリアでつくられる寒気の南下を阻止するので,シベリア高気圧は南側に障壁のない北アメリカ大陸の高気圧に比べて強大になる。…
※「シベリア高気圧」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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