アメリカの天文学者。ミズーリ州ナッシュビルに生まれる。同地の大学で数学、物理学を修め、1913年プリンストン大学でラッセルに師事し、食変光星の観測をした。1914年ウィルソン山天文台のヘールのもとで球状星団内変光星を観測。1921~1952年ハーバード大学教授および同大学天文台長。1939~1944年アメリカ芸術科学院長。1943~1947年アメリカ天文学会長。1913年食変光星の大きさの決定法を考案、近接連星の研究に貢献した。翌年ケフェウス型変光星の脈動説を提唱し、エディントンの恒星解析理論(1924)の基礎資料となった。また球状星団内脈動星に周期光度を適用し、その距離推定・空間分布から銀河系の形状と中心を見積もった。さらにマゼラン星雲やアンドロメダ銀河などについて他銀河内脈動星によりその距離と大きさを提示した。晩年平和運動の組織者として活躍。イギリス王立天文協会ほか諸学会から多くの栄誉を受けた。
[島村福太郎]
アメリカの天文学者。テネシー州ナッシュビルの農園に生まれ,ミズーリ大学,プリンストン大学に学んだ。1913年にプリンストン大学で仕上げた食連星の学位論文は,長い間その分野での教科書として使われた。翌年ウィルソン山天文台の研究員になって,球状星団の中の変光星の観測をした。それらの変光星の明るさから球状星団の距離を求めて,銀河系の中心は球状星団の多いいて座の方向にあると看破した(1918)。太陽は銀河系の中心近くにあるというそれまでの考えを大胆に否定したのである。21年にシャプリーはハーバード大学天文台長に就任した。そこで確実に銀河系の外にあると考えられるマゼラン雲の中の変光星を調べ,近距離銀河の距離決定をした。ハーバード大学ではこの時代に,星の分光分類のヘンリー・ドレーパー星表,銀河の星表を出版し,大量の撮影乾板は国際的に天文研究者の利用に供された。教育面での活躍も著しく,1930-45年にハーバードで学位を得た天文学者はアメリカの天文学者の1/3に達し,後年のアメリカ天文学界の隆盛の基礎を築いた。彼は1930年代末から人道主義の立場でヨーロッパからのユダヤ人の亡命科学者を何百人も救ったといわれる。第2次世界大戦後はユネスコ設立のために力を尽くした。
執筆者:石田 蕙一
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…各球状星団の距離が決まると,それらの空間分布図が得られ,この図から銀河系の輪郭やその大きさがわかり,また銀河系内の太陽の位置もわかるわけである。この方法で銀河系の大きさを決める試みを初めて行ったのはシャプリーH.Shapleyで,1910年代末から約10年間にかけてのことである。彼が,当時知られていた93個の球状星団の空間分布図から求めた結果は,銀河系が楕円体で表され,その三つの軸の直径が23万光年,16万光年および13万光年というものであった。…
…天王星を発見した(1781)F.W.ハーシェルはその後この考えを観測的に発展させ,初めて銀河系のモデルを発表した。20世紀初めのJ.C.カプタインの研究に至るまで続いた,太陽を中心付近に置く銀河系モデルを画期的に改めたのは,1917年アメリカのウィルソン山に完成した2.5m反射望遠鏡を用いたH.シャプリーの研究であった。これによって,銀河系はそれまで考えられたよりずっと大きく,太陽は中心よりはるかに端に寄って位置することが明らかにされた(現在では,直径約10万光年の中心部の膨れた薄い円盤状の銀河系は約2000億個の恒星からなり,太陽は中心から約3万光年の円盤内にあるとされる。…
…いて座の方向にとくに数多く見られる。1918年,H.シャプリーは球状星団の天球上の分布から,銀河系の中心方向を初めて明らかにした。球状星団は,銀河系の中心から1万光年以内の距離に多く,それより外では銀河中心距離の3.5乗に逆比例する空間密度で分布している。…
…各球状星団の距離が決まると,それらの空間分布図が得られ,この図から銀河系の輪郭やその大きさがわかり,また銀河系内の太陽の位置もわかるわけである。この方法で銀河系の大きさを決める試みを初めて行ったのはシャプリーH.Shapleyで,1910年代末から約10年間にかけてのことである。彼が,当時知られていた93個の球状星団の空間分布図から求めた結果は,銀河系が楕円体で表され,その三つの軸の直径が23万光年,16万光年および13万光年というものであった。…
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