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シュペーマン Spemann, Hans

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

シュペーマン
Spemann, Hans

[生]1869.6.27. シュツットガルト
[没]1941.9.12. フライブルク
ドイツの発生学者。ウュルツブルク大学で,T.ボベリに師事する。ロストク大学教授 (1908) ,カイザー・ウィルヘルム研究所生物学部長 (14) ,フライブルク大学教授 (19) 。形成体 (オルガナイザー ) の概念を打立て,実験発生学に新時代を開いた。実験を通じて発生の機構を解明しようという目的から,1902年に,毛髪でイモリを縛り2つの半球に分けて培養し,胚の特定部位を含む半球のみが正常な発生を継続することを発見,発生を誘導する役割をになう特定の領域が胚に存在する可能性を考えた。これを直接的に実証するため,胚の一部を切取って別の胚に移植する技術を開発し (18) ,一連の移植実験を行なった末,24年に助手の H.マンゴルトとの共同研究によって,胚より原口背唇部を切出して別の胚に移植すると移植片を中心として宿主胚の組織の中で発生が進行することを明らかにした。発生を誘導する機能をもつことが立証された原口背唇部は形成体ないし編制原と名づけられた。彼が創始した胚を対象とした移植技術と,形成体による誘導の概念とは,実験発生学の発達に大きく影響し,それ以来,形成体による誘導現象の機構解明が発生学の中心課題となった。形成体発見の功績によって,35年ノーベル生理学・医学賞を受賞した。

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百科事典マイペディアの解説

シュペーマン

ドイツの動物学者。ビュルツブルク大学でボベリの指導を受け,発生学の研究を始める。ベルリンのカイザー・ウィルヘルム研究所員,フライブルク大学教授等を歴任両生類を材料に,初期胚の実験発生学的研究を行い,器官の形成が組織間の相互作用によって影響されることを明らかにした。

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世界大百科事典 第2版の解説

シュペーマン【Hans Spemann】

1869‐1941
ドイツの発生学者。ビュルツブルク大学でボベリT.Boveriの下に学ぶ。同大講師,助教授を経てロストク大学教授,カイザー・ウィルヘルム生物学研究所研究員,フライブルク大学教授を歴任。両生類を材料にみずから考案した手術器具や実験法を駆使し広範な実験発生学的研究を行った。目の水晶体は外胚葉眼杯の接触によって生じること,表皮や神経管になる胚の組織小片は移植された胚の部域に対応した分化をすること,卵割期の胚の核が完全な胚を形成する能力をもつことなどを明らかにした。

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大辞林 第三版の解説

シュペーマン【Hans Spemann】

1869~1941) ドイツの動物学者。両生類の胚発生のメカニズムを研究、胚における形成体を発見。実験発生学の基礎を築く。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

シュペーマン
しゅぺーまん
Hans Spemann
(1867―1941)

ドイツの動物発生学者。シュトゥットガルトで生まれ、ウュルツブルク大学のボベリTheodor Boveri(1862―1915)の下で発生学を学んだ。ロストック大学教授、カイザー・ウィルヘルム研究所(現、マックス・プランク研究所)部長、フライブルク大学教授を歴任した。両生類の胚(はい)を用い、結紮(けっさつ)実験(毛や糸で縛り、その両側の物質移動など相互の影響を抑圧する実験)、あるいは自ら考案製作したガラス製微細外科手術器具を用い、巧妙かつ精密な欠損実験、移植実験を行い、発生の仕組みに関する数々の事実を明らかにした。ワイスマンの生殖質理論を否定した両生類初期胚の結紮実験、カエル胚の眼杯と水晶体の相互関係を示す実験など、けっして疑点を残さない結論に至る一連の諸結果は並はずれた彼の資質を示すものであるが、とりわけその名を不朽にしたのは形成体の発見である。マンゴールド夫人Hilde Mangold(1898―1924)の協力の下に、原口背唇部を他の胚の本来は胴の皮膚になる部分に移植し、ここに二次胚を形成させた。こうして、動物の胚は、形成体により秩序ある形態と機能をもった体に編成されることを明らかにした。これらの業績とともに忘れてならないのは、その門下から優れた発生学者を輩出させ、20世紀の発生学を方向づけたことである。1935年に「胚の発生における誘導作用の発見」によりノーベル医学生理学賞を受賞した。[竹内重夫]

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世界大百科事典内のシュペーマンの言及

【形成体】より

…原口上唇部をとくに第1次形成体というのに対し,他の組織の形成を誘導する第2次,第3次などの形成体がある。形成体はイモリの胚でH.シュペーマンとH.マンゴルト(1924)がはじめて発見したものであるが,脊椎動物の胚には普遍的にこのような胚域が存在すると理解してよい。発生【江口 吾朗】。…

【生物学】より

…また各種の細胞の分化は,それぞれの細胞で異なる酵素群が働いているからということで一応説明できるとしても,同じ生物でも細胞ごとになぜ別個の遺伝子セットが機能を発揮するのかについては,遺伝学と発生学からの説明を必要とする。20世紀前半に発生学は形成体(オーガナイザー)と誘導の概念により(H.シュペーマン),また遺伝学はショウジョウバエの染色体地図や突然変異の研究によって(J.H.モーガンとH.J.マラー),大いに進展した。しかし,オーガナイザーや遺伝子の本体が何かは明らかにできなかった。…

【発生学】より

…18世紀までは前成説が優勢であったが,19世紀の前半以後は後成説の立場が主流となった。とくに発生力学の分野におけるH.ドリーシュやH.シュペーマンの実験的研究によって,1回細胞分裂した二つの細胞からなる卵の,それぞれを分離して育てれば2匹の半分の動物ではなく,完全な2匹の動物が発生してくることが示されたことなどから,一時は,前成説は完全に否定されたかにみえた。 現在では発生の要因は,窮極的には受精卵の遺伝情報として内蔵されていると考える。…

【誘導】より

…たとえばイモリ初期囊胚の原口背唇部は,他の初期囊胚に移植されると陥入して脊索や中胚葉に分化するが,一方では形成体(オーガナイザー)としてそれに接する宿主胚の外胚葉に神経管の形成を誘発する。 目の水晶体は頭部表皮外胚葉からできてくるが,誘導現象はこの過程を明らかにしたH.シュペーマンによって1905年に発見された。イモリでは,将来網膜となる眼胞に隣接した表皮外胚葉が水晶体原基を形成する。…

※「シュペーマン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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