シンガー(読み)しんがー(その他表記)The Singer Company

デジタル大辞泉 「シンガー」の意味・読み・例文・類語

シンガー(singer)

歌手。声楽家。「ジャズシンガー
[類語]歌手歌い手歌歌い歌姫声楽家ボーカリストボーカルシンガーソングライター

シンガー(Isaac Bashevis Singer)

[1904~1991]米国の小説家。ポーランド生まれ。1935年亡命。ポーランドのユダヤ人居留地に生きる人々の姿を描く。1978年ノーベル文学賞受賞。作「ゴライの悪魔」「モスカト家の人々」など。

シンガー(Isaac Merrit Singer)

[1811~1875]米国の発明家・企業家。1851年に布の自動送り装置を備えた家庭用ミシンを発明。シンガーミシン会社を設立。

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精選版 日本国語大辞典 「シンガー」の意味・読み・例文・類語

シンガー

  1. 〘 名詞 〙 ( [英語] singer )
  2. 歌手。声楽家。
    1. [初出の実例]「名高い高調子(ソプラノ)の歌手(シンガア)が顔出しをするのだといって」(出典:茶話(1915‐30)〈薄田泣菫〉入場料の倹約)
  3. 芸者をいう学生ことば。
    1. [初出の実例]「ゼ・シンガル〔田の次(じ)の事〕の顧客(なじみ)であって、ひどくあつくなって通って来るんだが」(出典:当世書生気質(1885‐86)〈坪内逍遙〉五)

シンガー

  1. [ 一 ] ( Issac Merrit Singer アイザック=メリット━ ) アメリカの発明家、企業家。布の自動推進装置を組入れたミシンを考案。I・M・シンガー会社を創立。(一八一一‐七五
  2. [ 二 ] ( The Singer Co. の略 ) [ 一 ]が一八五一年に創立したアメリカのミシン製造会社。大量生産、直売方式、月賦販売制度を採用して伸長した。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「シンガー」の意味・わかりやすい解説

シンガー(The Singer Company)
しんがー
The Singer Company

アメリカの家庭用ミシンの大手メーカー。かつては世界のミシン業界で圧倒的優位を誇り、1世紀以上にもわたって家庭用ミシンの世界的なトップブランドであり続けた。アメリカ初の多国籍企業として、19世紀末にはすでにヨーロッパラテンアメリカでの現地生産に着手した。1960年代以降、外国のミシン・メーカーの台頭、市場の飽和などにより行き詰まり、脱ミシン・メーカーを図って企業買収による多角化を開始。しかし、多角化による経営再建のほとんどが失敗に終わり、1980年代にミシン部門を売却、1999年には連邦破産法(日本の会社更生法に相当)の適用を申請した。

[奥村皓一]

創業期

1873年2月、シンガー工業Singer Manufacturing Co.としてニュー・ジャージー州で設立登記されたのが発祥である。その前身は、家庭用ミシンの実用化に成功したアイザック・メリット・シンガーが1851年に創立したI・M・シンガー社であり、同社は下取り制度、割賦販売によるミシンの普及に成功、発足後まもなく家庭用ミシンのトップブランドの地位を築いた。1904年には製品の販売会社としてシンガー・ソーイング・マシンSinger Sewing Machine Co.(SSMC)を設立。1907年に最大のライバル企業ウィーラー・アンド・ウィルソンWheeler & Wilsonを買収して、世界一のミシン・メーカーとなった。

[奥村皓一]

多角化時代

第二次世界大戦後、内外での買収による多角化志向を強め、1963年5月社名をシンガーに変更した。かつて世界のミシン業界で圧倒的優位を誇っていたシンガーは、1960年代以降は外国ミシン・メーカーとの競争で業績が悪化、コングロマリット合併ブームのなかで、多角化による「脱ミシン」を目ざすこととなる。1980年代までに、航空宇宙・船舶向け航行・誘導システム、模擬飛行装置、船舶エレクトロニクス・システム、大型スクリーン・ディスプレー装置、電子信号処理システム、通信端末装置、自動車部品、シアーズ・ローバック向けの電動工具へと生産分野を広げ、寝室・食堂家具、OEM販売の電子機器、制御装置、冷暖房器具、家庭用ガスメーター、さらには教育機器へと生産を広げた。

 とくに1960年代は多くの高度専門技術企業を買収したが、最大の買い物は事務機器メーカーのフライデン(1963)であり、これはシンガーのコンピュータ進出を意味した。1968年にはエレクトロニクス多角企業のゼネラル・プレシジョンを買収し、航空宇宙やハイテク部門への進出を早めた。1970年代初期には、建設や不動産部門にまで買収の手を広げた。だが、コングロマリット合併の反動はすぐに表れ、1976年には事務機器部門のほとんどを売却。1977年に住宅関連も分離売却してリストラクチャリングを断行した。1970年代末になるとミシン部門の市場飽和で、スコットランドやニュー・ジャージーの工場が閉鎖に追い込まれることとなった。1981年、シンガーは航空宇宙・軍用エレクトロニクスの分野へと進出を開始し、飛行訓練機器メーカーのシミュフライト・トレーニング・インターナショナルを買収する一方、1982年には空調機器子会社や教育機器子会社を売却した。

[奥村皓一]

経営危機・破綻

1986年、シンガーは伝統のミシン・家具部門を子会社シンガー・ソーイング・マシン(SSMC)に統合分離することを決めた。1960年代のコングロマリット合併によって遂行した多角化も、軍用エレクトロニクス・航空宇宙機器を除いてほとんどが失敗に終わり、コアコンピタンス(競争優位分野)として伝統主力部門への回帰を図った。SSMCは、シンガー本社が15%の株式を保有したままスピン・オフ(分社化)したが、1989年、セミテック社Semi-Tech Co.により買収された。

 1987年末、企業買収家のホール・A・ビルゼリアン率いる投資会社がシンガー社の普通株全株の買収を申し入れ、1988年1月にはシンガー取締役会はこの投資会社との合併を承認。新たな経営体制の下で、新戦略が打ち出された。その基本路線は、主力の航空宇宙・エレクトロニクス部門を別会社とし、従来部門をシンガーブランドとして残す、という二分案であった。しかし1999年、かねてより抱えていた有利子負債に加え、1997年に買収したドイツのミシン子会社プファフPfaffの倒産が引き金となり、シンガーは連邦破産法による会社更生手続を開始した。

 シンガーミシンの最大の生産者であったシンガー日鋼(日本製鋼所とシンガーの折半出資)は、工業用ミシンを主力製品に生産してきたが、世界的な需要低迷、中国製の低価格ミシンの普及により、1998年(平成10)には最盛期の売上げの半分にまで落ち込んだ。米シンガー社が工業用ミシンからの撤退を決めたことから、シンガー日鋼は1999年11月に最終的に本社の宇都宮工場を閉鎖。家庭用の低価格ミシンで世界市場の4割をもつ香港シンガーもシンガー本社の倒産で生産を事実上停止した。2000年には大口買取り先のシアーズ・ローバックが、日本の蛇の目ミシン工業からの調達に切り替え、シンガー日鋼は同年8月に解散した。シンガーブランドの使用権をもつシアーズが、買取り先をシンガーとはライバル関係にある蛇の目ミシンに切り替えたことは、「20世紀はアメリカの時代」を演出してきたスター企業の一つであるシンガーの20世紀末における没落を意味していた。

 2004年、シンガーブランドとミシン事業は投資会社KSINホールディングスKSIN Holdings Ltd.に買収された。その後2006年には、他のミシン・メーカーと合併して創設された世界最大手ミシン・メーカー、SVPワールドワイドSVP Worldwideの一部となり、生産されている。

 日本での家庭用ミシンの営業はシンガーハッピージャパンが継承している。

[奥村皓一]

『D. C. BissellThe First Conglomerate ; 145 Years of the Singer Sewing Machine Company(1999, Biddle Publishing)』


シンガー(Isaac Bashevis Singer)
しんがー
Isaac Bashevis Singer
(1904―1991)

アメリカの小説家。ポーランドに生まれる。1935年渡米後、イディッシュ語で創作を続け、その作品がほとんど英訳されている特異な作家。主として過去のポーランドのユダヤ村落の歴史や庶民を描く。『ゴライの悪魔』(1955)、『ルブリンの魔術師』(1960)、『奴隷』(1962)は、ユダヤ社会の正統的、異端的生き方の葛藤(かっとう)と救済の問題を扱い、『モスカト家の人びと』(1950)、『領地』(1967)、『資産』(1969)の連作長編は、ユダヤ教本来の強い伝統意識と近代的啓蒙(けいもう)思想の相克のなかで動揺しながら生きてゆく多数のユダヤ人の実像を詳細に描く。ナチスの迫害の悪夢から脱しきれない男の悲喜劇的状況を描いた『愛の迷路』(1972)、成人後も処女性を失わない純潔な女性に対する青年作家の献身を主題とする『ショシャ』(1978)、娼婦(しょうふ)の前歴をもつ一女性をめぐって展開する男女の愛欲図『ヤルメとカイレ』(1979)などは、いずれもヨーロッパとアメリカを舞台にした自伝的要素の濃い長編。ほかにユダヤ民話の語り口を活用して書かれた8冊の短編集、『愛を求める若者』(1978)など4冊の回想録、『恐怖の宿屋』(1967)ほか多数の児童書がある。78年、ポーランド・ユダヤ人の文化伝統に根ざし、普遍的人間条件に生命をもたらした感動的物語の芸術に対してノーベル文学賞が授与された。

[邦高忠二]

短編

シンガーには、『ばかものギンペル』(1957)、『市場通りのスピノザ』(1961)、『短い金曜日』(1964)、『カフカの友人』(1970)のほか、4冊の英語版短編集がある。もとはイディッシュ語で書かれたこれらの諸作品は、平凡な庶民の通用語の土俗的特質や、ユダヤ民話の屈折した語り口が生かされていて、素朴と深遠の独自な融合を示す佳編が多い。

 描かれる人物像は、たとえば底抜けに純真で、世間の欺瞞(ぎまん)すら疑うことを知らぬお人よし(「ばかものギンペル」)、スピノザ哲学に没頭して現実生活から遊離してしまう学者(「市場通りのスピノザ」)、実生活では無能そのもののユダヤ社会の精神的指導者(「短い金曜日」)、悪霊に取り憑(つ)かれ固有の伝統から逸脱し破滅に至る男女、過去の苦難の体験から心に深い傷を負い、現実と非現実の区別もつかずちぐはぐの人生を送る不幸な男(「カフカの友人」)などである。

 シンガーはこうした作品を通じて、神と悪魔、聖と俗、賢と愚、理性と情念など相反する価値の併存する状況を設定し、一種の唐突感、怪奇性、エロティシズムの漂う独自の世界を描出した。同時に巧妙な寓話(ぐうわ)や風刺の手法を駆使して、特殊な環境を生きる人間像に読者の共感を誘う生き生きとした普遍性を与えた。

[邦高忠二]

『田内初義訳『愛の迷路』(1974・角川書店)』『邦高忠二訳『短かい金曜日』(1971・晶文社)』『工藤幸雄訳『まぬけなワルシャワ旅行』(岩波少年文庫)』


シンガー(Isaac Merrit Singer)
しんがー
Isaac Merrit Singer
(1811―1875)

家庭用ミシンの実用化と月賦販売による普及に成功した企業家。アメリカのニューヨーク州に生まれる。若くして家を出て、約16年渡り職人として各地を放浪し続ける。1851年ボストンの工場で修理に持ち込まれた一種のミシンを見てその基本原理を知り、さらに改良を加え、鋸歯(きょし)状の布自動送り装置を備えたミシンの特許をとる。すでに特許を得ているE・ハウのものと比べて多くの機能を備えた最初の本格的ミシンであった。1851年エドワード・クラークEdward Clark(1811―1882)と共同でI・M・シンガー社を設立、1860年には世界最大のミシン会社となる。1854年にミシンの基本特許をもつハウに特許侵害で訴えられ敗訴するが、使用料を支払うことで決着した。彼の工場は互換性部品による大量生産方式をとり、販売には割賦制度を導入するなど、生産、販売の両面で新機軸を開いた。

[篠原 昭]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「シンガー」の意味・わかりやすい解説

シンガー
Singer, Isaac Bashevis

[生]1904.7.14. ポーランド
[没]1991.7.24. フロリダ
アメリカの小説家。父がユダヤ教の一派で神秘的色彩の濃いハシディズムのラビであり,彼の作品にもその思想がみられる。 1935年渡米,『ジューイッシュ・デーリー・ホワード』の記者となり,主として同紙にイディシュ語で小説を発表した。ポーランド系ユダヤ人の寓話的,幻想的民話を利用し,伝統と反伝統,善悪,肉体と霊魂などの二元的対立を描くその作品は,英訳されて英語圏でも高い評価を得ている。処女作は 34年執筆の『ゴレイの悪魔』 Satan in Goray (1955英訳,以下同) であるが,S.ベローが英訳 (53) した短編「ギンペルの悪魔」によって認められた。おもな作品は,19世紀のポーランドを舞台に,ユダヤ教の伝統と近代思想の相克に悩むカルマン一家を扱う大河小説『荘園』 The Manor (67) および『土地』 The Estate (70) をはじめ,『ルブリンの魔術師』 The Magician of Lublin (60) ,『神を捜す少年』A Little Boy in Search of God (76) ,短編集『カフカの友』A Friend of Kafka (70) ,『情熱』 Passions (74) など。ほかに『なぜノアは鳩を選んだか』 Why Noah Chose the Dove (74) など 10冊あまりのすぐれた児童向けの小説や自伝,戯曲がある。 78年ノーベル文学賞受賞。

シンガー
Singer Company

アメリカ合衆国ミシンメーカー。1850年実用ミシンの製作に成功した発明家のアイザック・シンガーが,1851年 E.クラークと結んで設立した I.M.シンガーがその前身。1863年シンガー・マニュファクチュアリングとして設立,1963年シンガーとなる。下取り制度,月賦販売制度などを早くから確立してミシン業界のトップメーカーとなった。しかし第2次世界大戦後は技術革新の波に適応できず,日本のミシンメーカーに押されて業績が停滞。1950年末頃から業績立て直しのための脱ミシン路線がとられ,家具,ステレオ,電動工具,編機,冷暖房機,レコードなどを手がけ始めた。1963年に事務機メーカーのフリーデン,1968年には軍事・宇宙開発会社のゼネラル・プレシジョンを買収し,新たな分野に進出,事務機器ほか事業部門の整理・統合を進めた。2004年ミシン事業とブランドが投資会社 KSINホールディングスに買収され,2006年には SVPワールドワイドの傘下ブランドとなった。

シンガー
Singer, David J.

[生]1925.12.7. ニューヨーク,ブルックリン
アメリカの国際政治学者。デューク大学を卒業,1956年にニューヨーク大学から博士号を取得。ニューヨーク大学,バッサー・カレッジで教えたあと,58年ミシガン大学に移り,65年同大学政治学部教授。『コンフリクト・リゾリューション』誌,『ワールド・ポリティックス』誌その他の学会誌に精力的に寄稿して,国際政治学に数量分析,数理的手法を導入する機運を盛上げる一方,分析レベルの問題を提起して国際政治学研究の混乱を正そうとした。"Financing International Organization" (1961) ,"Deterrence,Arms Control,and Disarmament" (62) ,"Human Behavior and International Politics" (65) などが代表的著述。

シンガー
Singer, Isaac Merrit

[生]1811.10.27. ニューヨーク
[没]1875.7.23. イングランド,デボンシャー
アメリカの発明家,企業家。 19歳で機械工となり,1839年削岩機,49年金属木工用機械の特許を取得。 51年さらに自動推進機構をもつ裁縫機械を開発,特許をとる。 73年ニューヨークの富豪で法律家の E.クラークと協力してシンガー・マニュファクチュアリングを設立,実用裁縫機械,家庭用ミシンの製造販売を始めた。直販や月賦販売など新しい方式を取入れた販売政策が成功し,販路を海外に拡張,世界最大のミシン製造会社となった。 20世紀初めにはシンガーミシンは世界中で使用されるようになった。

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改訂新版 世界大百科事典 「シンガー」の意味・わかりやすい解説

シンガー
Isaac Merrit Singer
生没年:1811-75

アメリカの機械発明家。ニューヨーク州の機械修理工の家に生まれる。12歳のとき家を出,各地を16年間にわたって放浪し,機械工としての技術を身につける。1839年削岩機についての特許を取得。49年木材や金属の切削機械の特許取得。51年ボストンの機械工場で働いていた際に,たまたまもちこまれたミシンの修理に従事し,その後ミシンの改良・開発に没頭。同年8月には特許を取得し,友人から資金を借り,I.M.シンガー社を設立。ミシンの基本的機構の発明者であるE.ハウに特許料の支払を求められたが拒否し,訴訟となる。54年に敗訴するが,このときにはシンガーのミシン製造は技術的にも企業的にも大きく成長し,揺るがぬ地位を確保していた。シンガーは1851年から63年の間に20の特許権を取得し,それらは運針のときに布をばねで押さえる装置,踏板による回転運動,ハート形のカムによる針の上下動などその後のミシンの構造の基礎となるものであった。また,互換式大量生産という生産システムや,割賦販売の導入などを通じて,ミシンを世界に広めていった。晩年は会社設立当時の出資者の一人であるE.クラークに経営をまかせ,イギリスで余生を送った。
執筆者:


シンガー
Issac Bashevis Singer
生没年:1904-91

アメリカの小説家。ユダヤ人ラビの子としてポーランドに生まれる。ワルシャワで文筆生活の後,1935年アメリカに亡命,イディッシュ語新聞《フォワード》の編集のかたわら同紙に小説を発表。53年《ギンペルの馬鹿》がソール・ベローによって英訳され,注目をあびた。作品はすべてイディッシュ語で書かれ,古いポーランドのユダヤ人村落を題材にしたものが多く,聖と俗,現実と幻想の交錯する悪魔的な官能の世界を描き,愛と信仰の問題を追究している。土俗的なユーモアに満ちた民話風の語り口は無類といってよく,現代イディッシュ文学の頂点をなす。《ゴライの悪魔》(1955),《敵,ある愛の物語》(1972)などのほか,短編集《短い金曜日》(1964),自伝《父の法廷にて》(1966)など作品は多い。78年ノーベル賞受賞。
執筆者:


シンガー
Charles Joseph Singer
生没年:1876-1960

イギリスの科学史家。ロンドンのユニバーシティ・カレッジで教育を受け,その後,科学史のうちでも,とくに生物学史と医学史を専攻した。アメリカに移住していたG.サートンとも親交があった。国際科学史アカデミー会長,イギリス科学史学会会長などを歴任した。医学史や科学史の論文以外に著作も多く,4種の小史といわれる《解剖学の発展》(1925),《医学小史》(1928,62年増補改訂),《生物学小史》(1931),《科学思想のあゆみ》(1959,62年増補改訂)をはじめ,《魔法から科学へ》(1928)などがあり,大著《技術の歴史》5巻(1954-58)の編者でもある。
執筆者:

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百科事典マイペディア 「シンガー」の意味・わかりやすい解説

シンガー

ポーランド生れのユダヤ人作家。1935年にアメリカへ移住したが,東欧のユダヤ人の言語であるイディッシュ語で書き続けた。1953年,《ギンベルの馬鹿》をS.ベローが英訳して注目された。故郷ポーランドのユダヤの伝説に基づいた象徴的,神秘的な物語や,過去の失われたユダヤ人共同体を描き,代表作に短編集《短い金曜日》(1964年),《ゴーライの悪魔》(1955年),自伝《父の法廷にて》(1966年)などがある。イディッシュ語文学史上,最後の頂点をなす作家といわれる。1978年ノーベル文学賞。

シンガー[会社]【シンガー】

世界的なミシン会社。1851年シンガーがI.M.シンガー社を米国に設立。割賦・下取販売方式で,第1次大戦後まで世界のミシン市場を席巻した。一時消極策をとったが,第2次大戦後は家庭電器・事務機器などに積極的に多角化を進めた。1963年現社名に変更。海外にも数多くの工場をもち,その販売網は150ヵ国以上に及んだ。1997年,ドイツのミシンメーカーPfaff社を傘下に収め,欧州での地盤を強化。1999年9月,連邦破産法に基づき破産を申請。大幅な人員整理と低賃金地域への工場移転などを行った。

シンガー

米国の発明家,企業家。ドイツ系移民の子で,初め機械工。1851年,在来の裁縫機械の欠点を改良した新式ミシンを発明,シンガー会社を設立。互換方式による大量生産,割賦販売で成功した。
→関連項目ミシン

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世界大百科事典(旧版)内のシンガーの言及

【科学史】より

…したがって,科学の特権性を過去の歴史のなかに跡づけ,あるいはそうした体系の部分的な一片一片を,他の文化圏の歴史のなかに発見するという,データ探しが,19世紀の動きを受けついだ20世紀前半の重要な学問上の目標となった。 ベルギーに生まれ,1915年からアメリカに渡ったG.サートンの大著《科学史序説》(1927‐47),ドイツのF.ダンネマンの《大自然科学史》(1910‐13),あるいはフランスのP.タンヌリーの《科学史論集》(1912‐50),イギリスのC.シンガーの一連の著作活動など,いずれも百科事典的な浩瀚(こうかん)な内容をもつもので,データの集積作業であった。それとともに,科学史はこの時期に学問としても制度化されはじめ,サートンが1912年に創刊した論文誌《アイシスIsis》は,アメリカ科学史学会(1924設立)の機関誌として今日に至っており,国際的にも最も権威ある学会誌の一つになっている。…

【イディッシュ文学】より

…これらのいわゆる古典的三大作家の影響を受け,多数の有能な若手作家が輩出し,1860年代から第2次大戦前までの期間,イディッシュ文学はリトアニア,ポーランド,ニューヨークにおいて黄金時代を迎える。小説分野ではユダヤ性の本質を重視したD.ピンスキ(1872‐1959),悪漢,殉教者,転向者など多様な登場人物を作品化したS.アッシュ(1880‐1957),壮大な規模の社会小説を手がけ,アメリカ亡命後はイディッシュ演劇界にも大きく寄与したI.J.シンガー(1893‐1944),ユダヤ底辺層の道徳的崩壊やローマによる神殿破壊時の民族指導層が陥る苦境を克明にたどったJ.オパトシュ(1886‐1954)などが顕著な活動の担い手だった。 演劇方面では,ゴールドファデンAbraham Goldfaden(1840‐1908)が,1876年に初めて一般民衆を対象にしたイディッシュ劇場をルーマニアに創立し,ゲットー生活に染みついた迷信や愚行を風刺する軽歌劇からシオニズム志向の歴史劇に至る諸戯曲の創作・演出に従事し,大衆の娯楽や教養の水準を高めた。…

【児童文学】より

…ほかに歴史小説のスピアE.G.Speareや冒険小説のオデルS.O’Dellがいるが,なんといっても近年のアメリカのリアリスティックな作品を特徴づけるのは,多民族国家アメリカの少数民族の経験を核にしたさまざまの作品である。ユダヤ人のカニグズバーグE.L.Konigsburg,I.B.シンガー,黒人のハミルトンH.Hamiltonがすぐれ,ほかにフォックスP.Fox,ボイチェホフスカM.Wojciechowskaらが問題作を書いている。
[旧ソ連邦]
 かつてロシアでは,A.S.プーシキンが民話に取材して《金のニワトリ》(1834)などを書き,エルショフP.P.Ershovが《せむしの小馬》(1834)を作り,I.A.クルイロフはイソップ風の寓話を,V.M.ガルシンは童話的な寓話を書いたが,いずれも権力に刃向かう声であった。…

【ミシン】より

…またアメリカのハウElias Howe(1819‐67)はハントのものによく似たミシンを発明し,46年に特許をとった。50年I.M.シンガーは今日のミシンの基本的な構造を備えたミシンを発明し,51年に特許をとり,I.M.シンガー社(シンガー社)を設立した。グローバーWilliam O.GroverとベーカーWilliam E.Bakerは51年,2本糸による環縫いミシンを完成させ,グローバー・ベーカー社を設立した。…

※「シンガー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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