ナチスによるユダヤ人大量虐殺(ホロコースト)を教訓に1948年の国連総会で採択。人種、民族、宗教などが異なる集団を破壊する目的で行われる殺害や迫害をジェノサイドと定義、国際法上の犯罪であるとして、防止と処罰を各国に求めた。処罰対象は実行行為者のほか共同謀議や教唆に関与した者も含む。ほとんどの先進国、主要国を含む約150カ国が締結しているが、日本は一部の処罰対象が国内法と整合しないとの理由で未締結。(ハーグ共同)
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「集団殺害罪の防止および処罰に関する条約」の略称。ジェノサイドはギリシア語と英語の合成語で、集団殺害を意味する。第二次世界大戦中、ナチス・ドイツによってユダヤ人の大量虐殺が行われ、戦後に国際軍事裁判所による「人道に対する罪」を犯した犯罪人の処罰をもたらしたが、この条約は、このような非人道的行為の防止と処罰を一般的に制度化しようとするものである。1948年12月、国連総会で全会一致によって採択され、51年1月に発効した。1998年現在、アメリカ、ロシア、イギリス、中国、フランスを含む129か国が当事国になっているが、わが国はこれに加入していない。
この条約は集団殺害を国際法上の犯罪とする。条約によれば、「国民的、民族的、人種的または宗教的集団の全部または一部を破壊する意図」をもって行う集団構成員の殺害、肉体的または精神的な重大な加害、肉体的破滅をもたらす意図による生活条件の強制、出生防止措置、児童の強制移住はすべて集団殺害とされ(第2条)、このような行為、その共同謀議、教唆、未遂、および共犯は、平時たると戦時たるとを問わず、処罰されるべきものとされている(第1条、第3条)。そのために当事国は国内立法を行う義務を負う。行為地の国内裁判所のほかに、条約は国際刑事裁判所による国際的手続での処罰をも構想しているが、実際にこの裁判所の設立は容易ではなかった。しかし、1994年に国連国際法委員会の作成した国際刑事裁判所規程草案に基づき、98年ローマで開かれた政府間外交会議で、同裁判所の設立条約および裁判所規程が採択された。この規程で「集団殺害罪」は、裁判の対象犯罪の第一にあげられている。
[石本泰雄]
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(宮崎繁樹 明治大学名誉教授 / 2008年)
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特定の国民,人種,民族,宗教集団の絶滅を目的とするジェノサイド(集団殺害)を禁止した条約。集団殺害の行為者のみならず,共同謀議,教唆,共犯も国内裁判所または国際刑事裁判所で審理,処罰される。第二次世界大戦前から戦中にかけてナチス・ドイツの行ったユダヤ人大量虐殺の反省にもとづく「人道に対する罪」をもとに条約化された。1948年国連総会で採択,51年発効。
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…決議は,ジェノサイドを国際法上の犯罪と述べるとともに,経済社会理事会に対して条約案起草のための研究を要請した。48年12月に国連総会は,〈集団殺害罪の防止および処罰に関する条約〉(通称,ジェノサイド条約)を採択した(1951年1月発効)。
[ジェノサイド条約]
ジェノサイド条約では,ジェノサイド(集団殺害)を,特定の国民的,人種的,民族的,宗教的集団を全部または一部破壊する意図をもって,(1)集団構成員を殺し,(2)重大な危害を加え,(3)肉体的破壊をもたらす生活条件を故意に課し,(4)集団内の出生防止措置を課し,(5)集団の児童を他の集団に強制的に移すこと,と規定している(2条)。…
… 他方,〈人道に対する罪〉は伝統的な〈戦争犯罪〉と重複する点が多く,国際連合総会もニュルンベルク諸原則の確認と同時に,集団殺害(ジェノサイド)が文明世界の非難する国際法上の犯罪である旨の決議を採択した。さらに総会は1948年に〈集団殺害の防止と処罰に関する条約(ジェノサイド条約)〉を採択し,国民的,人種的,民族的または宗教的集団を破壊する目的で構成員を殺害したり,彼らに重大な肉体的・精神的苦痛を加えるなどの行為の実行者,未遂者,教唆者等の処罰を規定した。また総会は68年に〈戦争犯罪及び人道に対する罪に対する時効不適用に関する条約〉を採択したが,西ドイツもまた79年には謀殺罪の公訴時効廃止に踏み切り,それ以前から国内法で追及してきたユダヤ人虐殺の荷担者たちを永久に訴追しうる道を開いた。…
※「ジェノサイド条約」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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