ジオーク(読み)じおーく(英語表記)William Francis Giauque

デジタル大辞泉 「ジオーク」の意味・読み・例文・類語

ジオーク(William Francis Giauque)

[1895~1982]米国の物理化学者。絶対零度に近い極低温を得るための断熱消磁法を発明し、極低温下の原子運動を研究した。また酸素同位体発見。1949年、ノーベル化学賞受賞

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精選版 日本国語大辞典 「ジオーク」の意味・読み・例文・類語

ジオーク

(William Francis Giauque ウィリアム=フランシス━) アメリカの物理化学者。カリフォルニア大学教授。絶対零度に近い低温における原子の運動を研究。原子量一七、一八の酸素の同位体を発見。断熱消磁法の発見とその最初実験に成功した。一九四九年ノーベル化学賞を受賞。主著「量子力学入門」。(一八九五‐一九八二

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ジオーク」の意味・わかりやすい解説

ジオーク
じおーく
William Francis Giauque
(1895―1982)

アメリカの物理化学者。絶対零度近くまで温度を下げることができる「断熱消磁法」の発明で知られる。カナダのオンタリオ州ナイアガラ・フォールズで生まれる。1920年アメリカのカリフォルニア大学を卒業したのち、同大学の化学講師、同助教授、準教授を経て、1934年教授となる。1927年常磁性塩の断熱消磁によって絶対零度に近い温度が得られることを提案した。これは、極低温に冷却した常磁性塩に数万ガウスの強い磁場をかけ、磁気モーメントの方向をそろえることでエントロピーを減少させたのち、この磁場を断熱的に取り除くことにより磁性体の温度をいっそう降下させることが可能となるというもので、この説は1926年にデバイによっても独立提唱された。のちにジオークはこの考えが正しいことを希土塩類を用いて実証し、0.1Kから0.01K以下の低温を得ることに成功、熱力学第三法則の実験的研究などに大きく貢献した。1949年極低温における物質の諸特性の研究に対する功績でノーベル化学賞を受賞した。

 一方、1929年ジョンストンHerrick L. Johnston(1898―1965)とともに、酸素の760ナノメートルの吸収帯に隣接した弱い吸収帯が、原子量18および17の酸素同位元素と関係があることを理論的に明らかにし、これら同位元素の存在を初めて確認した。

[常盤野和男 2018年8月21日]

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化学辞典 第2版 「ジオーク」の解説

ジオーク
ジオーク
Giauque, William Francis

カナダ生まれのアメリカの物理化学者.1920年カリフォルニア大学バークレー校を卒業後,同校に残り,1934年教授となり,1962年に引退.生涯をバークレーで過ごした.1926年P.J.W. Debye(デバイ)とは独立に,ほぼ同時に断熱消磁の熱力学的考察を発表した.すなわち,極低温下の常磁性塩に強い磁場をかけて磁気モーメントを偏極させた後,磁場を断熱的に取り除くことで,さらに低い温度が得られることを結論し,実際に液体ヘリウム中で1 K に冷却した希土類塩の断熱消磁により1 K 以下の低温(0.53 K)を得た.また,1929年には酸素の吸収帯に近接したきわめて弱い帯が16O18Oおよび16O17Oによることを理論的に証明し,酸素の同位体の存在をはじめて確認した.化学熱力学,とくに極低温での物質の挙動に関する研究で,1949年ノーベル化学賞を受賞した.

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百科事典マイペディア 「ジオーク」の意味・わかりやすい解説

ジオーク

米国の物理化学者。カリフォルニア大学を出,1934年同大教授。1926年デバイとは独立に,断熱消磁により絶対0度に近い低温(極低温)が得られることを示し,熱力学の第三法則(熱力学の法則)の検証にも貢献。1929年H.L.ジョンストンとともに酸素の同位元素17O,18Oを発見。1949年ノーベル化学賞。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ジオーク」の意味・わかりやすい解説

ジオーク
Giauque, William Francis

[生]1895.5.12. カナダ,ナイアガラフォールズ
[没]1982.3.28. アメリカ合衆国,カリフォルニア,バークリー
アメリカ合衆国の物理化学者。1922年カリフォルニア大学で学位取得後,同大学化学講師を経て,1934年同大学教授。1926年断熱消磁法による超低温生成の理論を提唱,1935年に D.マクドーガルとともに実証,極低温物理学に新局面を開いた。また熱力学第三法則の実験的基礎を確かめたことでも知られる。1929年酸素の同位体を発見した。1949年ノーベル化学賞受賞。

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