ジャガー(英語表記)jaguar
Panthera onca

精選版 日本国語大辞典 「ジャガー」の意味・読み・例文・類語

ジャガー

〘名〙 (jaguar) ネコ科哺乳類。体長一・二~一・八メートル、尾長四五~七五センチメートル。ヒョウに似ているが斑紋がやや異なり、体形ががんじょうで頭が大きく尾が短い。ふつう黄褐色の地に黒色の大きな輪紋があり、体側の輪紋には中に小黒点がある。黒色形もある。単独で行動し、泳ぎ・木登りともに巧みだが、狩りは地上でおこない、おもに中~大形の草食獣捕食。アメリカ合衆国南西部から中南米南米のアルゼンチン北部にかけての森林や草原に生息。アメリカヒョウ。アメリカトラ。

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デジタル大辞泉 「ジャガー」の意味・読み・例文・類語

ジャガー(jaguar)

ネコ科の哺乳類。ヒョウに似るが、全体にずんぐりとして頭が大きく、斑紋も大形で、尾はやや短い。メキシコから南アメリカにかけての森林にすむ。アメリカひょう。アメリカとら
[類語]獅子ライオン猛虎ピューマチーター

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改訂新版 世界大百科事典 「ジャガー」の意味・わかりやすい解説

ジャガー
jaguar
Panthera onca

ヒョウに似た大型肉食獣。食肉目ネコ科の哺乳類。アメリカ合衆国南西部から中央アメリカを経て,アルゼンチン北部まで分布する。アメリカ大陸に生息するネコ科動物中最大で,体長112~185cm,尾長45~75cm,体重36~158kg。ヒョウに比べると平均的には大型で,四肢と尾が短く,頭部が大きいので,ずんぐりしている。体色は変化に富み,淡い黄色から赤みの強い黄色や赤褐色まであり,全体にヒョウのような黒い斑紋がある。ただし,肩から背,わき腹にかけての斑紋はウメの花状の大きな輪となり,その中央に一つ,あるいはそれ以上の黒点があるので,ヒョウのそれとは容易に区別できる。ときに地色が黒褐色で斑紋がほとんど目だたない黒色型のものや,色素を欠く白色型のものも知られる。

 ジャガーは深い森林の水辺を好むが,草原などの開けた場所にもふつうで,荒れ地や砂漠でも生息する。泳ぎと木登りは非常に巧みだが,狩りはほとんど地上で行う。主食はカピバラペッカリーだが,バク,ナマケモノ,アリクイ,サル,シカなどを襲い,倒した獲物は物陰に引きずり込んで食べる。ワニの類のカイマンやカメやその卵も食べ,魚もとらえる。ふだんは単独で生活し,ブラジル南西部では25km2に1頭の割りで生息する。雌の行動圏は25~38km2で,隣の個体の行動圏と重なり合っており,雄のはほぼ2倍で,数個体の雌の行動圏が重なっている。なわばりの標識として尿や,うなり声,鳴声といった各種の音声が用いられる。

 繁殖期は不定であるが,分布地域の北部においては通常春に交尾が行われる。妊娠期間は93~105日で,1腹1~4子である。誕生直後の子の体重は700~900gで,目は13日後に開き,約2年間は母親とともに過ごす。3~4年で成獣とほぼ同大となり,性的にも成熟する。野生での生態,行動などはよく知られず,寿命は飼育下で22年という記録がある。
執筆者:

中央アメリカのオルメカ文化,南アメリカのチャビン文化の石彫からうかがえるように,ジャガーの属性を神格化し,また宗教・呪術的図像表現にとり入れることが,非常に古くから行われてきた。現在のアマゾン・オリノコ熱帯低地に伝わる神話の中でもジャガーは重要である。ジェー語系の民族起源神話によれば,人間はジャガーから火を手に入れ,料理をするようになったとされている。このようにジャガーによる観念表象は,中央および南アメリカにおいて,時代と地域を超えた普遍性もち,広く畏敬対象とされてきた。
執筆者:


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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ジャガー」の意味・わかりやすい解説

ジャガー
じゃがー
jaguar
[学] Panthera onca

哺乳(ほにゅう)綱食肉目ネコ科の動物。アメリカヒョウ、アメリカトラともいい、アメリカ合衆国南西部から中央アメリカを経てアルゼンチン北部までの川や沼地の近くの密林に生息する。体長1.1~1.8メートル、尾長45~75センチメートル、体重70~150キログラム。体が黒色あるいは白色のものもあるが、普通、地色は黄色で腹面は白い。ヒョウに似た黒斑(こくはん)があるが、斑紋は大きく、中に小さな黒点がある。単独で生活し、おもに夜行性で、泳ぎや木登りがうまい。乾燥地帯にはすまず、水辺で小形齧歯(げっし)類、アグーチ、カピバラ、ナマケモノ、サル、バク、ペッカリー、シカ、鳥、ワニ、カメとその卵、カエル、魚などを捕食する。一定の縄張り(テリトリー)をつくり、食物が豊富な所ではそれは直径5~25キロメートルである。分布の北にすむものは妊娠期間93~110日で、1月に2~4子を産むが、熱帯地方のものの出産時期は一定していない。子は2年間雌親と過ごし、3歳で性成熟する。寿命は飼育下で22年ほどである。

[今泉忠明]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ジャガー」の意味・わかりやすい解説

ジャガー
Panthera onca; jaguar

食肉目ネコ科。体長 170cm,尾長 80cm,体重 100kg内外。ヒョウに似ているが,体はがんじょうで,尾も短く体の半分以下。全身黄褐色の地に黒色のリング状の斑があり,大型の斑には中心にさらに斑点がある。サルをはじめとする哺乳類,カメ,ワニなどの爬虫類,魚類などを捕食する。北アメリカ南部,中央・南アメリカに分布し,水辺の森林にすんでいる。

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百科事典マイペディア 「ジャガー」の意味・わかりやすい解説

ジャガー

アメリカヒョウとも。食肉目ネコ科の哺乳(ほにゅう)類。体長112〜185cm,尾45〜75cmほど。体色は普通,黄褐色だが,ほとんど白色から黒色まで変異がある。ヒョウに似た黒斑をもつ。南・北米に分布。多くは森林にすみ,木登りと泳ぎがうまいが,獲物はふつう地上でとる。おもにペッカリー,シカ,ナマケモノ,サルなどを食べる。普通,単独で生活し,1腹2〜4子。まれに人食いとなるものがある。

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デジタル大辞泉プラス 「ジャガー」の解説

ジャガー

日本のポピュラー音楽。歌は男性歌手、西城秀樹。1976年発売。作詞:阿久悠、作曲:三木たかし。

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世界大百科事典(旧版)内のジャガーの言及

【ネコ(猫)】より

…【村下 重夫】。。…

【太陽】より

…するとアナル族の人たちは天の牝犬に向かって,〈放してやれ,放してやれ〉とどなる。日食や月食が超自然的なネコ科動物,ふつうジャガーが襲うため生ずるという信仰は,南アメリカの諸民族(ユラカレ,モホ,チキート,グアラニ,インカなど)に分布している。 日食や月食が,太陽や月が病気になったり,気絶したり,死んだために生ずるという民族は,スマトラのミナンカバウ族,アフリカのコイ・コイン,南アメリカのアラチカノ族などの例がある。…

【ネコ(猫)】より

…体色も変異が著しく,灰色のコロコロ(パンパスキャット)Felis colocolo,灰褐色のジャングルキャットF.chaus,褐色のマライヤマネコF.planiceps,金色をおびた褐色のアフリカゴールデンキャットF.aurata,赤褐色のヤガランデF.yagouaroundiまであり,白色型のライオンP.leoや黒色型のヒョウ(クロヒョウ)P.pardusなども知られている。褐色や黒色の斑紋をもつものが多く,トラのような縞模様,ジャガーP.oncaなどのような梅花状の大きな斑紋,チーターAcinonyx jubatusなどのような黒点があり,それぞれまったく別のもののように見えるが,黒点がつながって縞模様や梅花状斑紋が形成されたものである。ネコ類の体色と斑紋は,獲物に接近する際のカムフラージュに役だつと考えられている。…

※「ジャガー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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