ストリキニーネ(英語表記)strychnine

翻訳|strychnine

デジタル大辞泉 「ストリキニーネ」の意味・読み・例文・類語

ストリキニーネ(〈オランダ〉strychnine)

マチンの種子ホミカなどに含まれるアルカロイドの一種。無色の針状結晶で、猛毒。硬直痙攣けいれんを起こさせるが、微量では神経の興奮剤となる。ストリキニン

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精選版 日本国語大辞典 「ストリキニーネ」の意味・読み・例文・類語

ストリキニーネ

  1. 〘 名詞 〙 ( [オランダ語] strychnine ) ホミカに含まれるアルカロイドの一つ。無色針状結晶で水に溶けにくい。血管、呼吸中枢を興奮させ、脊髄の反射機能を亢進する。興奮剤、強心剤、分析用試薬として用いられたが、現在では治療にはほとんど用いない。ストリキニン。
    1. [初出の実例]「山田某と偽名して劇薬ストリキニーネを買入しが」(出典:東京朝日新聞‐明治三八年(1905)七月七日)

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改訂新版 世界大百科事典 「ストリキニーネ」の意味・わかりやすい解説

ストリキニーネ
strychnine

マチン属Strychnos植物中に含まれる中枢神経興奮作用を現すアルカロイドで,毒薬。ストリキニンともいう。現在はマチンS.nux-vomicaの種子,馬銭子(まちんし)(ホミカともいう)から抽出し,硝酸塩として精製される。強力な痙攣(けいれん)毒で,イヌに飲ませた場合,0.47mg/kgの用量で痙攣を起こさせ,1.2~3.9mg/kgで痙攣死する。ストリキニーネの最も著明な薬理作用は脊髄の反射機能を亢進させることで,わずかの知覚刺激によっても強度の筋収縮を生じさせる。動物に大量投与した場合,脊髄反射機能の亢進によって全身の筋肉に特有の強直性痙攣を起こし,呼吸麻痺または循環障害により死亡する。ヒトの中毒量は個人差が大きく,とくに年少者は感受性が高いといわれる。中毒の際,多くの場合,意識は比較的明確で,患者の苦痛は大きい。大脳皮質の刺激感受性を高め,視覚,嗅(きゆう)覚,味覚および聴覚を鋭敏にする。本品はひじょうに苦く,舌の鋭敏な人は40万倍の希釈液でも苦みを感ずるという。

 脊髄反射の機能亢進の作用機序は,脊髄の運動神経を直接興奮させるのではなく,脊髄の興奮性を通常は抑制的に調節している神経を抑制し,結果的に興奮させるという複雑な機構によるものであることがわかっている。

 薬理学の研究用の試薬としては重要性が高いが,致死量と薬効量が近いので,ほとんど治療には用いられない。手術時のショック麻酔薬による中毒,脳出血後の麻痺,視力障害に用いることがある。本品を誤って服用したときの処置として,過マンガン酸カリウム液による胃洗浄,およびエーテルバルビツレート中枢性筋弛緩薬による対症療法を行う。
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化学辞典 第2版 「ストリキニーネ」の解説

ストリキニーネ
ストリキニーネ
strychnine

ストリキニンともいう.C21H22N2O2(334.41).フジウツギ科Strychnos nux-vomicaの種子(まちんし,馬銭子)に含まれるインドールアルカロイドの一種.ジメトキシ誘導体のブルシンとともに得られる.融点268 ℃.-139°(クロロホルム).1.36.pKa1 8.0,pKa2 2.3(20 ℃).UVλmax 254,278,288 nm(log ε 4.10,3.63,3.53エタノール).水,エーテル,冷エタノールに難溶.猛毒で中枢神経を刺激し興奮させる.さらには特有の硬直性けいれんを起こし,死に至らせる.ヒトに対する致死量30~100 mg.神経興奮薬として病後の回復に,あるいは消化器機能不全の治療に用いる.[CAS 57-24-9]

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ストリキニーネ」の意味・わかりやすい解説

ストリキニーネ
すとりきにーね
strychnine

インド(ベンガル、マラバル)、スリランカ、マレー半島、ベトナム、オーストラリアに産するマチン科(APG分類:マチン科)のマチン(馬銭)Strychnos nux-vomica L.の種子ホミカ(馬銭子(まちんし))に含まれるアルカロイド。ストリキニンともいう。ピクロトキシン、ニコチンとともに三大けいれん毒の一つで、過量投与により強直性けいれんをおこす。毒薬。硝酸ストリキニーネとして種々の薬物中毒、手術時や出血時のショックに中枢神経興奮剤として用いられたが、現在では薬理学の研究用試薬として使われることはあるが、治療にはほとんど使用されていない。

[幸保文治 2021年5月21日]

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百科事典マイペディア 「ストリキニーネ」の意味・わかりやすい解説

ストリキニーネ

化学式はC21H22O2N2。ストリキニンとも。フジウツギ科植物マチンなどに含まれるアルカロイド。硝酸塩は無色針状晶または白色結晶性粉末で興奮薬として用いる。血管および呼吸中枢に対して興奮作用を有し,視覚や他の知覚を鋭敏にする。また非常に苦いため苦味健胃薬の作用をもつ。手術時の出血による虚脱や急性アルコール中毒,夜尿症などに適用。中毒すると過敏症,強直性痙攣(けいれん)などの症状を呈する。毒薬。
→関連項目マチン

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世界大百科事典(旧版)内のストリキニーネの言及

【強精剤】より

…性交不能症には種々の形が含まれるが,陰茎の勃起不能または不完全を改善する目的の薬物を最も直接的に強精剤とよぶ。生薬成分由来のヨヒンビンとストリキニーネがまずあげられるが,ストリキニーネは一般的な興奮が強すぎる点,強力な毒物である点から使用はきわめて危険である。ヨヒンビンはヨヒンベ皮中に含まれるアルカロイドであるが,生殖器末梢の血管を拡張させることと,腰髄の勃起中枢へ作用することによって陰茎の勃起を促す。…

【興奮薬】より

…痙攣は,はじめ間代性痙攣で,作用が強くなると強直性痙攣に移行する。(4)脊髄興奮薬 中枢興奮薬は一般に脊髄に対しても興奮作用を有するが,ストリキニーネはとくに脊髄作用の強い中枢興奮薬である。脊髄において知覚神経と運動神経の連絡により構成される反射弓の抵抗を減少させて神経インパルスの伝達を促進させる。…

【催淫薬】より

… 催淫薬は,大別して直接陰茎の勃起を起こす薬物と,中枢の精神的抑制を解除して間接的に勃起を促す薬物とに分けられる。直接的な薬物としては,まず生薬由来のストリキニーネとヨヒンビンがあげられる。しかしストリキニーネは一般的な興奮が強すぎること,また強力な痙攣(けいれん)毒であることから,その使用はきわめて危険である。…

【マチン】より

… マチンの種子を生薬ではホミカ,馬銭子(まちんし),蕃木鼈(ばんぼくべつ)という。1.5~5%のアルカロイド,ストリキニーネやブルシンbrucineなどを含む。これらは中枢神経を興奮させ,中毒すると全身筋肉の強直性痙攣(けいれん)で,背反して死に至る(致死量は0.03~0.1g)。…

※「ストリキニーネ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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